前日譚『北欧本部の設立について』素戔嗚対策極秘会議—日本支部—
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議題:素戔嗚尊対策
開催場所: 日本支部・高天原会議室(特別非公開)
司会: 思兼神
書記: 菅原道真
参集メンバー: 天照大神、月読命、大国主、稲荷、天宇受売命、大宜都比売神、建御雷
欠席者: 素戔嗚尊
投書者: 日本支部・有志一同(匿名希望)
投書内容:
スサノオ様が何かにつけて力で物事を解決しようとするため、周囲の神々が大変困っております。
意見が対立するたびに武力で決着をつけられては、力の弱い神々に勝ち目がありません。
つきましては、腕力に頼らず、公平に勝敗を決められる方法を考案していただけないでしょうか。
なお、本件については、くれぐれも素戔嗚尊様にはご内密にお願いいたします。
機密区分:極秘
※本会議の存在、参加者、審議内容については、素戔嗚尊本人への開示を禁止する。
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◇極秘会議――暴れん坊対策
高天原、日本支部。
普段は神々の議論で賑わう会議室が、この日に限って妙な緊張感に包まれていた。
扉には『関係者以外立入禁止』の札。
窓には目隠し。
廊下には見張りまで配置されている。
会議室の中央では、知恵を司る神、思兼神が厳しい表情で資料を整理していた。
オモイカネ:「皆様、お集まりいただきありがとうございます」
ミチザネ:「出席者の確認を行います。……全員揃っておりますね」
アマテラス:「あの、オモイカネ。ここまで厳重にする必要はあるのでしょうか?」
オモイカネ:「ございます」
アマテラス:「即答ですね……」
オモイカネ:「今回の議題は、極めて重大な問題ですから」
そう言って、オモイカネはホワイトボードに大きく文字を書いた。
『素戔嗚尊対策』
会議室が静まり返った。
ツクヨミ:「……とうとう、この日が来たようだ」
オオクニヌシ:「なんだか、物騒な響きですな」
イナリ:「名前だけなら討伐対象みたいです」
ウズメ:「いっそ、討伐しちゃう?」
アマテラス:「弟を討伐しないでください!」
オモイカネ:「ご安心ください。今回の目的は討伐ではありません。むしろ、武力による解決を避けるために皆様をお呼びしたのです」
ここで、オモイカネは一枚の資料を掲げた。
『素戔嗚尊・過去の問題行動一覧』
アマテラス:「……それ、何枚あるのですか?」
ミチザネ:「現在、三十二枚です」
アマテラス:「そんなに……」
ツクヨミ:「少なくまとめた方だな」
アマテラス:「ツクヨミまで!?」
オモイカネ:「まず、問題の本質を整理しましょう」
◇問題の本質――力の強い者が勝つ世界
オモイカネ:「スサノオ様は、非常に優れた武勇をお持ちの方です」
タケミカヅチ:「それは認めよう。腕力も胆力も申し分ない」
オモイカネ:「しかし、意見が対立すると、力によって決着をつけようとする傾向があります」
ミチザネ:「特に問題なのは、本人に悪意がない場合でも周囲に被害が発生することです」
オオクニヌシ:「……よく分かりますぞ」
ウズメ:「あんたは色々あったものねぇ」
オオクニヌシ:「ええ、まあ……」
オモイカネ:「例えば、意見が対立した場合です」
オモイカネは、過去の事例を読み上げた。
オモイカネ:「『どちらの意見を採用するか』という議論が、『どちらが強いか』という勝負に変わります」
イナリ:「そして勝負が始まると?」
タケミカヅチ:「周囲の被害を考えなくなる」
オモイカネ:「その通りです」
ミチザネ:「結果として、議題そのものが消滅します」
ウズメ:「物理的に?」
ミチザネ:「場合によっては、会議室ごと」
アマテラス:「……」
ツクヨミ:「姉上。目を逸らさないでいただきたい」
アマテラス:「分かっています……」
オモイカネ:「そこで、今回の目標は三つです」
ホワイトボードに文字が追加された。
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一、武器を使用しない。
二、相手を傷つけない。
三、勝敗が明確で、本人が納得できる。
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オモイカネ:「この三条件を満たす、新たな勝負方法を考案します」
タケミカヅチ:「つまり、戦わずして勝敗を決しようというわけか」
オモイカネ:「はい」
タケミカヅチ:「……面白い」
ミチザネ:「なお、負けた後に暴れた場合の対策も必要かと思われます」
一同:「…………」
オモイカネ:「それが最大の課題となりそうです」
◇第一案――くじ引き
イナリ:「それなら、くじ引きはいかがですか?」
稲荷神が小さな箱を取り出した。
イナリ:「当たりと外れを用意し、引いた結果に従ってもらうのです。誰も傷つきません」
オオクニヌシ:「公平で、準備も簡単だ」
オモイカネ:「有力な案です。実演してみましょう」
ウズメ:「はいはい! 私がスサノオ役をやるわ!」
アマテラス:「……妙に楽しそうですね」
ウズメ:「当然!」
二本のくじが用意された。
天宇受売命が一本を引く。
結果は外れ。
ウズメ:「……納得いかねぇ!」
ダン!
