第6話 沈む海(魔鮫襲撃)
潮風が浜辺を吹き抜け、木々のざわめきと波の音が混ざり合う。生存者たちは、ようやく手に入れた休息のひとときを得るため、砂浜に座り込んでいた。焚き火の赤い光が揺れ、海面に反射する月光が穏やかに波打つ。
「今日はここで休もう……」
カズヤが低くつぶやく。彼の目は海と森を交互に見渡し、常に危険を警戒していた。
しかし、その静寂は長くは続かなかった。
水面が急に渦を巻き、砂や海藻を巻き上げる異常な波が浜辺を洗う。
「……な、何だ?」
ハンナが指を差す。
突然、海面からSharkus Magnus魔鮫が跳躍した。
体長10メートル、推定体重5トン。三列の鋭い牙は月光を反射して銀色に輝き、赤く発光する複眼は暗闇でも生体熱と動きを正確に捕捉する。厚い銀黒の鱗が光を反射し、尾びれを振るだけで砂浜の装備や仲間を吹き飛ばす。前肢は鋭利な爪状で、水中・陸上問わず攻撃可能。触角状の感覚器で音・振動・熱を感知し、獲物を逃さない。
「うわああっ!」
アントニオが叫び、背後に飛び退く。砂と水が混ざり、周囲の視界を奪う。
レイチェルは科学者として冷静を保とうとしたが、赤い複眼が自分を追うのを見て背筋が凍る。
「逃げろ、砂浜の上じゃ足元も危ない!」
エヴァが叫ぶ。
しかし、魔鮫は人間の動きに比べて異常な速度で海面を跳躍し、尾びれで波と砂を巻き上げ、仲間たちを恐怖に陥れる。ルーカスが物資を抱えて後退するが、尾びれの一撃で装備が砂浜に散乱した。
「レイチェル!」
カズヤが叫ぶが、魔鮫の爪状の前肢が波を割って迫る。
鋭い牙がレイチェルを捕らえ、海水と血が舞う。仲間たちは必死で引き離そうとするが、厚い鱗に阻まれる。レイチェルは絶叫とともに海中に引き込まれ、波に消えた。
「く、くそ……!」
エヴァは怒りと恐怖で拳を握り、次の瞬間、魔鮫が跳躍。前肢が彼女を捕らえ、波にのまれた。叫び声が砂浜に反響し、次の瞬間、静寂が訪れる。
「……エヴァ!」
ハンナが手を伸ばすが、もう手遅れだった。海水に混じる血と残骸だけが残る。
ソフィアは呆然としながら仲間の負傷者を確認するが、混乱で誰も冷静に動けない。リディアは恐怖に震え、幻覚を見始める。
「見える……海の中に何かが……」
カズヤは冷静さを保ち、推理する。
「これは計画的だ……島全体が観察のために作られた“実験場”。俺たちはただの標本だ……」
浜辺に残された仲間たちは、恐怖と混乱の中で互いを見つめ合う。砂と血、波の音、そして魔鮫の赤い複眼が、次の襲撃を予感させる。生存者たちは、この惨劇から逃れられないことを悟るしかなかった。




