交流パーティーの話
「…メルア大陸の大統領の子息との交流パーティー?」
デイヴィッドが私たちと夕食を食べるのがすっかり日常になってしまった。彼はリネアとソフィア、セルゲイ、イーチェンの食事当番に合わせて来ているのが分かる。
ソフィアと私はまだ練習中だ。
「そう。たまたま君たちの話をしたら、ぜひ紹介して欲しいって。別の大陸の名だたる国の王族や名家の子息が揃っている機会ってなかなかないし。この国は王族に憧れもあるからね。」
「…私はあまり関心ないなぁ。なんだか面倒くさい。王族でもないし、ドレスも似合わないし。」
「リネア、本当にいいのかい?世界中の美味しい料理を用意してくれるみたいだよ?」
「…片隅で参加するだけなら。」
「お前はまた食い物につられるのか。本当に食い意地がはっているな。」
「イーチェンに言われたくない。」
「俺はもう大人だ。食い物につられたりはしない。」
「…セルゲイはどうする?」
「これならの事を考えると知り合いになって悪い相手じゃないと思うよ。」
「なかなか抜け目のない発言だな。セルゲイのくせに。リネアとセルゲイが行くなら私も行く。」
「じゃあ俺も。」
「…あたしも行くわ。知り合いが増えるのは良いことよね。…それにしても、デイヴィッドって一体何者なの?見た目はその…あれだけど交友関係が本当に幅広いわよね。」
「デイヴィッドさんは、お爺さんの代はリスラ王国の貴族だったんだ。移住してからこちらで凄く大きな会社をいくつも作ったんだよ。」
「…そうだったの。」
「まぁ僕はそんなのあまり気にしてないけどね。」
「デイヴィッドは服装が毎日小汚ないしな。貴族の片鱗を全く感じさせない。」
「シャーロット様にはかなわないなぁ…。」
デイヴィッドが苦笑いをしながら頭をかいた。
「シャーロットは本当に口が悪いんだから。私はデイヴィッドさんの服装好きだよ。」
「リネア、君もデイヴィッドと同じだ。こちらにきてから服装がだらしなくなっている。なんなんだ、その色のあせた服は…。」
「ヴィンテージだよ。今はまってるの。」
「二人とも小汚ない。友人として恥ずかしい。そのうち鼻や口にピアスをあけたりしないでくれよ?」
「ちょっと興味あったんだ、よく分かったね。」
「タトューも駄目だぞ。君は王族になるんだからな。」
「ドクロのとか入れてみたいんだけど。」
「…駄目だ。そんな事をしたらフリードリヒに怒られるんじゃないか?」
「ヴィッキー、どう思う?」
「…そうねぇ。なんて言うかしら。」
「ユーラは図案によるって言うと思うんだよね。うん、入れるならユーラに下絵を頼もう。」
「…そういう問題なの?」
「…とりあえず、パーティーは来週ね。カジュアルな集まりだから君たちの国のパーティーのように正装しなくていいよ。」
「…どんな感じにしたらいいか分からないわ。」
「じゃあみんなでドレスを買いに店に行く?案内するよ?」
「そうね。」
「ヴィッキー、同じようなの買ってきて。なんでもいい。」
「リネア、君のお子さま体型と豊満な胸をもつヴィクトリアの体型と同じ物が着れると思うのか?無理がある。」
「えー?最近は少し胸も大きくなったんだよ?」
「そんなもの、彼女に比べたらあってないようなものだ。」
「人の事言える?」
「…言えないな。だから君も買いに行くんだ。」
シャーロットとリネアの会話にみんな気まずくなり目を泳がせている。この二人の会話が面白い。
「…俺もシャーロット様が正しいと思う。」
イーチェンが顔を赤くして言った。
「イーチェンまで!」
「いや、そうじゃなくて、似合うのは人それぞれ違うし。」
「だって選ぶの苦手なんだ。」
「じゃあ俺が選んでやるよ。」
「本当?」
「ああ。それほど高くなかったら買ってやるし。」
「イーチェン、相変わらずリネアにだけ甘いな。」
シャーロットがまたつっこんだ。
「…そりゃ、まぁ?」
「君はまだしつこくリネアを追いかけているのか?」
「うっ…。」
シャーロット…みんなが聞けない事を…。
「イーチェン、君はハンサムだし頭もいいし、お金持ちだ。性格も明るく話しやすい。さらに料理も上手だ。」
「…ありがとうございます…?」
「だからリネアではなく他のもっと魅力的な女性を見つけるべきだと私は思う。私も協力しよう。」
「…えっ?!」
「君にはこんな小汚ない格好をしている男か女か良く分からない奴より綺麗で女性らしい人が合っていると思う。」
「シャーロット、滅茶苦茶私をディスってるね。ひどくない?」
「ひどくない。私は思った事を正直に言っているだけだ。」
「君は私が男なら私を絶対好きになっていたと思うよ?」
「…どうかな?かなり女をたぶらかしそうじゃないか。」
「失礼な。」
「だいたい君はあちこちでいい顔するから男が勘違いするんだ。八方美人だし実は小悪魔だからな。」
「…私が?」
「自覚がないのが更に厄介だ。」
場が静まり帰った。
これは…言い過ぎだろう。
いくら二人の仲が良くても…。
「…。セル。君の彼女ひどくない?」
「ほら、またそうやって男に甘える。」
「甘えてないし。シャーロットの馬鹿。」
セルゲイがシャーロットを少しきつい目で見た。
「…シャーロット…少し言い過ぎ。」
「セルゲイ?君はどちらの味方だ?」
「…どちらでもないよ。君こそ何故そんな悪態をつく?体型や服装の嗜好を君が批判するのは良くない。」
…なんか雲行きが、怪しくなってきた。
いつの間にかイーチェンが観客側にまわりリネアとシャーロット、セルゲイの三角関係のような展開になっている。
デイヴィッドは楽しそうに見ている。
セルゲイは普段落ち着いていて静かだけど言う時ははっきり言える人なのね。
私たちが静かに様子を見ているとシャーロットの瞳から涙がこぼれ始めた。
えっ!?泣いちゃった?
「…シャーロット。」
…何故かリネアがシャーロットを抱き締める。
何なの?この展開は…。
「私はセルを君からとったりしないよ?」
「…。」
「セルゲイがいつもリネアの話ばかりしてリネアを誉めるんだ。」
「…私はセルのきょうだいだから。」
「…。ズルい。君はいつもずるいんだ。」
「…ごめんね?」
「…君は悪くない。でもズルい。セルゲイの一番大切な人だから…。」
成る程…。彼女はやきもちをやいていたのね。
「分かるわ。」
「…ヴィクトリア?」
「…滅茶苦茶良く分かる。リネアはズルい。」
「…そんな事を言われても…。あ、私今日はスクールの宿題があるからもう部屋に戻るね?」
「逃げるのか。」
「逃げるのね。」
「…また明日っ!」
リネアは気まずそうに部屋を出ていった。
「リネアが可哀想だ。」
「そうだよ。」
「…イーチェンやセルゲイには私たちの気持ちは分からない。リネアを贔屓しているのに気づかないし。」
「そんな事を言われても…なぁ?」
「…。」




