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 王太子が国境に向かってしばらくが経った。


 トマスたちももう戻ってきてもおかしくない頃なのに、戻って来ないのは王太子たちと合流でもしてしまっているのか。


 あの後どうなったか気になる。


 あのクソ王子がどこに行ったのかとか、何か大事な話を聞けたのか聞けなかったのかとか。


 でも、王都に残ってるあたしには関係ないことだ。少々ふて腐れながらミーヌさんのところに行く。


 今はミーヌさんはグレースの王様の護衛として働いているけど、休みを確認してからミーヌさんが使っている部屋に向かうと、ミーヌさんは笑顔で出迎えてくれた。


「久しぶりですね」

「そうですね」


 基本国境に行きっぱなしだし、戻って来ても報告したら体を鍛えるために訓練場にいるから、こうやって時間を取ってゆっくりと話す機会もあまりなかった。


 今はすることもないから来ちゃったけど、迷惑だったかな? と思ってミーヌさんの顔を見たが、ミーヌさんの表情はいつも通りの顔だったので安心する。


 これでミーヌさんに嫌がられたら、ちょっと落ち込んでたかも。


 ミーヌさんも国境であの国の王子がいたという話は聞いていたらしくて、そのことを詳しく話して欲しいと言われて、あの時見たことを話して一応ミーヌさんにもあたしが見たのはあの国の王子で合っているか確認してもらう。


「ええ、間違いないと思いますよ。彼の瞳は姫の瞳ほどではありませんが、それなりに珍しい色ですから」

「そういえば、あたしあの国の姫のこと詳しくは知らないんだけど、ミーヌさんは会ったことあるの?」

「そうですね。ラフォン様の付き添いで何度か顔を合わせたことがありますが、ラフォン様はあの方のことを苦手に思っていらしたので、ほとんど関わったことはありません」

「そうなんですね」


 でも、何か分かるかもと期待する。


 前にミーヌさんに話を聞いた時はラフォン様のことばかり聞いていた。でも、今回は姫のことを知りたい。


 ついでに、あの国の王族についても知ってることはあるのかな?


 ジゼルやこの国の高官たちはもう聞いているはずだから、ミーヌさんからしたら何度も話をさせられて大変かもしれないけど、あたしは知らないから教えて欲しい。


 ミーヌさんは、昔あたしにあれこれと教えてくれた時みたいに優しく話してくれた。


「姫の祝福はご存知ですよね。彼女の千里眼の祝福はかなり有名ですから」

「うん。国内の全てを見渡せるって」


 頷きながら答える。


 ミーヌさんもそれに頷き、もう少し詳しく説明してくれる。


「姫は他の王族とは違いあまり表には出ないから城で働く者たちも詳しくはないのですが、姫は容姿よりもあの瞳が印象的でしたね」

「瞳? 千里眼の祝福は何か普通と違うの?」


 ユリア含む祝福持ちは見た目では分からない。だから、あたしもミーヌさんやラフォン様が祝福を持っているなんて気付かなかった。


 本人が祝福持ちだと申告するか、祝福に使っているところを見るぐらいしか分からないと思っていたんだけど、違うの?


「姫の瞳は水晶みたいに透き通っているのですよ。ラフォン様はその瞳を不気味だと評していましたが、それには少し賛同したくなりますね」

「水晶のような瞳?」


 それってどんな瞳なの? 水晶のように透き通ってるってこと?


 人間の瞳でそんな風になるの? 透き通ってるんだったら、目の奥に何があるか分かって気持ち悪いんじゃない?


 ラフォン様が不気味だと評したとしても仕方ないんじゃないの?


 でも、ミーヌさんの言い方だと他にも何かありそうなんだけど、どうなんだろ? 他にも何かあるのかな?


 そう思って聞いてみようとしたけど、ミーヌさんは気付いてないみたいで、話を続けている。


 ミーヌさんの話を聞いて姫のことを考える。


 今までベールに包まれていた存在がようやく少しずつだけど分かってきた。


 姫の瞳は特徴があるから、顔を見たらすぐに分かる。


 祝福のことも考えるなら、あの国の上層部が姫のことを隠そうとするのも分からなくもない。


 だけど、こういう時には不便だなって思う。だって、目の前にいたって姫だって分からないのだから。


 でも、今までそんな特徴的な人は見たことがないから、あたしはあの国の姫を見たことがないんだろう。


「それはそうとラナは大丈夫だったんですか?」

「え?」


 何が? あたしまた怪我したっけ?


 国境で受けた傷なんてかすり傷だし、それ以外では怪我なんてしてないはず。


 自分の体を見下ろしてみてもやっぱり怪我をしているところなんてない。ミーヌさんの言いたいことがわからんなくて、首を傾げるしかない。


「国境であの王子に会ったので何か行動してしまうんじゃないかって、聞いた時は焦ったのですが、大丈夫でしたか?」

「ああ、うん。それは平気だった」


 あの時は報告しないとっていう気持ちの方が強かったし、グランディーナさんに怒られたからね。


 あたしだって今あいつに復讐したら駄目なことぐらい理解出来るよ。


 だからミーヌさんが心配する必要はないと笑ってこの話題を終わりにする。


 その後はいくつか話をしてミーヌさんのところを後にした。




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