天宇受売命が突然、机を叩いた。
ウズメ:「もう一回だ!」
ミチザネ:「不採用ですね」
イナリ:「早くないですか!?」
オモイカネ:「敗北の理由が本人の選択と結びつきにくいことが問題です。運任せだと、結果を受け入れない可能性があります」
ツクヨミ:「あいつなら、箱ごと叩き割りかねんな」
アマテラス:「……否定できません」
◇第二案――力比べ
タケミカヅチ:「ならば、腕相撲はどうだ?」
オモイカネ:「理由を伺いましょう」
タケミカヅチ:「武器を使わず、決着も早い。何より、本人が最も納得しやすい」
オオクニヌシ:「確かに、分かりやすい勝負ではありますな」
ミチザネ:「参加者の腕力に大きな差が生じます」
タケミカヅチ:「鍛えれば良いだろう」
ミチザネ:「私に何を求めているのですか?」
ウズメ:「ミチザネちゃん、頑張って!」
ミチザネ:「頑張る方向が違います」
オモイカネ:「さらに、腕相撲で負けた場合、スサノオ様が次の勝負を要求する可能性があります」
タケミカヅチ:「それは……あるえるな」
オモイカネ:「そして、勝てるまで勝負を続けた場合、対策として機能しません」
ミチザネ:「そもそも、弱い神々が不利な状況を改善するための対策ですから」
タケミカヅチ:「……なるほど」
アマテラス:「あなたが毎回相手をしてくれるわけにもいきませんしね」
タケミカヅチ:「構わんぞ?」
ミチザネ:「構ってください」
◇第三案――大陸から伝わった拳遊び
議論が行き詰まりかけた頃。
大宜都比売神が、静かに手を挙げた。
食物を司る女神、大宜都比売神。かつて素戔嗚尊と深刻な因縁を持った神でもある。
オオゲツヒメ:「あの……少々、申し上げてもよろしいでしょうか?」
オモイカネ:「どうぞ」
オオゲツヒメ:「以前、大陸から伝わってきた遊びについて聞いたことがあります」
イナリ:「遊び、ですか?」
オオゲツヒメ:「はい。拳の形を使って、互いに勝敗を競うものだそうです」
オモイカネ:「……拳遊びですね」
オオゲツヒメ:「ご存じでしたか?」
オモイカネ:「ええ。中国には、指の本数や手の形を用いた拳遊びがいくつも存在します」
ツクヨミ:「拳を使うのか」
オモイカネ:「ただし、殴るためではありません。形によって勝敗を判断するのです」
タケミカヅチ:「拳を交えずに、拳で戦う……?」
オモイカネ:「そういうことです」
ウズメ:「そういう、子供っぽいのスサノオが好きそうじゃない?」
アマテラス:「確かに、遊戯のようなものには反応しそうですね」
オモイカネ:「……試してみる価値があります」
知恵の神の目が、わずかに輝いた。
◇三つの形――天照、素戔嗚、そして神々の知恵
オモイカネ:「では、大陸から伝わった拳遊びを参考に、三つの形を定めたいと思います」
思兼は、ホワイトボードの前に立った。
オモイカネ:「ただし、単に手の形を変えるだけでは、スサノオ様が納得するとは限りません。そこで、我々に馴染みのある出来事をもとに、勝敗の関係を定めます」
ミチザネ:「何か、適当な題材があるのでしょうか?」
オモイカネ:「ございます。皆様もよくご存じの、天岩戸の一件です」
アマテラス:「……」
ツクヨミ:「……なるほど」
ウズメ:「ああ、あれね!」
アマテラス:「……できれば、別の題材にしていただきたいのですが」
オモイカネ:「三すくみの関係を説明するには、極めて適切な事例です」
アマテラス:「……そうでしょうか」
オモイカネ:「まず、一つ目。拳を握った形です」
思兼は右手を握りしめた。
オモイカネ:「これを、天照様とします」
アマテラス:「私ですか?」
オモイカネ:「はい。アマテラス様が岩戸にお隠れになれば手出しは誰もできません。それに、その状態が続けば、誰もが不利益を被ります」
ツクヨミ:「何しろ、太陽そのものが隠れてしまったからな」
イナリ:「世界が暗くなってしまいましたね」
オモイカネ:「つまり、アマテラス様は、岩戸に閉じこもることで、外からの干渉を拒絶できます。尚且つ同時に世界を暗闇に覆う無差別攻撃も兼ねているのです」
タケミカヅチ:「なるほど。ただ攻めるのではなく、守る強さも含まれるということか」
オモイカネ:「その通りです」
アマテラス:「…ひどい言われようをしている気がするのですが?」
ミチザネ:「……最強の引きこもりですね?」
アマテラス:「道真?」
ミチザネ:「失礼いたしました」
カン。
拍子木が打ち鳴らされた。
オモイカネ:「次に、二つ目。二本の指を立てた形です」
思兼は、人差し指と中指を伸ばした。
オモイカネ:「こちらを、スサノオ様とします」
タケミカヅチ:「剣を表しているわけか」
オモイカネ:「はい。武勇に優れ、剣を振るい、強大な敵を討ち倒す力を持つ神です」
