僕とミハイル 2
「少しは落ちついた?」
寮の敷地内の公園に連れ出された僕に、ミハイルはコーヒーを買ってきてくれた。
「…どうかしていました。」
「うん、そうだね。」
「あなたに止められなかったら…僕は今頃…」
「もっと後悔する所だったね。」
「部屋に来たのがあなたでよかった…」
「ふられた者同士?」
「…」
「君はまだ子どもだ。」
「…」
「まぁ私も16だし、子どもと言えば子どもだけど、君はまだ社会的経験が少なすぎる。ずっと小さな国の中にいてご両親に大切に守られてきて初恋の人が将来結婚する人をだと思ってる。違う?」
違わない…
「君は自分の国をどうしたい?将来どのようにしていくつもりか展望はある?」
「それは…」
「はっきり言おうか?」
ミハイルが僕を見て笑う
「今の君ではフリッツに勝てない。リネアがフリッツを選ぶのは当然だよ。彼はあの子の為に動ける人だ、君や私は自分の利益や欲望が最初にあって、それを満たす為に動くタイプだからね」
「…否定できません」
「だからね、君はもう少し社会的経験を積んだ方がいい。他の女性とも付き合ってみてもいいし、もう少し世間を知るべきだ。」
「僕に…リネアを諦めろ、と?」
「それは違う」
「…」
「経験を積んで使える人脈を増やし、何かあっても衝動的に行動しないよう精神力を鍛えることも必要だね。」
「はい…」
この人は、どうして僕のことが分かるんだろう?すべて見透かされているような…。
「それに、君は女性を知らないままリネアと結婚するつもり?」
「は?」
「彼女が可哀想…。」
「何を言い出すんですか?」
「だって楽しませてあげられないじゃないか。あんなふうに攻めたら女性がリラックスできないし、君はちゃんとリードできないでしょ?」
僕は色々な意味で恥ずかしくなった。顔が熱い。
「はは、可愛い。」
「からかわないでください。」
僕は、どうしてこの人とこんな話をしているんだろう?
しかも、不思議と居心地も悪くない。
危険な人かもしれないのに。
「私たちはフリッツみたいにはなれない。生まれもった性格も環境も違うし。でもね、正攻法で勝ちに行くだけがすべてじゃない。私たちは、私たちのやり方がある。君は幼なじみで親友である事、リネアの国の皇太子であるという手札を持っている。でも、私から言わせるとまだそれだけでは弱い。だから、君は君のやり方でもう少し強い手札を手入れるべきだ。」
「ミハイル…。」
「本当に手にいれたいなら警戒されたらいけない。時間をかけてゆっくり攻めないとね。」
「あなたは、まだリネアを諦めていないという事ですね?」
「どうして一時の恋愛に一喜一憂する必要が?」
「…」
「どの道あの二人は別れる。」
「どうして…?」
「お互いがお互いの気持ちを優先するから」
「…。」
「ヴィルフリート、君も一度くらい別の女性と付き合ってみるといい。女性の事も理解できるし、リネアも寂しくなって嫉妬してくれるかもしれないよ?アリーナなんてどう?二人とも人形みたいで結構お似合いじゃない?」
「あなたは自分の妹を…」
「君ならいいよ。変なのは私がいつも阻止しているけど。」
なんなんだこの人は…。
でも僕は、あの部屋から連れ出してくれたのがこの人でよかったと思った。フリッツだったら、今こんな風に冷静でいられなかったに違いない。
そうだ、…オスカルを最終的に手に入れるのは僕だ。
僕は、今僕ができる事をしよう。
この留学の機会を無駄にしたらいけない。
「飲みたい気分だ。付き合ってくれる?」
「いいですよ。」
この日を境に、僕とミハイルは度々会うようになった。




