拡げたるは翼、上げたるは首、振られたるは尾
みここです。はい。生きてますよ。
ドラゴンと言えば火を吹く古代の伝説級生物。小さい者から大きいものまで幅広く存在したとされ、その影響力は計り知れない。中には神にも近いドラゴンも存在するとされ、神と同様の数え方(一柱、二柱など)をされたそうだ。ひとたびそれが現れたものなら、人界では悲惨な出来事となる。そういった生物がドラゴンであった。
そのような、出会えば即死級の生物が現在どうしているかというと――
「あ、ありがとうございますです」
「いえ、お気になさらず。それより体は大丈夫?」
「おかげさまでほら、この通り」
赤い鱗が総毛立つと、そのドラゴンは真上に特大の炎を吐いた。目の前にいる僕にもその熱は届く。
――さきほど、超上空から海めがけて降ってきたこの深紅のドラゴンは、あろうことか海でおぼれていた。それを僕は近くにあったロープでもって引き上げたのだ。
「まさか助けていただけるとは思ってなかったです。人間にも優しい人はいるんですねです」
人間……そうか、彼らからすれば僕は人間か。僕達が彼らにドラゴンと呼称するように。呼ばれた時の違和感からか僕はその者の名を訪ねた。
「え、我の名前ですか? 我はポコといいますです。ポコ・デ・ロア。」
「ぶっ!」
思わず笑ってしまった。この体躯で実に可愛らしい名前だった。ポコ……ポコねえ……。
「ちょ、笑わないでいただきたいですよです。ロア族の一応の長なのですからです」
「長なのか、すごいね」
そういうとポコは少し顔を曇らせる。
「長と言っても、もう我しかいないのですがです」
ポコがやってきた空、その方角を強くにらみつける。
「そっちにポコの家はあるんだね」
「ええ。そうです」
うーん……。気まずいな。そしてめんどくさいことになりそう。一先ずこのドラゴンは無害そうだし、このまま放置して帰ろう。あ、さっきの倒れたスタッフさんの様子だけ見ておこうかな。
「じゃあ僕はこれで失礼するよ。幸運を祈るよ」
「はい……って、ちょっと待ってくださいです! 今そんな雰囲気じゃなかったですよねです! 我を助けようとは思わないのですかです!」
「ですですうるさいよ! 今僕も国に追われてる身だし、仲間もいるし、こんな大きなドラゴンの面倒は見切れません!」
僕はそう一気にまくしたてる。するとポコは目をウルウルとしはじめた。うっ……。
「そ、そんな顔しても無理なものは無理! 大体僕に何させようとしてるのさ!」
「餌付けだけでいいので、一緒にいさせてくださいです。帰るとこないのです。身体は魔法で小さくしますので」
ポコはキュルキュルとしぼんでいき、手のひら大の大きさに縮む。極小の羽をパタパタとさせて僕の肩に止まる。羽虫程度の重さだった。
むう……。これ、ヴァンに怒られるかなあ。
「……とりあえずみんなに聞いてからでいい?」
あまりにもしつこい目線を送り付けるポコに根負けし、僕は渋々了承した。その返答にポコはめっちゃいい笑顔を向けてくる。
ペット感覚なのかなあ。
とりあえず、肩にポコを乗せたまま、先ほど倒れたスタッフの様子を見に行く僕であった。
みここでした。ポコです。ボコじゃないです。bじゃなくてp。