オオクニヌシ:「確かに、武力では並ぶ者が少ないですね」
オモイカネ:「しかし、そのスサノオ様にも、どうにもできなかったものがあります」
ツクヨミ:「……岩戸に閉じこもった姉上か」
オモイカネ:「その通りです」
アマテラス:「……」
オモイカネ:「どれほど武勇に優れていても、岩戸に閉じこもった天照大神様を、自らの力だけで外へ連れ出すことはできません」
イナリ:「つまり、天照大神様はスサノオ様に勝つわけですね」
オモイカネ:「はい。拳を握った形は、二本指の形に勝つこととします」
アマテラス:「……なんだか、すごく複雑な気分ですね」
ツクヨミ:「実際、あの時は姉上の完全勝利だったと思うが」
アマテラス:「勝負ではありません!」
オモイカネ:「そして、三つ目です」
思兼は、五本の指を大きく広げた。
オモイカネ:「こちらは、天岩戸の一件を解決した神々の知恵と協力を表します」
ウズメ:「おっ! ようやく私の出番ね!」
オモイカネ:「はい。特にアメノウズメ様の踊りは、アマテラス様が岩戸の外へ興味を向ける、大きなきっかけとなりました」
ウズメ:「ふふん! もっと褒めてもいいのよ!」
ミチザネ:「ただし、アメノウズメ様だけの功績ではありませんよね?」
オモイカネ:「もちろんです」
思兼は、ホワイトボードに当時の神々の役割を書き加えた。
オモイカネ:「私が方策を考え、神々が協力して準備を整えました。アメノウズメ様が舞い、八百万の神々が笑い、アメノタヂカラヲ様が岩戸を開く力を発揮されたのです」
オオクニヌシ:「一柱の力ではなく、皆の力を合わせた結果だったわけですな」
オモイカネ:「はい。だからこそ、この開いた掌は、個人の力ではなく、協力によって困難を乗り越えることを意味します」
ウズメ:「まあ、一番の見せ場は私だったけどね!」
ツクヨミ:「否定はしない」
アマテラス:「……確かに、あの騒ぎが気になって外を覗いたのは事実です」
ウズメ:「ほら!」
ミチザネ:「なお、アメノウズメ様の頭の中が空っぽという意味ではありませんので、誤解のないようにお願いします」
ウズメ:「ちょっと待って!? 誰もそんなこと言ってないわよ!」
ミチザネ:「念のためです」
ウズメ:「念のためって何よ!」
オモイカネ:「……では、話を戻します」
カン!
オモイカネ:「アマテラス様は、岩戸に閉じこもることでスサノオ様の干渉を退けます」
オモイカネ:「しかし、岩戸に閉じこもったアマテラス様も、神々の知恵と協力によって外へ導かれます」
オモイカネ:「そして、知恵に優れた神々であっても、直接の武力でスサノオ様に対抗することは困難です」
タケミカヅチ:「……なるほど」
オモイカネ:「つまり、三者は互いに勝ち負けを持つ関係にあるのです」
✊
グー
天照大神
岩戸に閉じこもり、干渉を拒む
✌️
チョキ
素戔嗚尊
強大な武力を持つ
✋
パー
天宇受売命と神々
知恵と協力で困難を解決する
三すくみの関係
- グーはチョキに勝つ:天照は岩戸に隠れることで、素戔嗚の干渉を退ける。
- チョキはパーに勝つ:素戔嗚の武力には、力の弱い神々が直接対抗することは難しい。
- パーはグーに勝つ:天宇受売命をはじめとする神々の知恵と協力が、天照を岩戸から導き出す。
タケミカヅチ:「しかし、少々疑問がある」
オモイカネ:「何でしょうか?」
タケミカヅチ:「神々が協力すれば、スサノオにも対抗できるのではないか?」
オモイカネ:「もちろん、その可能性はあります」
タケミカヅチ:「ならば、三すくみにならんではないか」
オモイカネ:「そこで、勝敗の関係を固定するのです」
ミチザネ:「……つまり、厳密な戦闘能力の比較ではなく、遊戯としての規則なのですね」
オモイカネ:「はい。重要なのは、どの形にも必ず勝てる相手と負ける相手が存在することです」
イナリ:「強い神だから必ず勝つわけではない……」
オオゲツヒメ:「弱い神でも、勝てる可能性があるのですね」
オモイカネ:「その通りです」
オオクニヌシ:「……これは、なかなか素晴らしい仕組みですな」
アマテラス:「でも、少し不思議ですね。もともとはスサノオへの対策だったはずなのに……」
オモイカネ:「はい?」
アマテラス:「こうしてみると、誰かを倒すための方法ではなく、誰もが対等に勝負できる方法になっています」
オモイカネ:「……」
思兼は、しばらくホワイトボードを見つめた。
オモイカネ:「……そうですね」
そして、静かに頷いた。
オモイカネ:「力の強い者が必ず勝つ世界では、弱い者は勝負に参加することすらできません」
オモイカネ:「しかし、この方法なら、どの神にも勝つ可能性があります」
ミチザネ:「勝つ可能性があるということは、同時に負ける可能性もあるということですね」
