ある日、飛ばされた僕はボクっ娘に
みここです。初投稿です。
視えない壁に阻まれ、僕はそこから身動きが取れないでいた。
あたりは真っ白で、どこからが床でどこからが天井なのかわからない。その境がないゆえ、自分が今立っているのか浮いているのか判別しかねるほどだ。実際は浮いているが。影がね。うん。
僕がこの何もない世界に来てすぐその声は聞こえた。
「ごほん、えーと、今考えてるからちょっと待ってね」
それから4時間ほど過ぎて今に至る。もちろんここに時計などないし体感的な時間になる。実際はもっと短かったかもしれない。自信ない。
ほどなくして声は戻ってきた。
「またせたな、少々手間どっちまったぜ」
「一体何に……」
「それは向こうに行ってから確認して」
「え――
声が途絶えた瞬間、目の前に闇が広がる。それは僕自身を飲み込み、視界のすべてを漆黒に塗り替えた。
気付けば周りは夜であった。月は空に浮かび風がほんの少し長い僕の髪をなでる。
「あれ」
そう、僕の髪が伸びていた。声も高くなっていた。
というか……
「――女になってる」
性別が転換していた。
髪は肩まで伸び、肌は透き通るように白く月光を照り返す。女性らしく膨らむ所は主張しすぎない程度に大きく、目下の湖面に映る自身の顔はお世辞でなく整っている。
湖を見て自身の姿にばかり驚いていたが、ここがどこなのかまださっぱり見当もつかないことに遅まきながらやっと気が付く。見上げれば星空が浮かび、周囲を見渡せば水平線まで白銀色で覆われた砂漠地帯がそこにはあった。そして僕が立つオアシスには数本の木々と申し訳程度の大きさの湖があるだけ。これだけの景色を絶景でないとは言えないだろう。日本にこのような場所があるとは。
「!?」
不意に背後で動く気配を感じた。
激しい悪寒と共に振り返る。しかし何もない。だがいつの間にか固く握っていた右手には小さな紙が収まっていた。僕はそのメモを開く。
『やあ、その姿は気に入ったかな?
突然こんなとこに飛ばしちゃってごめんw
そこは君の元いた世界とは違う世界。パラレルワールドみたいなものかな
君はそこでとりあえずいろんな人間と仲良くなって
”いつかきっと”に対応できるように
神より
追伸:あとはそこにいる人から聞いてね
おっつおっつ 』
どういう意味だろうか。何かの暗号……? それにしてもよくわからない。とりあえずこのメモの書き手が僕の性転換と関係あるのは必定のようだ。ぜひとも問い詰めたい所存である。メモから目を離すと、追伸に書かれていたようにそこに人が現れた。ここで重要なところは、どこかの陰に潜んでいた、というわけでもなく、本当に目の前に出現したというところだ。これが手品や映画ならスタンディングオベーションといきたいところだが、自身が置かれている状況から察するにもうそういった次元ではなさそうだ。それに既に立っているしな。
目の前に立つメイド服を着こんだ女性はいつまでも立ったままである。話が進まないことにはどうしようもないので、勇気を振り絞って声を掛けた。
「あの……」
「はい、何でしょう」
「これからどうすればいいんです?」
「そうですね。とりあえずここじゃ話し辛いので屋敷に移動しましょうか」
「そうですか」
……なら何でここに飛ばしたんだ。淡々と言葉を返された僕は思わず心でツッコミをいれる。
彼女は僕に近づき手を取る。そして何かをぶつぶつと唱えた。すると、初めからそこにいたかのように、僕と彼女は屋内――屋敷に到着していた。
「「「おかえりなさいませ、お嬢様」」」
見れば周りには複数名のメイドたちが僕を取り囲んでいた。
そこで僕は思い出した。
「そうだ、僕は今女になってたんだ」
みここでした。初投稿でした。
今後もマイペースに更新していくつもりです。
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