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夫から三十年も放置されましたので、お飾りの妻は平気です~今さら愛されても困ります~  作者: 春乃りぜ
第三章 愛の行方

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100/100

100 ウィリーの正体

二人が熱い夜を過ごした翌日、なぜか王宮は祝福ムードだった。



「陛下、おめでとうございます!」

「長かったですね、ヴィルヘルム陛下!」



ホテルから帰宅したマデリーンとヴィルヘルムを、使用人たちが出迎えた。

二人はちょうど、仲良く腕を組んで馬車から降りてきたところだった。昨日の朝よりも近しい距離を見れば、察するのも当然だろうか。



何だか恥ずかしかった。

というか、二年間ずっと閨を共にしていなかったこと知っていたのか。

マデリーンは赤くなった顔を隠すように、ヴィルヘルムの後ろに移動した。



彼女の代わりに、ヴィルヘルムが一人で使用人たちからの視線を受け止めることとなった。

真っ先に前に出たのは、ダニエルだった。



「陛下、今日はずいぶんと機嫌が良さそうですね。当然か、昨日あんなことしたんだから……今日の仕事は期待してますよ?」

「ダニエル」



ダニエルは羨ましいというようにヴィルヘルムを見つめた。

そんな彼に、王妃宮の侍女が尋ねた。



「あら、オーウェン卿は恋人とかいらっしゃらないのですか?」

「陛下のせいでできないんですよ。今は仕事が恋人っていう状態ですね」



侍女たちはあらまぁ……と憐憫の視線を向けた。

ダニエルはそんな憐れむような目で見ないで!と必死に周囲に弁明した。



今年こそは結婚するぞ!と彼は全員の前で宣言した。

できるかできないかは、彼の主君であるヴィルヘルム次第なのかもしれない。



ダニエルはそんな苛立ちをヴィルヘルムにぶつけるように、彼に対して言った。



「てっきり陛下は私と同じ部類だと思っていたのに、そういうわけでもなかったようです」

「当然だろう?俺はお前とは違う」



二人の間で、バチバチと火花が散った。

ダニエルとヴィルヘルムは昔からの付き合いで、彼は唯一ヴィルヘルムに意見ができる存在だった。



「私より先に行ったからって、偉そうにしないでくださいね?」

「俺は最初からお前より偉い身分に生まれたんだぞ?わかっているのか?」



強気なダニエルに、ヴィルヘルムも負けじと言い返す。

そんな二人の言い争いを、マデリーンはじっと眺めていた。



(前も思ったけど……やっぱりどこかで見たことあるような気がしてならないわ……)



以前から感じていた、妙な既視感。

ダニエルとヴィルヘルムの言い争いだというのに、なぜか別の人物が思い浮かぶ。



一度抱いた疑念が、そう簡単に消えることはない。

すぐ目の前で言い争うヴィルヘルムが、彼女の中である人物と重なった。



「…………ウィリー卿?」

「……!」



マデリーンの何気ない呟きに、ヴィルヘルムとダニエルが驚いたように彼女のほうを振り向いた。

彼女はどうやら、ウィリーの正体に気が付いたようだった。



「マ、マデリーン……」

「陛下、よかったですね」



ダニエルはコツンと肘でヴィルヘルムの身体をつつくと、そのまま離れていった。

くだらない言い争いは終わり、マデリーンとヴィルヘルム二人の空間に移り変わった。

ヴィルヘルムはゴホンッと咳払いをすると、真剣な瞳でマデリーンを見下ろした。



「マデリーン……話したいことがあるから、俺と一緒に来てくれるか?」

「……」



マデリーンは無言のまま、小さく頷いた。

本当の意味で夫婦になった二人の間に、秘密はなしだ。



いつか話すとヴィルヘルムは誓ったのだから、遅かれ早かれ話さないといけなかった。

マデリーンは彼の反応で、ウィリーの正体がヴィルヘルムだということを確信した。



(もしかして……ウィリーとして、ずっと私を見守っていたの……?)



マデリーンの脳裏に、ウィリーの優しい笑顔が浮かび上がった。

彼はいつも彼女を傍で支え、困ったときには親身に相談に乗ってくれていた。



最近姿が見えなくて困惑していたが、まさかヴィルヘルムだったとは。正体を隠してまで、私に会いに来ていたのか。

あなたはそんなにも、私のことを愛していたの?



そのことがわかると、マデリーンは何だか彼のことがとても愛おしく感じた。



「陛下ぁ!」

「マ、マデリーン!?」



マデリーンは彼に後ろから飛びついた。

突然の行動に、ヴィルヘルムは顔を真っ赤にして狼狽えた。

普段のマデリーンからは想像もつかない行動だった。



「あらあら、仲がよろしいのですね」

「羨ましい……いや、何でもない」



ダニエルや使用人たちは、そんな国王夫妻を微笑ましそうに見ていた。

マデリーンは抱き着きながらヴィルヘルムの背中に顔をうずめた。



「陛下、ずっとずっと傍にいますね!約束です!」

「え、すっごい嬉しい……」



ヴィルヘルムは思わず本音を溢した。

そんな姿すら愛おしくて、マデリーンは彼を抱きしめる腕に力を込めた。



(愛しているわ、ヴィルヘルム)



たとえ、彼が全てを失うことになったとしても、彼女は彼の傍を守り続けるだろう。

ウィリーとヴィルヘルム―――違うようで同じ一人の人間を、マデリーンは永遠に愛し続けることを心に誓った。




読んでくださってありがとうございます!


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第100話にて、完結となります!最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

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