人相の悪い男たちが待ち構えていました
「どうするのよ! こんな目立つことして! ピースケの存在が皆にわかっちゃったじゃない!」
帰って来た私を家に連れて帰るや否やマチルダが怒ってくれたんだけど。
「えっ、そんなこと言ったって、待ってても誰も来なかったし、レイラが気を失ってしまって慌てて帰って来たのよ」
私は言ったが、
「まあ、パティだから、仕方がないと思うけれど、下手したらあなたが狙われるのよ」
「えっ、狙われるってなんで?」
「だって、あなた、最強の古代竜にいう事を聞かせられるのよ。下手したら帝国の軍隊をやっつける事も出来るわ。みんなあなたを手に入れようとするわよ」
マチルダが話してくれるには古代竜は帝国では守り神として讃えられていて、その存在は神に等しいのだとか。その古代竜をペットにしている存在は下手したら皇帝陛下と対等の立場になるそうだ。
そして、皆が私が古代竜から下りるのを見てしまったという事は私がその立場になり得るという事で……
「そんな……」
私はそんな大それたことになるなんて思ってもいなかった。
肝心のぴーちゃんは帰ってきたら何故かそのまま小さくなって私の胸の中でスウスウのんきに寝ているんだけど……
「まあ、いざとなったらあなたは無敵だから良いけど」
「いや、マチルダ、どうしよう……」
私は混乱した。みんなが私を浚おうと襲ってきたらさすがに逃げ切れない。
いや、逃げようと思えば変身したらよいけど、三分間しか続かないのだ。絶対に追いつかれてしまう。
「まあ、だから私の庇護下に入れたんだけど、ちょっとバレるのが早すぎたのよね。まあ、良いわ。パティの事は私が守ってあげる」
胸を張ってマチルダが宣言してくれた。
「有難うマチルダ。恩に着るわ」
「まあ、大変だけど、頑張ってみるわ。だから私のいう事はちゃんと聞くのよ」
「判った」
そう、私は何も考えずにここで頷いてしまったのだ。
「で、どうしてこうなった?」
私は頭を押さえていた。
私達は今、帝国との国境付近の魔の森に来ていた。
「マチルダ様、前方200メートルにオーク発見しました」
「オークくらい自分たちで倒しなさい。それよりもフェンリルはまだ見つからないの?」
「はっ、白い影は全く発見できません」
「やっぱり、国境を超えないといけないかしら」
マチルダは暢気に言ってくれるが、
「良いのか、マチルダ、勝手に国境を越えて」
私の左横のジルが心配して聞いた。
「国境と言っても明確に分かれていないし、多少ならばれないだろう」
ブラッドが私の右横から言ってくる。
「そういうわけにはいくまい」
「ふんっ、格好つけているが、俺と違って貴様は帝国に入ると命の危険があるのかもしれんからな」
「な、何だと」
もう、二人して私を間にして喧嘩するのは止めてほしいんだけど。
それも、もうずうーっとだ。まあ、喧嘩するのは仲のいい証拠かもしれないけれど、何も私を間に挟んでやることないじゃない!
「大丈夫よ。帝国には許可を得ているわ」
マチルダが言ってきた。
「勝手な事を」
何故かそのことに対してジルが怒っているんだけど。
「気にしなくても良いわよ。私が魔物狩りでうろうろしているとしか報告していないから。あなたの事もパティの事も話していないわよ」
「ならいいが」
ジルが頷くんだけど。
私は確かに時の人かもしれないし、帝国に入ったら捕まえられるかもしれないけれど、ジルも元々帝国の子爵だ。マチルダの婚約者だから高位貴族だとは思うけれど。帝国に帰ったらまずい事でもあるのだろうか?
それにここにいるのが私にとって危険だったら、何もこんなところに来る必要はないのではないだろうか?
私は確かに身を守るために、マチルダに協力してほしいと言った。
でも、その後にすぐにマチルダが、じゃあ、北の魔の森に行きましょうと言ったのだ。
私はそれが何故必要な事なのか良く判らなかったのだが……
やっぱりこれってマチルダがフェンリルを捕まえてモフモフしたいだけではないのだろうか?
「パティ、どうしたの? 不満そうな顔して」
「だってこれと私を守るって事とどう関係するのかなって」
「ええええ! 良いじゃない。たまには私のいう事聞いてくれても。フェンリル捕まえられたらあなたにもモフモフさせてあげるから」
やっぱりそうだった。嬉しそうににやにやしているけど、絶対に自分のためじゃん。
私が切れようとした時だ。
「前方に人の集団がいます。お嬢様に面会を申し込んできていますが」
斥候の騎士が駆けこんで来たんだけど。
「やっとお出ましになったの」
マチルダが不敵な笑みを浮かべたんだけど。
ええええ!
貴方これを待っていたの?
広場に待っていたのは剣を構えた冒険者崩れの人相の悪い男達だったのだ。





