シャーロット様のお茶会
三段の可愛らしいケーキスタンドに焼き菓子やサンドイッチが綺麗に並べられている。
ティーポットから紅茶の良い香りがしてきた。
「…いただきます。」
「どうぞ。」
僕は一番上のスコーンをとって、クロテッドクリームとブルーベリージャムをのせた。
さくさくしたスコーンに濃厚なクリームと甘酸っぱいジャムがよく合う。
「おいしいです…。」
幸せだ…。
「それはよかった。」
シャーロット様が少し微笑んだ。
「ミハイル、そなたはどうだ?」
「この紅茶が美味しいですね。何が入っているんですか?」
「ローズとストロベリーをブレンドしている。私のお気に入りだ。」
お皿に乗っているものすべてが美味しかった。
なんだかとっても優雅な気分になれる。
「よく食べるな、欲しかったら私の分もやろう。」
「いいんですか?」
「リネア…」
ユーラが首を振る。断れということらしい。
「ミハイル、私はお腹が減っていないんだ。リネア、遠慮はいらない。」
「ありがとうございます!」
僕はシャーロット様の分も頂くことにした。
ユーラとシャーロット様、
なんだかこの二人、物語の中の登場人物みたいな雰囲気をしてる。王女に恋する執事とか…昔リネアが読んでいた物語にありそうだ。
「ところでリネア」
「はい」
「ミハイルから聞いたが先日の少年と外食に出掛けたそうだな。どこへ行ったんだ?」
「シアナの料理を食べに行きました。」
「ほう」
「私、生まれて初めてあんなに美味しいものを食べたんじゃないかって思いました。」
「何を食べたんだ?」
「アヒルやフカヒレも美味しかったのですが一番気に入ったのはバォズというものです。ふわふわのパンのようなものにミンチや野菜が沢山入っていて、食べるとじゅわーっとスープがでてくるんです!あ、よろしければシャーロット様も今度一緒に行きませんか?」
僕はシアナの料理を思い出したらまた食べたくなってきた。
「リネア…。」
ユーラがまた首を振る。なんかまずかった?
「行ってみるか。」
「えっ…」
「案内せよ、リネア。」
「はい!」
「ミハイル、そなたはどうする?」
「はー…。同行させて頂きます。」
ユーラがため息をついた。
またあのレストランに行ける!!今から楽しみになってきた!
日程が決まったらイーチェンに予約をとってもらおう。
アパートに戻るとユーラに一階の客間に来るよう言われた。
僕は制服から着替えて客間に行った。
「どうしたの?」
「君は…、彼女が誰だか理解してる?」
「彼女?」
「シャーロット様だよ。」
「ああ、シャーロット様、エンゲル王国の次期女王でしょ?」
「ここ、座って。」
ユーラは何故か自分の膝をたたいた。
僕がそれを無視して隣に座ろうとすると僕を無理やり彼の膝の上に座らせた。
「ユーラ、私は小さいこどもじゃないんだから…。」
「じゃあちゃんと私の話を聞いて。」
「はい…。」
「君はヴィルフリートやフリッツに慣れているからシャーロット様も同じだと思ってる。」
「うん」
「だけど、この国の人にとって、'女王'は特別で絶対的な存在なんだ。」
「どういう意味?」
「彼女を怒らせたり、彼女に嫌われた人はこの国にいられない。彼女が白を黒だと言えば黒になる。彼女は私たちがこの国でビジネスをしていく上で、絶対に嫌われないよう上手く付き合っていかなければならない相手なんだよ。」
「そうかぁ…。道理でユーラが珍しく気を使っていた訳だ。私はてっきり…。」
「てっきり、何…?」
ユーラが僕を見上げる。顔が近い。
しかもいつの間にか僕の腰に手が回されていた。
「シャーロット様に興味を持ったのかと…。」
ユーラが物凄く嫌そうな顔をする。
「君は…。私の事をまだ全然分かっていない。」
「…そう?」
ユーラが僕を見つめる。僕と似たエメラルドグリーンの瞳の色。大きくて形も綺麗だ。髪も切って初めて会った時の中性的な雰囲気から男性らしくなってきたけど、表情が柔らかくなったせいか美しさが増してきた気がする…。
僕はユーラの頬に触れた。
「綺麗…。」
「ん?」
「ユーラって本当に綺麗だよね。」
「そう?」
「うん、なんか神様がつくったみたい。生身の人間じゃないみたい。」
ユーラが僕の手をに触れる。
「リネア…。ちゃんと私を見て。」
「見てるよ、まじまじと観察中。」
「…そうじゃなくて、表面の私じゃなくて、その奥の私を見て欲しい。私は人形じゃないし、ちゃんと心がある。」
「そうだね、ごめん…変な言い方しちゃって。そういうつもりじゃなかったんだ。ただ…、綺麗だと思ったから…。」
鼓動が早くなる、なんだか変な雰囲気になってきた。
早く話題を変えよう。そしてこの膝からおろしてもらおう。
僕は横に移動しようと動くとそのままユーラに抱きしめられた。
「ユ…ユーラ。」
「だめ。まだ話は終わってない。」
「そうなの?」
「そう。話が終わるまで動いちゃ駄目。」
「は、はい…。」
「とにかく、シャーロット様と会う時は細心の注意を払うように。彼女に変な疑いや警戒心を抱かせたらいけないよ。ただでさえ、私は出身が出身だからね。一緒にいる君も同様の扱いをされるだろうから…。」
「ユーラはユーラだよ。セルも…。私はそんな目で見てないよ。」
「分かってる。だけどまわりは違う。だから、君も気を付けて、分かった?」
「…。必ず、ビジネスを成功させようね。」
「うん。」
ユーラたちが自分の出身を後ろめたく思わなくてよい日がくるように…。
僕はユーラの頭をよしよしした。
ユーラは何も言わずそのまま目をつぶっていた。
目尻に涙が少し見えたのは気のせいだろうか…?
ユーラの心の奥、入ってしまったら僕はどうなるんだろう?
抜けだせなる気がして、踏み込む勇気がでない。
踏み込んだらいけない、なんとなくそんな気がする。