オモイカネ:「はい。絶対に勝つ者も、絶対に負ける者もいない。それこそが、この遊びの本質です」
ウズメ:「つまり、私だってスサノオに勝てるってこと?」
オモイカネ:「もちろんです」
ウズメ:「よーし! じゃあ今度、あいつに勝負を挑んでくる!」
ミチザネ:「実際に殴り合わないでくださいね」
ウズメ:「分かってるわよ!」
タケミカヅチ:「……しかし、拳を使うのに殴らんとは、やはり邪道だな」
ウズメ:「あっ、それ、名前によくない?」
ミチザネ:「……また余計なことを」
◇最初の一手――拳で殴らない
オモイカネ:「では、実演を行います」
ウズメ:「はいはい! 私、スサノオ役!」
ミチザネ:「またですか……」
ウズメ:「任せて! あいつの真似なら得意だから!」
ウズメは腕を組み、偉そうに胸を張った。
ウズメ:「ガハハ! 俺様に勝負を挑むとはいい度胸だ!」
アマテラス:「……似ていますね」
ツクヨミ:「本人より少し上品だな」
イナリ:「中ボス感があります」
ウズメ:「中ボス!?」
対戦相手には稲荷が選ばれた。
オモイカネ:「では、合図とともに手を出してください」
ウズメ:「おう!」
イナリ:「よろしくお願いします」
オモイカネ:「せーの!」
ウズメ:「うおおおおっ!!」
天宇受賣命が勢いよく拳を振り上げた。
そのまま稲荷の顔面へ向かって突き出す。
イナリ:「ひゃあっ!?」
建御雷が、その拳を寸前で受け止めた。
タケミカヅチ:「待て待て待て!」
ウズメ:「え? スサノオならこうするでしょ?」
ミチザネ:「……極めて重要な欠陥が発見されました」
オモイカネ:「手は相手に向けて振るうのではありません。自分の前に出すだけです」
ウズメ:「そんな拳で戦った気になるかしら?」
オモイカネ:「だからこそ、遊びとして成立させる必要があります」
アマテラス:「少なくとも、拳を振り上げる余地はなくしたいですね」
オモイカネ:「では、開始前に互いの拳を所定の位置に置くこととしましょう」
ミチザネ:「合図を統一する必要がありますね」
◇最初はグー――岩戸を閉ざす
オモイカネ:「勝負の開始時点では、全員が拳を握ることにします」
タケミカヅチ:「なぜだ?」
オモイカネ:「岩戸を閉じるためです」
アマテラス:「……はい?」
オモイカネ:「勝負を始める前に、まず争いを閉ざす。武器も暴力も使わないと、互いに宣言するのです」
ツクヨミ:「最初は、互いに同じ形というわけか」
オモイカネ:「はい。まずは拳を握り、勝負を始めることを宣言します」
ウズメ:「じゃあ、『最初はグー』でいいんじゃない?」
アマテラス:「グー?」
ウズメ:「拳を握る時の掛け声よ。なんとなく、そんな感じがしない?」
ミチザネ:「……擬音としては少々奇妙ですが、覚えやすさはありますね」
オモイカネ:「では、仮採用としましょう」
イナリ:「それから、次の掛け声は?」
オモイカネ:「それについては、名称を決めてから考えましょう」
◇命名会議――蛇拳、邪道拳、弱拳
オモイカネ:「では、この新しい勝負方法に名前を付けたいと思います」
イナリ:「スサノオ様への対抗策なのですから、何かそれにちなんだ名前がよいですよね?」
オオクニヌシ:「そういえば、スサノオ殿はヤマタノオロチを討伐されていたな」
ウズメ:「だったら、蛇拳なんてどう?」
タケミカヅチ:「蛇拳?」
ウズメ:「大蛇を倒した男に、今度は蛇の名を持つ拳で挑むのよ!」
ミチザネ:「本人に知られた場合、余計に怒らせる可能性があります」
オモイカネ:「では、別の案を」
タケミカヅチ:「そもそも、殴り合いもせずに拳の勝負を名乗るとは邪道だ!」
ウズメ:「それだ!」
タケミカヅチ:「何?」
ウズメ:「邪道拳!」
タケミカヅチ:「褒めていないぞ!」
イナリ:「でも、邪道というのは少し印象が悪い気が…」
オオゲツヒメ:「……弱い者でも勝てる拳、というのはいかがでしょう?」
オモイカネ:「弱い者でも勝てる拳……弱拳、ですか」
アマテラス:「よい名前ですね。力の弱い者でも、知恵と工夫で勝負できるということですもの」
タケミカヅチ:「しかし、弱い拳という名前では威厳がないぞ」
ウズメ:「だったら…」
ウズメが両手の人差し指を自分のこめかみに当てて知恵を絞りだす。
ウズメ:「蛇拳、邪道拳、弱拳! じゃ、じゃ、じゃ……じゃんけん!」
一同:「…………」
ツクヨミ:「……ずいぶん強引だな」
イナリ:「でも、呼びやすいですよ」
オオクニヌシ:「子供にも覚えやすそうですな」
オモイカネ:「……なるほど。複数の意味を持ちながら、特定の意味に縛られない名称」
ミチザネ:「単に語呂で決めただけでは?」
オモイカネ:「言葉とは、そうして定着するものです」
ミチザネ:「便利な理屈ですね……」
アマテラス:「では、じゃんけんに決定しましょう」
カン!
