帰宅
僕たちがアパートに帰るとユーラが紅茶とパイを用意してくれていた。
「ただいま。」
ユーラが僕にハグをした。
「おかえり。」
「何か落ち着くね…。ここが家って気がする。」
「本当、あ、私達きょうだいになったしね!」
「リネア、私は兄じゃないからね。セルゲイは弟で構わないけど。」
「…そのうちお兄さまって呼んでみようかな?」
「本当にやめて。」
「…どうだった?」
「うん、進展しそうだよ。セルも結構やる気になってるしね。」
「私も落ち着いたらそっちに関わりたいな。」
「ユーラは他にも何かやってるんだよね?」
「うん、起動に乗ったら話すよ。」
「分かった。」
僕は客間のソファーに寝転んだ。
「…なんかさ、滅茶苦茶疲れた。スモーランドにいってから怒涛の日々だったし。やっとお店を開店させたと思ったらさ…。やばかった。」
ユーラが僕を見てため息をついた。
「男二人の前で寝転んだりして、君は恥ずかしくないの?」
「特に恥ずかしくない。」
「はー…。もう少し意識して欲しいな。」
「リラックスできる間柄って事だよ?」
ユーラが隣に座って僕に顔を近づけてきた。
「ユーラ…近い…。」
「こういう事されたくなかったら気をつけて。」
僕は体勢を変えてユーラの膝に頭を乗せた。
「リネア…。」
「兄上だけずるい。」
「セルゲイ、全く羨ましくない。これは妹もしくは弟モードだ。」
「みんなお兄さんやお姉さんがいてさ、私だけ一人なんだもん。ずるい…。私だってまだ15歳なんだよ。家で家族とのんびりしたってよくない?」
「…リネア、今日だけだよ?」
「うん。」
「困った子だな…。」
ユーラが僕の頭を撫でてくれる。
僕が猫ならゴロゴロいってるだろうな。
「リネアでも甘えたい時があるんだね?」
「そりゃ…ずっと気をはっていたから疲れが一気にきたんだよ。リスラ共和国ではいきなり人生に関わる選択を迫られたし、スモーランドで襲われた時なんか、本当はめちゃくちゃ怖かったし…。エンゲル王国についたらフリッツはいるし婚約レースの賞品にされるしさ。で、いきなりフレーデル王国で国王に会う事になるし…。」
「盛りだくさんだね。」
「…自分にみんなが思ってくれるほどの価値なんかないのに、期待に応えられるのかな…。」
「リネア、みんな別にリネアに何かを期待してる訳じゃないと思うんだ。フリードリヒが言ってたんだけど、一緒にいるだけで楽しいって…。それだけじゃないかな?だからそんなにプレッシャーを感じる必要はないと思うよ。」
「セル…。ほんと?」
「私もセルゲイの言うとおりだと思う。君と何かがしたいだけだで、何かを求めている訳じゃない。」
涙がでてきた…。
「…。ありがとう…。そんなふうに言ってくれて。私は中途半端に男だし女だし、自分が嫌になる時もあるけど…二人とこうして一緒にいれて本当によかったと思ってるんだよ。」
「それは私達の方だよ。君がいなかったら私もセルゲイも今の自分ではなかったから。君に会えて君が父と向き合ってくれたから私達は変われた。」
「そうだよ、今回ようやく父上のことちょっと許せた気がする。リネアのお陰だよ。」
「セルはバレエに専念するの?」
「うん、二年間自分を試してみる。」
「…頑張ってね。その間にメルア大陸に行くことになったらどうする?」
「うーん…その時考える。」
「ユーラは?フランチャイズの話、多分進むよね?」
「そうだね。予想だけどこっちがある程度起動にのったら本格的な話しになるんじゃないかな。一年以内の話になるかもしれない。」
「ユーラは行く?」
「行くよ。君の保護者兼任で。」
「よかった…。あ、ルイも行くかもしれない。ランク王国の。」
「ああ、母親が顧客だった彼ね。…なんでまた…?」
「さぁ、自由な人みたい。」
「あとはイーチェンか。彼は行くだろうな。」
「ねー、またみんなで住むの?」
「…。合宿生活みたいだね。できれば住むのはこのメンバーだけにしたいけど…。一応身内だし。」
「…ご飯のバラエティーを考えるとシアナ料理とランク料理はあるといいから近くには住みたいね。」
「…。」
セルとユーラが顔を見合わせてため息をついた。




