僕とシャーロット様
仕事をしなくてよくなったセルは学業と新しいビジネスに全力で取り組み始めた。マギーにも先日のことを謝ったらしい。
マギーもちゃんと謝罪をしたセルを許してくれたみたいだ。
僕とイーチェンとセルは一緒にいる事が増えた。
他の人が怪訝な目で僕たちを見ることがあったけど僕は全く気にしなかった。
「セルはいいのか?俺といると変な目で見られるかもしれないぞ?」
イーチェンの方が気にしてる。
「私は構わないよ。実際裏でヤバイことをしていたのは私の方だからね。」
「やめれたんだって?よかったな…!」
「うん。」
僕たちは集まるとたいていビジネスの話をしていた。時々セルがみんなの宿題を教えてくれたりユーラが加わると美術館や博物館に出かけた。僕はまたいつの間にか男好きのレッテルをはられるようになった。
「リネア…気をつけて。」
「マリー、どうしたの?」
「ロマノ君や、ロマノ君のお兄様ってとても人気があるでしょ?最近はお兄様にはファンクラブもできたらしくて、その二人といつも一緒にいるリネアが悪く言われているみたい。しかも…こんな事言っちゃいけないけどあのシアナ人の人って…。」
「マリー、忠告ありがとう。ただ私はあの三人と離れるつもりもないんだ。もしマギーが私といる事で変な目で見られるなら私と離れていても構わないからね。」
「リネア…。」
「リネア、僕たちは心配しているんだよ。」
「ルーク、ありがとう。でも大丈夫だから。」
「リネアは私たちといるより綺麗な男性といるのが好きなのよね?」
「マギー…」
もしかして彼女が噂の元凶…?
「マギー、そんな事言うのはおかしいわよ。」
「だって誰とも打ち解けようとしないじゃない。寮にも入らない、クラブにも入らない、いつも同じ人といて、だからそうやって言われるのよ!おまけにあんな危険で野蛮なシアナ人と…」
「マギー。それ以上言ったら許さない。」
「…何よ?かばうの?もしかしてあんたも仲間?だからいつも一緒にいる訳?セルゲイもそうなの…?」
「私の事はなんとでも言えばいい。だけど他の人の事を何も知らない君が言うなんて私は許さない。」
「何なの…?!私が誰か分かって言っている訳…?」
「知らない」
「私はこの国の伯爵の娘なのよ!あんたみたいなそこらの人が気安く話しかけていい相手じゃないんだから!」
「…。そのあたりにしておくんだな。」
「皇女様…。」
シャーロット様がドアの前にいる。隣にはユーラもいた。
「大きな声がしたから来てみたんだ。令嬢が身分を振りかざしてそのような発言をするのは見過ごせないな。おまけに…彼女はスモーランドの公爵令嬢だ。失礼な振る舞いは許されないよ。」
「なっ…。」
「君が否定したロマノはリスラ共和国の大統領の息子だし、シアナ共和国のリーは世界屈指の財閥の息子だ。軽々しく変な噂を立てるんじゃない。我が国の品性が問われる。」
「…。申し訳ありません。」
「リネア」
「はい。」
「こちらへ…。」
僕は以前お茶会をしてもらった部屋へ呼ばれた。
「ミハイルは外してくれるか?二人で話がしたいんだ。」
「はい。」
シャーロット様は紅茶をいれてくれた。横にはビスケットが添えられている。ティーカップはエンゲル王国の有名なブランドのものだった。
「…どう言ったご用件ですか?」
「特にないよ?」
「え?」
「ほら、私が気にかけていると分かれば変な噂も減るだろう?私はああいう下らない噂が大嫌いなんだ。」
「…お気遣いありがとうございます。」
優しい人なんだな…。
「それに君のことはうんざりするほどミハイルから聞いている。君とは一度二人で話をしてみたかったんだ…。」
「そうですか…。」
僕はお茶を飲んだ。アールグレイのお茶だ。
「君は、ミハイルの事をどう思っている?」
「へっ?!」
いきなりなんだこの質問は…?
「どうって…」
「ミハイルは君のことが好きでたまらないみたいだが君はどうなんだ?」
ユーラ?!一体皇女様と何の話を…。
「毎回君の話を聞かされる身にもなってみろ。鬱陶しいことこの上ない。」
「…私には国に婚約者がいます。」
「ほぉ?」
「だから無理なんです、誰とも恋愛できないんです。」
「そうか…。しかしその言い方だと君はその婚約に乗り気ではないようだな。」
「…そうですね。私には他に好きな人がいましたから…。」
何で僕はシャーロット様にこんな話をしているんだろう?
「私も同じなんだ。」
「シャーロット様…?」
「君と同じだよ。嫌だな、下手に爵位やら肩書きを持って産まれると…。」
シャーロット様の婚約者は確か遠縁の王族だと聞いたことがあった気がする。
「どんな人なんですか?シャーロット様の心にある方は…。」
「なっ!!なんだそれは…!」
シャーロット様が顔を赤くする。可愛らしい。
「教えてください。名前じゃなくてどんな人なのか…。」
「…誰にも言わないと約束できるか?」
「もちろんです。」
「…昔、留学した時に出会ったんだ。一方的に私が憧れるだけだったんだがな。ダークブラウンの髪と瞳でとても紳士的な優しい男性だったんだ…。」
「…そうですか。」
「一度だけカフェに出かけたんだが本当にすべてにおいてスマートにエスコートしてくれて、とても驚いたんだ。私を今までそんなふうに扱ってくれる人がいなかったから…。」
彼女は普通に恋愛がしたくてもこの国では難しいんだろうな。
「君とミハイルの事も正直羨ましいと思っていたんだよ。私には君たちのように何でも話ができる友人もいないし…。」
「じゃあ、私となりませんか?友達に。」
「リネア…?」
「私も女性の友人が少なくて…」
「いいのか?」
「もちろんです。」
シャーロット様は嬉しそうな顔をした。
「ただ、私はあまり女性の喜びそうな店や遊びに行く店を知りませんよ。」
「いいんだ。そんな事を私も求めていないし。」
「でも美味しい食べ物の店は詳しいですし、作るのも得意です。よかったら今度一緒に作りますか?最近スコーン作りにはまっていて…。」
「私もやってみたいな!」
「じゃあ調理室を借りたら一緒につくりましょう!」
「楽しみにしているぞ!」