オモイカネ:「名称は『じゃんけん』とします!」
ウズメ:「やったー!」
ミチザネ:「……結局、蛇でも邪道でも弱者でもなくなりましたね」
オモイカネ:「いいえ。すべての意味が込められているのです」
ミチザネ:「……後世の語源研究者が苦労しそうですね」
◇掛け声の完成――じゃんけん、ぽん!
オモイカネ:「名称が決まりましたので、掛け声を整えましょう」
イナリ:「最初はグー、じゃんけん……」
ウズメ:「ぽん!」
ミチザネ:「……また語感ですか?」
ウズメ:「だって、言いやすいじゃない!」
オモイカネ:「確かに、手を出す瞬間の合図としては適切です」
ツクヨミ:「……妙なところで合理的だな」
オモイカネ:「では、掛け声は――」
『最初はグー、じゃんけん、ぽん!』
オオクニヌシ:「なるほど。これなら子供でも覚えられそうですな」
オモイカネ:「はい。複雑な説明を必要とせず、誰でも参加できることが重要です」
ミチザネ:「ただし、勝敗のルールは明確にしておく必要がありますね」
オモイカネ:「その通りです」
こうして、拳を使いながら拳を交えない、新たな勝負方法が形を整えていった。
◇あいこの問題――終わらない勝負
数回の試験を経て、基本的なルールは整った。
しかし、新たな問題が発生した。
イナリ:「最初はグー、じゃんけん、ぽん!」
ウズメ:「ぽん!」
双方、グー。
イナリ:「……同じです」
ウズメ:「勝負がつかないじゃない!」
オモイカネ:「同じ形の場合は、引き分けとします」
ウズメ:「じゃあ、もう一回!」
オモイカネ:「その場合は『あいこでしょ』という掛け声で、続けて勝負を行っていきましょう」
ウズメ:「あいこでしょ!」
イナリ:「しょ!」
双方、パー。
ウズメ:「あいこでしょ!」
イナリ:「しょ!」
双方、チョキ。
ウズメ:「あいこでしょ!」
イナリ:「しょ!」
双方、グー。
ウズメ:「あいこでしょ!」
イナリ:「しょ!」
双方、パー。
ミチザネ:「……」
ツクヨミ:「……」
アマテラス:「……ずいぶん続きますね」
オモイカネ:「確率的には、いずれ決着するはずですが……」
ウズメ:「あいこでしょ!」
イナリ:「しょ!」
双方、チョキ。
ミチザネ:「このままでは、会議の終了時刻に影響します」
タケミカヅチ:「もう腕相撲で決めろ!」
オモイカネ:「本末転倒です!」
カン。
恩兼が拍子木を鳴らし、勝負は打ち切られた。
◇最大の難題――負けを認めさせるには
一通りのルールが完成したところで、月読命が静かに口を開いた。
ツクヨミ:「一つ、根本的な問題が残っているのではないか?」
オモイカネ:「何でしょうか?」
ツクヨミ:「スサノオは、この勝負に負けたら、本当に引き下がるのだろうか?」
会議室が沈黙した。
アマテラス:「……」
イナリ:「……」
オオクニヌシ:「……」
ウズメ:「……あ」
ミチザネ:「今さら気づいたのですか?」
ツクヨミ:「あいつなら、『今のは練習だ!』と言い出すぞ」
オオクニヌシ:「『もう一回だ!』とも言いそうですなぁ…」
イナリ:「『今のは手が滑った!』とか……」
ツクヨミ:「『俺が姉上の岩戸に負けるわけがない!』とも言うだろう」
アマテラス:「……全部、言いそうです」
オモイカネ:「そこで、勝負の前にルールを明確に宣言させます」
ミチザネ:「具体的には?」
オモイカネ:「互いに勝敗の決定方法を確認し、結果に従うことを約束するのです」
タケミカヅチ:「約束を破ったら?」
