第1話 死に場所を探す老人、死神付きさすらい
夜霧に包まれた墓地。
魔族の老人、アイゼンハワードは、妻・幸子と孫・カズヤの墓を前に、静かに呟く。
「……さて、そろそろワシもお前たちのところへ――」
背後から、ひんやりした声が聞こえた。
「ふふふ……あんたの死、最後まで見せてもらいますよ……イヒヒヒヒ」
振り向くと、黒衣の死神が杖を持ち、ニヤリと笑って立っている。
骨の手が、闇の中で冷たく光る。
「……また貴様か。まだワシ、死ぬ気はないぞ」
杖を肩にかけ、アイゼンは挑発的に笑う。
死神は軽く首をかしげて、地面にスッと降り立った。
「死にたいんでしょ? ならワシと契約でも……イヒヒヒ」
アイゼンは鼻で笑った。
「契約? ワシの死を邪魔するやつには、まず小悪党から始末させるのが筋ってもんじゃ。
さて、今夜は“死に場所”を探す旅に出るで――」
杖を振り、夜の街へ歩き出すアイゼン。
死神は影のように後をついてくる。
「逃げられると思うな……あんたの最後、見せてもらうからね……イヒヒヒ」
「フフ……見せるもんか。ワシの死はまだ、
この世の遊びの中で存分に味わってからじゃ。」
夜風がマントを靡かせる。
路地裏では、財布をスる少年がひょっこり現れる。
「おお、坊主よ、ワシの銅貨を取るつもりか?」
「え、えっと……」
「盗むなら、ワシと一緒に飯を食ってからにせぇ」
少年は困惑するが、結局、アイゼンと共に闇夜の街を歩き始める。
その背後で、死神はニヤリと笑い、指を鳴らす。
「ふふふ……まだまだ目が離せませんね、あんた……イヒヒヒ」
老魔族の孤高なダークヒーローの旅と、死神付きさすらいが、こうして幕を開けた。
夜の街に、笑いと哀愁と不気味な影が混ざり合う。
霧に包まれた街の外れ。
アイゼンハワードはスリ少年を従え、死神の影と共に小さな酒場の扉を開いた。
「ふぅ……夜の空気は、まだワシの生を祝福しておるな」
杖を片手に、カウンターへ歩く老魔族。
しかし中は――予想通りのカオス。
酔っ払い天使が卓上で踊り、悪魔のオヤジがギターをかき鳴らす。
壁には誰かの羽根や杖、そして奇妙な光の装飾。
「おやおや、ここも夜の地獄か……」
アイゼンがつぶやくと、死神は骨の指で額を叩きながら笑う。
「フフフ……こいつは楽しみですねぇ……イヒヒヒ」
カウンターの隅では、酔っ払い天使がビールジョッキを振り回し、椅子を跳ね回す。
突然、少年が悲鳴をあげた。
「わわっ、あれ俺の帽子――!!」
帽子は天井の梁に引っかかって宙を舞っていた。
アイゼンは杖をスッと伸ばし、天井の梁に届く魔力を少しだけ操作。
帽子をキャッチし、少年の頭にそっと戻す。
「ほれ、無事じゃ。これもワシの老魔族テクじゃ」
少年は目を丸くして、「わあ……すごい……」と感動。
その時、死神が突然ビールジョッキを指差す。
「ふふ……あんた、ここで酔っ払うのも悪くないですよ、イヒヒヒ」
アイゼンは鼻で笑う。
「酔う? いや、ワシはまだ死ぬ気はない。
だが、この街の夜を味わうのは悪くないな」
酔っ払いがまたもジャンプして飛び回る。
杖を軽く振り、アイゼンは酔っ払いを痛めずに押さえる。
その圧倒的老魔族力に、酒場の誰もが息をのむ。
「ほう、若い者よ。夜は長いぞ……」
アイゼンが言うと、死神はニヤリと笑いながら影に隠れる。
「フフ……これからが本番です……イヒヒヒ」
夜の街はまだ眠らない。
老魔族ダークヒーローと死神、そして小さなスリ少年の珍道中。
波乱と笑いに満ちた旅の序章は、こうして静かに、しかし確実に幕を開けたのであった。




