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滅鬼の刃  作者: 大橋むつお
35/47

35・ご無沙汰しておりました

滅鬼の刃 エッセーラノベ    


35『ご無沙汰しておりました』   





 どうも、あれから一年半ぶりになります。



 武者と朝顔を愛でながらスイカを食って、あくる日にもう一度話すつもりでおりました。


 ですから副題も34『朝顔と西瓜・1』として、当然35『朝顔と西瓜・2』になるはずでしたが果たせませんでした。根気よく読んでくださっている読者のみなさんには申し訳ない限りです。


 じつは、武者のやつ『朝顔と西瓜・1』の夜に頭の線が切れて救急車で運ばれましたが間に合いませんでした。


 息子さんが家族葬で見送られたのですが、付き合いの古いわたしには声をかけてくれました。


 おそらくは死んだという自覚も無いまま逝ってしまったのでしょう、昼寝をしているような穏やかな顔で棺に収まっておりました。


 以前にも同じことがありました。武者と共通の友人で、葬式の日には「あっけないもんやなあ」と言っていたのが同じように逝ってしまいました。


 二度あることは三度……思っていても口にはしません。


 言霊を信じているわけではないのですが、栞にも言ってあります。ああ見えてゲン担ぎ、気にするといけませんのでね。


 もう一年以上たつのですが、総括できずにおります。書けるようなら号を改めて触れられたらと思います。


 ただ、息子さんは武者の遺言……というほどではないのですが、日ごろ『蛍の光』で送って欲しいということを、わりと真剣な顔で言っていたので、アカペラではありますが、全員で『蛍の光』を歌って霊柩車に乗せてやりました。


 卒業式でもめったに歌われなくなった『蛍の光』でしたが、まだ日本人の血脈にはしみ込んでいるようで、会葬者全員が神妙になりました。


 パァーーーーーーーーーーーーーーーン


 歌い終わると同時に霊柩車のクラクションが長鳴きします。まるで武者が「さよならぁ、世話になったぁ」と最後の挨拶をしたようでした。



 それから、明くる年、栞が家を出ていきました。


 これは、大学進学なので仕方ありません。通学できない距離ではないのですが、かみさんも栞の学費用にと相応のものを残してくれていましたので無事に追い出せました。


 最初は週に一度は戻って来ていたのですが、それがきっかけだったのか夏休みのバイトで、丸々ひと月空いて、それからは月一になりました。


 この正月には帰って来ると言っていたのですが――松が明けたら帰る――とラインを寄こして『うん、楽しみにしてるよ』の返事には既読スルーのままです。


 松が明けたらとは、わたしが教えてやった言葉です。


 松の内というのは、昔は15日まで、この三十年くらいは7日までを指す言葉です。


 はてさて、栞の松の内はどちらでしょうか。


 まあ、こけつまろびつしながらも、自分の道を歩き始めている様子。了としておきます。


 わたしは錆びの周った滅鬼の刃を、ゆっくり研ぎ直すところから始めることにします。




☆彡 主な登場人物


 わたし        大橋むつお

 栞          わたしの孫娘 

 武者走       腐れ縁の友人(35回より故人)

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