オモイカネ:「……」
タケミカヅチ:「破ったら?」
オモイカネ:「その場合は、アマテラス様にお願いすることになります」
アマテラス:「私ですか!?」
オモイカネ:「姉君のお言葉ならば、多少は耳を傾けるかと」
ツクヨミ:「……多少、な」
アマテラス:「皆さん、弟に対する信頼が低すぎませんか……?」
ミチザネ:「これまでの実績に基づく評価です」
アマテラス:「……」
オモイカネ:「さらに、勝負は原則として三回までとします」
イナリ:「三回勝負ですか?」
オモイカネ:「はい。一度の敗北では偶然だと主張される可能性があります。三回勝負ならば、ある程度の納得感が得られるでしょう」
タケミカヅチ:「それでも負けたら?」
オモイカネ:「……その場合は」
思兼は少し考えた。
オモイカネ:「勝者が、敗者に対して礼を尽くすことにします」
オオクニヌシ:「なるほど。負けた側の面目を保つわけですな」
オモイカネ:「はい。勝敗を決することと、相手を侮辱することは別とします」
ミチザネ:「敗北した相手を挑発しない、という規則も必要ですね」
ウズメ:「えー、勝ったら自慢したいじゃない!」
一同:「…………」
ウズメ:「……はい。しません」
◇最終試験――素戔嗚尊役、天宇受売命
オモイカネ:「では、最終試験を行います」
ウズメ:「待ってました!」
ミチザネ:「嫌な予感しかしません」
対戦相手は、今回も稲荷。
ウズメ:「ガハハ! 俺様に勝負を挑むとはいい度胸だ!」
イナリ:「よろしくお願いします……」
オモイカネ:「では、始めてください」
ウズメ・イナリ:「最初はグー!」
ウズメ・イナリ:「じゃんけん、ぽん!」
ウズメ:✊
イナリ:✋
オモイカネ:「稲荷様の勝利です」
ウズメ:「なにぃ!? 俺様の岩戸が負けただと!?」
イナリ:「ルールですから……」
ウズメ:「そんな馬鹿な話があるかぁ!」
ダン!
ウズメが机を叩いた。
カン!
思兼が拍子木を鳴らした。
オモイカネ:「結果に従ってください」
ウズメ:「もう一回だ!」
オモイカネ:「三回勝負ですので、あと二回あります」
ウズメ:「よし! 次こそ勝つ!」
二回目。
ウズメ:✌️
イナリ:✊
オモイカネ:「イナリ様の勝利です」
ウズメ:「ぐぬぬ……!」
三回目。
ウズメ:✋
イナリ:✌️
オモイカネ:「イナリ様の勝利。三戦三勝です」
ウズメ:「…………」
イナリ:「ありがとうございました」
ウズメ:「……」
天宇受賣命は、ゆっくりと拳を握った。
建御雷が身構える。
ミチザネ:「……まさか」
ウズメ:「うおおおおおおっ!!」
ウズメは拳を振り上げ――
そのまま、悔しそうに床を踏み鳴らした。
ウズメ:「くっそー! 次は絶対に勝ってやる!」
オモイカネ:「……!」
アマテラス:「あら?」
ツクヨミ:「……殴らなかったな」
ウズメ:「だって、殴っちゃ駄目なんでしょ?」
オモイカネ:「その通りでした!」
ミチザネ:「……成功、ということでしょうか」
オオクニヌシ:「少なくとも、勝負の後に誰も怪我をせずに済みましたぞ」
イナリ:「……私、少し寿命が縮まった気がします」
アマテラス:「イナリ、お疲れさまでした」
オモイカネ:「これなら、スサノオ様にも受け入れていただける可能性があります」
ミチザネ:「ただし、あくまで模擬試験です。本人での検証は必要ですね」
オモイカネ:「ええ、もちろんです」
会議室に、久しぶりに明るい空気が戻った。
その時だった。
ドンドンドン!
