帝国第三皇子視点9 黄金の古代竜に乗って愛しのパティが帰って来ました
しかし、俺の決心とは裏腹にパティはなかなか俺と話してくれなかった。
俺が近づくと逃げ出すのだ。
もっともブラッドの奴も同じように避けられているから、二人から逃げてくれるのだ。
というか、これでは完全にブラッドと同じじゃないか! 全然俺とパティの距離がつまらない。
何ということだ!
そもそも授業中や教室の中ではパティはマチルダと一緒にいることが大半なので、なかなか二人きりにはなれない。
邪魔するな、と言ってもマチルダが俺の言うことなんて聞くわけはないのだ。
というか、パティは最近はマチルダだけじゃなくて、他の女どもとも仲良くしているのだ。
さすがの俺も女の大群の中には入りづらかった。
そんな俺を見て女どもに可愛がられている古代竜のガキは、馬鹿にしたように俺を見下してくれるんだが……
俺も古代竜になりたい!
古代竜になって女の子の胸に抱かれてみたい……
馬鹿なことを考えてしまった。
トイレに行こうとするパティに、すわ一人きりになるチャンスとついて行こうとして、
「まあ、ヴァージル様。いくら婚約者とはいえ、女性のトイレを覗きに行かれるのはどうかと思いますわ」
後ろから大声でマチルダに言われてしまったのだ。
こ、こいつなんてことを言うのだ!
パティからは汚らしい物を見る様に見られるし、ダンドネル侯爵令嬢からは陰で
「ヴァージル様が宜しければいつでもお付き合いいたしますわ」
と流し目を送られるし、そして更にその言われた現場をばっちりパティに見られて白い目で見下されて最悪だった。
マチルダの屋敷ならと思って屋敷に行くが、相手するのはマチルダだけで、パティは出て来てもくれないのだが……
そして、今日もマチルダが呼ばれていなくなって今がチャンスと思ったら、今度はパティがトイレに行こうと教室を出ようとしたのだ。先日のことわを思い出して思わず、躊躇してしまったのだ。
そこに俺の騎士が俺も呼びに来たのだ。
なんでも、同じクラスのレイラ嬢が昨日から家に帰っていないと言うのだ。
それはおかしい。
何か事件に巻き込まれたのか?
そう考えているうちにパティも帰って来ていないんだけど。
絶対におかしいと、俺は女子トイレに行くわけにもいかず、仕方なしにマチルダに見に行ってもらったのだ。
「大変。中にはおりませんでしたわ」
慌ててマチルダが帰ってきた。
慌てて探すと、騎士の一人が女性の後ろを歩いていくパティを見たというのだ。
「何故、止めなかった」
俺は理不尽にも騎士を叱っていた。
「申し訳ありません」
思わず騎士が頭を下げたが、本来騎士を怒るのは間違いだ。声をかけなかった俺が悪いのだ。
「いや、たとえ誰かに捕まってもパティなら大丈夫だろう」
ブラッドは能天気に言ってくれたが、
「パティは抜けているところがあるから心配なのよ。いくら最強の古代竜と一緒にいるからと言ったって」
「えっ、パティのペットって古代竜だったのだか」
そこに、驚いたブラッドの奴がいた。
「お前この前の件で理解できなかったのか」
俺は能天気な侯爵令息を見て、この国は大丈夫なのかと思ってしまった。
俺は王太子に言って直ちに王都全体に捜索をかけてもらったのだ。
と、すぐに、古代竜のようなものが出現して王都の南の方に飛んでいったという報告が入ってきた。
俺は慌てて、そちらの方に自分の騎士たちを率いて駆け出そうとしたのだ。
その時だ。
「きゃ、空から何かが飛んでくるぞ」
屋上から生徒の声が聞こえた。
俺は慌てて空を見上げるとキラリと金色に輝く物体が目に付いた。
そして、それはぐんぐん大きくなってきたのだ。
「り、竜だ!」
「古代竜だ。皆逃げろ」
王太子が大慌てで叫んだ。
「しかし、誰か乗っているぞ」
俺はその声に目を凝らすとたしかに乗っていた。
それは
「パティだ!」
俺は驚いて叫んだ。
ということはこの巨大な古代竜がパティのペットのぴーちゃんなのか。
「「「パティ!」」」
俺たちが叫ぶと
「皆!」
パティが俺たちを見つけたみたいだ。
そして、強烈な風を巻き起こしつつ古代竜が史上始めてリーズ王国の王立学園の校庭に降り立ったのだった。
パティとレイラを乗せて。
パティのペットが古代竜であったことと、人を助けて帰ってきたことは大センセーショナルを巻き起こし、王国中はもとより、帝国全土にも一瞬で広まったのだ。
そして、この事が大問題を引き起こしたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
帝国の史上最強の守り神を属国である王国のたかだか男爵令嬢がペットにしていることが判明してしまいました。
どうなるパティ、続きは明朝です。
恐らく一週間以内に完結します。
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