再来
ユーラの家を出る時、ニコちゃんが僕たちを見送りに来てくれた。
「気をつけてね、いってらっしゃい。」
いってらっしゃい…か。
「はい、行ってきます。」
「うん、ミハイルも、リネアを頼むよ。」
「はい。」
ニコちゃんが僕に包みをくれた。
「これは…?」
「飛行機に乗ったら開けてみて。」
「ありがとう?」
「じゃ、夏休み待ってるからね。成績はすべてA以上とること、店もがんばってね。僕もそのうち食べに行くから!」
「ニコちゃん、私との約束忘れないでよ。」
「…もちろんだよ。」
「リネア…?」
「じゃあ、行ってきます!!」
飛行機の中で包みを開けると一冊の本が入っていた。少し古い本だった。
「うわ、レシピ本だよ。」
「…これ…。」
「ユーラ、どうしたの?」
「…私と、アリーナの母親が書いた本。」
「えっ!?」
「リスラ共和国の家庭料理のレシピ集。これは初版だから父が買ったものかな。」
「え?お母さんの本が出版されてるの?」
「うん。今も売れてるんだよ。」
「すごい!!帰ったら作ってみるね!…リスラ語勉強しなきゃ。」
「…やばい。」
「え?」
「嬉しすぎる。」
「どうしたの?」
「だってリネアが私の国の言葉を勉強してくれたり母の料理を作ってくれるんだよ?嬉しいに決まってる。」
「ニコちゃん、なんだかんだ言ってユーラが可愛いんだね。」
「…。」
ユーラが赤くなる。
「…そういえばさ、ユーラやニコちゃんはアリーナがヴィルと婚約してよかったの?」
「いいんじゃない?ヴィルフリートは真面目だし、アリーナにあってると思うよ。」
「そう?」
「彼は君の相手としては役不足だけどアリーナは大人しいし、あまり変化を好むタイプじゃないからね。きっと私や父から離れられてほっとしているはずだ。」
「確かにユーラやニコちゃんと一緒にいたら疲れそう…いてて。」
ユーラが頬をつねる。
「君にだけは言われたくない。」
「私もさ、ヴィルにはアリーナがあってると思うんだ。」
「なんで?」
「アリーナの事はよく知らないけどあのヴィルがこれだけずっと一緒にいられるってかなり凄いことなんだよ。昔から女嫌いだったしさ。」
「君は寂しくないの?彼は大切な人だろう?」
「うん。大切だよ。彼は一生特別。」
「…なんかズルい。」
「…あ、見えてきたよ。」
スモーランドだ…。
「心の準備はいい?」
「うん、一晩寝てすっきりした。」
「私はなかなか寝れなかったのに。」
「なんで?」
「…。」
◇◇◇
ユーラがヴィルに頼んだ通り僕たちは郊外に迎えにきた馬車に乗った。馬車も普通の馬車で誰が乗っているか分からないようにしてある。このまま城まで行けば後は父上と母上に会うだけだ。
いよいよだ。緊張してきた。
もう少しで中心街という距離で馬車が何故か突然止まる。
「…どうしたのかな?」
「外が騒がしいね。」
僕は嫌な予感がした。まさか…。
また、なのか…?
また僕は馬車にいる所を狙われ、襲われるのか?
「ユーラ…武器は持ってる?」
「…リネア…。まさか、私たちが来たことを知られた…?」
「…可能性が高い。」
「銃が2丁ある。君は使える?」
「一応。ずっと使ってないから自信はないけど。」
「私も久しぶりだ。…君の予想はあたりそうだよ。私たちは囲まれたみたいだ。」
ユーラがカーテンから外を覗く。
「かなりの数の人間が取り囲んでるな。フェルセンもいる。こちらに向かってくる…。」
僕は銃に急いで弾を装填した。あの事件があってから何度か銃の練習していたけどちゃんとできるだろうか?
「それにしても…どうやって知ったんだ?」
「城にスパイが入れば簡単だろう?もしくは、君たちが信用している友人とか…。」
「カール…?」
フェルセンの後ろを歩いていたカールが僕たちの馬車を開けた。
「リネア、久しぶりだな。」
カールの握る銃がこちらに向けられていた。
「カール…。」
「君たちを傷つけたくはないんだ。大人しく投降してもらえるとありがたい。」
「…ユーラ、どうする?」
「まぁ、君に何かあるといけないしね。大人しく従おう。」
「…カール、君たちの目的は?」
「君たちの命と引き換えにロマノ大統領には我々と結んだ約束を最後まで果たしてもらうつもりだ。」
「フェルセン…。」
「ミハイル君、残念だよ。ずっと一緒にやってきた仲間の君や君の父に裏切られるなんてね。」
「…。」
「大丈夫、君の父が我々についてくれたら君はちゃんと国へ返してあげるから。」
「リネアは?」
「そっちの小娘はどうせ死ぬばずだった命だ。ここで両親と死ねばいい。」
「父上!約束が違います!リネアやヴィルは助けると言ったから私は…。」
「お前は甘い。そんな甘い考えでは私のあとは継げないぞ?私はもうすぐ宰相になるのだ。…なぁミハイル君。私の息子と仲良くしてやってくれよ?」
「…。」
「この二人を捕らえろ!」
僕たちをフェルセンの部下が捕らえようとした所にさらにたくさんの人が取り囲んだ。
「そこまでだ!」
馬車から誰か降りてくる。
「なんで…?!」
なんでこの人がここにいるの?
「ヒーローっぽくない?」
「いや…っていうかさ、どうやって来た訳?」
「え?一緒の飛行機に乗ってたよ。」
「でもいなかったよね?!」
「コックピットにいたよ。」
嘘だろ…?!運転してたってこと?!
何故か目の前に、さっき別れたはずのニコちゃんことニコライ大統領が立っていた。