突然、扉が叩かれた。
スサノオ:「おーい! 何やってんだ!?」
一同:「!!?」
スサノオ:「なんか楽しそうな声が聞こえたぞ!」
アマテラス:「す、す、スサノオ!?」
ミチザネ:「なぜここに!?」
スサノオ:「おい! 開けろよ! 俺も混ぜろ!」
ウズメ:「ど、どうするの!?」
オモイカネ:「落ち着いてください! まだ本人への説明資料が――」
スサノオ:「開けないなら、ぶち破るぞー!」
タケミカヅチ:「……俺が押さえるか?」
オモイカネ:「駄目です! 武力によらない解決を目指す会議でしょう!」
ツクヨミ:「では、どうする?」
オモイカネは一瞬考え、静かに言った。
オモイカネ:「……実地試験に移行します」
ミチザネ:「予定より早いですが大丈夫でしょうか!」
◇実地試験――暴れん坊、参戦
扉が開かれた。
スサノオ:「おう! 何の集まりだ?」
アマテラス:「え、ええと……」
オモイカネ:「新しい遊びの試験会です」
スサノオ:「遊び?」
ウズメ:「そうそう! 拳で勝負する遊びよ!」
スサノオ:「拳だと!?」
スサノオの目が輝いた。
スサノオ:「面白そうじゃねぇか!」
ミチザネ:「ただし、相手を殴ってはいけません」
スサノオ:「……は?」
オモイカネ:「手の形によって勝敗を決します」
スサノオ:「……なんだそりゃ?」
オモイカネ:「まずは、説明を――」
スサノオ:「よし! やろうぜ!」
ミチザネ:「説明を聞いてください!」
結局、ホワイトボードを使って、最初からルールの説明が行われることになった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
グーはチョキに勝つ。
チョキはパーに勝つ。
パーはグーに勝つ。
同じ手なら、あいこ。
殴ることは禁止。
負けたら結果に従う。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
スサノオ:「……つまり、拳で殴らずに勝負するんだな?」
オモイカネ:「はい」
スサノオ:「ふむ、……」
素戔嗚は腕を組んで考えた。
スサノオ:「……まあ、面白そうだな!」
一同は、心の中で安堵した。
オモイカネ:「では、対戦相手を――」
スサノオ:「姉貴! 勝負しようぜ!」
アマテラス:「私ですか!?」
スサノオ:「当然だろ! 勝ったら、俺の言うこと一つ聞いてもらうぜ!」
アマテラス:「なぜ、そうなるのですか!?」
ミチザネ:「勝負の条件は事前に双方の同意が必要です!」
スサノオ:「じゃあ、何を賭けるんだ?」
オモイカネ:「まずは練習です。何も賭けません」
スサノオ:「ちぇっ!」
こうして、高天原初の実地試験が始まった。
アマテラス:「最初はグー……」
スサノオ:「最初はグー!」
二人:「じゃんけん、ぽん!」
アマテラス:✋
スサノオ:✊
オモイカネ:「アマテラス様の勝利です」
スサノオ:「……」
一同が身構えた。
スサノオ:「……なるほど」
スサノオは、自分の拳をじっと見つめた。
スサノオ:「岩戸が、ウズメに負けるのか……」
アマテラス:「そういう決まりなのですよ」
スサノオ:「……」
ミチザネ:「……」
スサノオ:「……もう一回!」
オモイカネ:「はい。三回勝負です」
二回目。
アマテラス:✊
スサノオ:✌️
オモイカネ:「アマテラス様の勝利です」
スサノオ:「ぐぬぬ……!」
三回目。
アマテラス:✌️
スサノオ:✋
オモイカネ:「アマテラス様、三戦三勝です」
スサノオ:「…………」
アマテラス:「……スサノオ?」
スサノオ:「……」
スサノオは、しばらく無言で考えていた。
そして。
スサノオ:「姉貴……」
アマテラス:「はい?」
スサノオ:「……強ぇな!」
アマテラス:「……え?」
スサノオ:「岩戸も俺もウズメも使いこなすとは! さすが俺の姉貴だ!」
アマテラス:「……そ、そうですか?」
スサノオ:「よし! 次は俺も勝つぞ!」
そう言って、スサノオは楽しそうに笑った。
オモイカネ:「……!」
ミチザネ:「……!」
イナリ:「……成功?」
オオクニヌシ:「……成功、ですね」
ツクヨミ:「……スサノオが、素直に負けを認めただと!?」
ウズメ:「やったじゃない!」
会議室に、安堵の空気が広がった。
しかし。
スサノオ:「よし! 今度はタケミカヅチ! お前が相手だ!」
タケミカヅチ:「よいだろう!」
スサノオ:「負けた方は、腕相撲な!」
タケミカヅチ:「望むところだ!」
オモイカネ:「待ってください!」
ミチザネ:「なぜ戻るのですか!?」
アマテラス:「スサノオ!タケミカヅチ! 駄目です!」
カン! カン! カン!
