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【127万PV突破】 運と賢さしか上がらない俺は、なんと勇者の物資補給係に任命されました。  作者: 虫松
『魔王と勇者の継承者(デュアル・ヘリテイジ)ダイ・マオウの大冒険』

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1816/1903

第9話 崩壊 沈む太陽

沈みゆくのは、太陽か、それとも人間の理性か。


島の中心にある黒い遺跡が、ついに鼓動を始めた。

その心臓部から発せられた“黒い脈動”は、

空気を震わせ、地を歪ませ、そして生き残った者たちの心を蝕み始める。


キャンプ地では、

誰もが誰を信じられなくなっていた。

「囁き」が夜ごとに響く。

「次はお前だ」

「生贄を捧げよ」

その声は、死んだ仲間たちのものだった。

カ

ズヤは幻覚を見た。

焚き火の向こうに“笑う遺体”が座っていた。


ルーカスは、自分の手が黒く溶けていく夢に取り憑かれ、

叫びながら海へと飛び込んだ。


空は赤く、海は逆流し、太陽が沈むたびに闇が脈打つ。

アイゼンは呟く。


「封印が……完全に解けた」


カズヤは銃を構えた。

だが撃つべき相手が、もう“外の敵”ではないと気づいた時

人間の狂気と魔の咆哮が、ひとつに重なった。


そして夜。


遺跡の中心から這い出る、新たなる魔獣。

それは人の形を模した“黒い太陽”だった。


「もう誰も、日の光の下には戻れない」


沈む太陽が、血のように赤かった。

海が逆流していた。

潮が丘を登り、森の奥へ流れ込む。

木々が音を立てて崩れ、地面がゆっくりと呼吸するかのように脈動していた。


「……もう始まってるな」

アイゼン・ハワードが低く呟いた。

その声は風に掻き消されそうなほど静かだったが、

カズヤの背筋には冷たいものが走った。


「遺跡の“封印”が……完全に壊れたんだな?」

「封印というより、生き返った。あれは生物だ。島そのものが――“呼吸”を始めた」


地鳴りが再び響いた。

キャンプ地では、ダニエルとアントニオが避難を試みていた。

だが突然、地面の割れ目から黒い靄が噴き出し、形を変えていく。


それは――人の形をした、闇だった。


「おい、逃げ――!」

ダニエルが叫ぶより早く、黒い手が彼の首を掴んだ。

皮膚が灰のように崩れ、瞬く間に姿が溶ける。

アントニオの悲鳴が響く。

「やめろッ! やめてくれぇえええええ!」


彼の身体も闇に飲まれ、声だけが木霊した。


残されたのは、三人。

カズヤ、リディア、アイゼン。


空が裂けた。

光が黒に侵されていく。

太陽の輪郭が溶け、まるで“血の眼”が空から島を見下ろしているようだった。


エヴァは震える声で言った。

「これ……自然現象じゃない……。島が、生きてる……」


アイゼンは振り返らずに言った。

「カズヤ、来い。遺跡の心臓部を破壊する。

 止めなければ、この島ごと――海が呑まれる」


カズヤは短く息を吐き、銃を握り直した。

「行こう。こんな地獄、もう終わらせる」


二人は炎と黒い霧の中を走り出した。

森は崩れ、地面からは骨のような構造物が突き出している。

それはかつての遺跡の外壁――だが今は、まるで生物の肋骨のように見えた。


風が呻く。

足元に転がる白骨が微かに震え、

その口から黒い霧が滲み出す。


「供物が足りぬ……」

「再生を……」


死者の声が、風に混じって囁いた。

カズヤは銃口を上げ、叫んだ。

「黙れッ!!」


轟音。

銃弾が霧を裂き、空気を震わせた。

だが霧は形を変え、まるで笑うようにカズヤの頬を撫でた。


アイゼンは立ち止まり、背中の剣を引き抜く。

漆黒の刃――魔剣ギルティーナ。

その瞬間、周囲の空気が低く唸りを上げた。


「……カズヤ、見せてやる。これが“魔界の観察者”の力だ」


赤い紋章がアイゼンの掌に浮かぶ。

地面が震え、封印の光が破れる音が響く。

彼の瞳が紅く光り、闇と光がぶつかり合う。


「ギルティーナにて、封印を逆流させる!」


島の中心黒い遺跡が呻き声を上げた。

それはもう建造物ではなかった。

黒い心臓が脈打ち、鼓動が大地を揺らしている。


リディアが後方から叫んだ。

「アイゼン! 何を!」

「この島の命を断つ!」


次の瞬間、地面の裂け目から無数の魔獣の影が這い出した。

人型、獣型、鳥型すべてが黒く、目だけが赤く輝いていた。


それらが一斉に咆哮を上げ、

島の最期の晩餐が、幕を開けた。

第9話後 登場人物一覧

カズヤ・アイゼン(日本):探偵、冷静沈着、論理的

アイゼン・ハワード(イギリス/魔族):魔族の記録者、解析・指導担当

リディア・フォスター(アメリカ):心理学者、心理分析担当・幻覚継続


死亡者

マリア・ゴンザレス:魔獣に襲われ死亡

オスカー・チャン:魔獣に襲撃され死亡

マイケル・ブラウン:キャンプ地で死亡

リアム・オコナー:魔蛾により崖から転落

レイチェル・スミス:魔鮫襲撃で死亡

エヴァ・シュミット:魔鮫襲撃で死亡

アントニオ・サントス:黒い靄に飲み込まれ、精神崩壊の末に消滅。

ダニエル・オーウェン:遺跡の暴走に巻き込まれ、影の魔獣に捕食され死亡。



失踪者

ナディア・カーン(ITエンジニア)

ソフィア・モレノ(医師)


生存者数

3人


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