変人決定戦
ミハイルとリネアがテラスでずっと真剣に話しているのを私は横目で見ていた。
せっかくソフィアやシャーロットと話をしているのに会話が頭に入ってこない。
ミハイルのせつなそうな顔を見ると胸が痛い…。
「複雑そうだな。相変わらず。」
シャーロットが気の毒そうに私を見た。
「…バレてた?」
「まあな。ミハイルはなぁ…。君も面倒なのと婚約したな。」
「…まさかこんなに早く意識すると思わなかったのよ。あたしは長年の片思いが実った幼馴染みと別れたばっかりだったし。」
「…まあ時間は関係あるようでないからな。私も同じだ。」
「お互い好きな人がいる同士都合がいいって思ったの。だからあたしがミハイルに提案したのよ、婚約しないか?って。…それなのに。」
「…あれはなぁ、悪い奴じゃないが変な奴だぞ?」
「…間違いない。」
「セル君まで。」
「…変な人だよ。まぁ、リネアもフリッツも、父上もおかしいけど。」
「間違いないな。」
「みんな人の事言えないでしょ?」
「母上…。私はこの中では一番普通だと思っています。あ、ヴィクトリアもか。」
「私も結構変わっていると言われていたけどこの中にいると普通よね。」
「失礼な!」
「そうよ、どういう意味よ?」
「…まあ、変人の一番は父上かリネアだと私は思っていますけど。」
「そうだな、私は君の父をよく知らないからリネアとミハイルがおかしいと思っている。あとはイーチェンも変人だな。」
「確かに…。」
「後で多数決をとってみるか。」
「シャーロット…めちゃくちゃくだらなくない?」
セル君、同意するわ。
「いや、面白いだろう?」
シャーロットも結構変わってるわよね。リネアと仲が良い理由がだんだん分かってきた。
「何その楽しそうな話。」
私たちのくだらない話にニコライ大統領が参加してきた。
「父上…。」
セル君とソフィアが嫌そうな顔をしている。
「君達リネアどこにいるか知らない?」
「リネアならテラスに。」
「あ、フリッツー。リネアを呼んできて。」
「ニコライ…あなた何を話すつもり?リネアはもう婚約者もいるんだからおかしな事しないでよ?」
「ソフィア…。僕がみんなの前でそんな事をすると思う?」
「父上、リネアを膝の上に乗せたりしないで下さいよ。誰も見たくないので。」
何それっ?
「それくらい良くない?」
「やめて下さい。」
「ニコライ本当にやめて。フリッツも嫌がるわ。」
「以前物凄く嫌そうな顔をされたよ。思い出したら笑えてきた。」
「いや、笑えません。」
「あ、あの…ニコライ大統領?」
「なんだい?」
「あの…。」
…聞けない。本当にリネアが好きなんですか?なんて聞ける訳がない。
「あ、いえ…。」
「あ、そうだ。君、よろしくね?」
「え?」
「ミハイルの婚約者になったんでしょ?よろしくね。」
「あ、よろしくお願いいたします。」
よく見たら本当にミハイルに似てる。見た目だけならこちらの方が好みかも。
「君みたいに綺麗で利用価値の高い女性を、君のお父さんもよく認めたよね。リネアとフリッツの婚約の時はあんなに反対したのに。」
「…利用価値?」
「ニコライ」
ソフィアが怪訝な顔をした。
「だってそうでしょ?フレーデル王国の国王の長女だよ?欲しい人だらけじゃない。」
「…。」
確かに、よく父上が許してくれたと思う。
「まあ、ミハイルが僕のあとを継ぐと分かって安心したのか、確実にそうする為に君を送り込んだか。」
「…。」
あの父なら後者だろう。
そうか…。私も利用されたのか。
「ニコちゃん、呼んだ?」
「呼んだ。さっきみんながこの中で誰か一番変人か多数決をとるって言ってたからさ。」
「何それ?そんなくだらない話で呼んだの?」
本当に…。呼んだ理由それ?
ただ話したかっただけよね?
「まあまあ、で、どう思う?」
「そんなの聞くまでもない。で?ニコちゃんは誰だと?」
「リネアでしょ。」
「何で?誰に聞いてもニコちゃんだって言うよ。ねぇ、セル、ソフィア?」
「だね。」
「そうね。…でもいい勝負よ。」
「冗談きついよ。私はこんな変人じゃないし。本当に自己中心的だし我が儘だし、人を利用しまくるからね。」
「ひどくない?元パパに向かって。」
「どこが?散々利用しておいて。」
「利用…。」
「ヴィッキーも気をつけてね。この人めちゃくちゃ人使い荒いから。」
「ヴィクトリアにはそんな事しないよ、普通のご令嬢だから。」
「どうだか。」
「普通の令嬢、ですか?」
間違ってはいないけど、何だか…。
「そうだよ。だから令嬢として活躍してもらわなきゃね。」
「あの、私もリネアみたいにお仕事させていただけませんか?」
「…無理だよ。」
笑顔で否定された。
「適材適所だよ、ヴィクトリア。王室の令嬢として大切に育てられてきた君には君の生き方がある。君は知らない場所で知らない人に会ってお金の交渉をする事ができる?」
「…。」
やったことがない…。お金自体自分であまり扱った事もないのにできるだろうか…。
「父上、もうそれくらいに。」
「ミハイル。」
「私の婚約者をいじめないでください。」
…この人はこういうセリフをさらっと言ってしまう。
「別にいじめてないよ?人聞きの悪い…。」
「ユーラ、ニコちゃんがこの中で一番変なのは私って言うんだ。」
「…。それは悩むね。」
「俺はミハイルだと思う。」
「イーチェン…、君に言われたくない。」
「ニコライ大統領だろ。こんなに変な人他にいない。」
「だよね?フリッツ。」
…いつの間にか全員参加してるし。
「デイヴィッドは?」
「そうだなぁ…。やっぱりニコライ大統領じゃない?」
「ほらね。」
リネアが得意気だ。
「まぁ、僕も自分が他の人とは違うって自覚はあるけどね。」
…ニコライ大統領は自分が選ばれて嬉しそうだ。
「ヴィクトリア、気にしなくていいからね。父の言った事。」
「…でも間違ってないもの。」
「君はリネアみたいになる必要はないから。君は君の得意な所を活かすべきだよ。」
「…あたしだって、ミハイルを助けれる存在になりたい。」
「…ヴィクトリア…少し二人で話をしない?」
「…。ええ。」
鼓動が早くなる…。
私…、失敗しちゃった…?