オモイカネ:「本日の試験は終了です!」
こうして、初めての実地試験は、成功と失敗の入り混じる結果となった。
それでも、一つだけ確かな成果があった。
素戔嗚尊が、拳を振るわずに敗北を認めたのである。
◇結論――弱き者の拳
騒動が収まった後。
スサノオは「今度は絶対に勝つ!」と言い残し、上機嫌で帰っていった。
会議室には、疲れ切った神々が残されていた。
アマテラス:「……何とか、なりましたか…」
ツクヨミ:「少なくとも、今日は平和だった…」
イナリ:「それだけでも大きな成果です」
オオクニヌシ:「力ではなく、同じ条件で勝負できるというのは良いことですな」
オオゲツヒメ:「……あの方が、楽しそうに帰っていかれたのなら、よかったです」
オモイカネ:「はい。まだ改善の余地はありますが、一定の効果が確認できました」
ミチザネ:「ただし、本人が勝敗を受け入れることと、勝敗を理由に無理な要求を通すことは別です」
オモイカネ:「その通りです。今後は、勝負によって決めてよい事柄を限定する必要があります」
アマテラス:「では、この遊びを正式に採用するのですね?」
オモイカネ:「はい。名称は『じゃんけん』とし、広く普及させることを提案します」
ウズメ:「子供たちにも教えてあげましょうよ!」
イナリ:「お祭りの順番決めにも使えそうですね」
オオクニヌシ:「争わずに物事を決める手段として、広まるとよいですね」
タケミカヅチ:「……しかし、これでは武神の出番が減るな」
ミチザネ:「それが目的です」
一同は、静かに頷いた。
オモイカネ:「では、本日の会議を終了します」
カン!
―拍子木が打ち鳴らされた―
こうして、日本支部の極秘会議は幕を閉じた。
拳を交える代わりに、拳を見せ合う。
弱い神々が、強い神に対抗するために生み出した小さな知恵。
その知恵は、やがて神々の世界を離れ、人間たちの間にも広まっていった。
そして、いつしか人々は、天照も素戔嗚も天宇受売も忘れ、三つの形を別のものに例えるようになった。
拳は石に。
二本の指は鋏に。
開いた掌は紙に。
その名だけは、変わらず残った。
じゃんけん。
かつて弱い神々が、暴れん坊に対抗するために考案した、誰も傷つけない勝負の方法。
もっとも、その誕生の裏に、たった一柱の神への対策があったことを、人々は知る由もなかった。
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日本支部・特別非公開議事録
議題: 素戔嗚尊の暴走行為に対する非武力的解決方法の検討
開催場所: 日本支部・高天原会議室
司会: 思兼神
書記: 菅原道真
参加者: 天照大神、月読命、大国主命、稲荷、天宇受売命、大宜都比売、建御雷
投書者: 日本支部・有志一同(匿名希望)
投書要旨: 素戔嗚尊の武力による問題解決を抑制し、力の弱い神々でも公平に勝敗を決められる方法の考案を求める。
審議結果
1. 中国由来の拳遊びを参考に、三種類の手の形で勝敗を決する方法を考案した。
2. 拳・二本指・掌を、それぞれ天照大神・素戔嗚尊・天宇受売命を中心とした神々の協力に見立て、三すくみの関係を構築した。
3. 勝負開始の掛け声を「最初はグー、じゃんけん、ぽん」とした。
4. 名称については、蛇拳・邪道拳・弱拳の各案を経て、「じゃんけん」に決定した。
5. 同じ手の場合は「あいこ」とし、再度勝負を行う。
6. 勝負中の暴力、神器の使用、敗者への挑発は禁止とする。
7. 実地試験において、素戔嗚尊が武力を行使せず敗北を認める事例を確認した。
投書への回答:
武力に頼らず、誰もが対等に勝敗を決められる方法として「じゃんけん」を考案した。
本遊戯は、腕力の強弱に関係なく参加でき、互いの選択によって勝敗が決まる仕組みである。
今後、神々の間だけでなく、人間社会においても普及を推奨する。
残された課題
- 勝敗を決める対象と、決めてはならない事項の明確化。
- 敗北後に追加の勝負を要求する行為への対応。
- 神器・権能による不正行為の防止。
- 他本部への展開時におけるルール教育の徹底。
最終決定:
「じゃんけん」を日本支部公認の非武力的勝敗決定手段として試験採用する。
機密事項:
本遊戯の考案目的が素戔嗚尊個人への対策であった事実は、本人に開示しない。
書記所感:
武力を用いずに勝敗を決するという発想は、極めて有意義である。
特に、弱い神々が強い神に対抗するため、知恵を持ち寄って新たな仕組みを作り上げた点は、高く評価できる。
ただし、本来は争いを防ぐための遊戯であり、勝敗を口実として新たな争いを生じさせてはならない。
また、名称の由来については、蛇拳・邪道拳・弱拳という複数の案が存在し、最終的に語呂によって「じゃんけん」に落ち着いた。
後世において語源を問われた場合、説明が極めて困難になることが予想される。
追記: 本議事録は素戔嗚尊本人の閲覧を禁止する。
再追記: 天宇受売命による情報漏洩に注意すること。
再々追記: 本人が「なぜ俺だけ仲間外れなのだ」と抗議した場合の対応について、別途審議を要する。
書記:菅原道真
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※本作のじゃんけんの名称、掛け声、三すくみの由来は、日本神話を題材とした創作上の設定です。実際の歴史的な語源や成立過程を示すものではありません。




