エンゲル王国へ
広くなだらかな丘に雪がつもる。
羊の群れが丘を駆け巡る…。
僕たちは飛行機を首都郊外の平原に降ろして首都まで馬車でむかった。
「かわいい。」
「エンゲル王国でよく見られる景色だよ。」
「ユーラ、いったい今まで何ヵ国くらいの国に行ったわけ?」
「どうかな…少なくとも20は越えるかな。」
「ユーラ、実は30歳くらいなんじゃないの?年齢詐称してない?」
「リネア…。私がそんな歳に見える?」
ユーラが僕の頬を引っ張った。いてて…。
「首都に入るよ。」
有名な跳ね上げ橋、時計台、赤い2階建てのバス…。絵本や写真集でみた景色が目の前にある。これが、エンゲル王国の首都…。
「私たちはスクールの寮に入るの?」
「本来はね。」
「本来は?」
「ただ、放課後が仕事になるからスクール近くのアパートを一棟借りた。そこをオフィス件宿として使うことにする。」
「一棟…」
どこからそんなお金が…。
「仕事のせいにして学業をおろそかにしないようにね。エンゲル語はある程度話せるよね?」
「うん。一番最初に学ぶ外国語だし、スモーランド語にも似てるところもあるから。」
「よし。」
ユーラは中心街とスクールの真ん中あたりに位置するアパートを僕に案内した。一階から4階まであるメゾネットだ。
「かわいい建物だね。」
「建物は古いけど中はリノベーションしておいたからそれなりに綺麗なはずだよ。」
いつの間に…。
「1階がオフィス、地下は倉庫、2階が私の部屋、3階がリネア、4階がセルゲイだ。」
「兄上、このアパートエレベーターがないんですけど?!私が4階?」
「若いんだから問題ないでしょ?」
「忘れ物したら悲惨だ。兄上は2階だなんてずるい。」
「忘れ物をしなければいい。私は30歳らしいから、そんな上には住めない。」
「部屋を見てきていい?」
「もちろん。何か必要なものがあったら買い足そう。」
3階の僕の部屋からエンゲル王国の街の景色が見える。
僕は新しい生活に早くもワクワクしてきた。
建物はクロスが張り替えられ、キッチンも新しい物に取り替えられていた。
家具もシンプルで僕好みのものを入れてくれたことが分かる。
4階のセルゲイの部屋へ行くとやはりベッドが一つと、水回りがあるだけの何もない部屋だった。
「あれ、鏡?」
壁に大きな鏡が貼ってあった。
「…兄上…。何を考えているんだ?」
セルゲイは顔を少し赤くして嬉しそうにそう行った。
2階のユーラの部屋はやっぱり寮の時と同じようにアート作品がいっぱいあった。美術の本も山積みだ。
「この本、面白そう…。」
「いつでも借りていっていいよ。ただし、物を食べながら読まないでね。この前貸した本にポテトチップスが挟まっていたよ。正直殺意が沸いた。」
「…気を付けます。」
ユーラは笑って僕の頭を撫でた。
「ランチに行こうか?」
「うん。」
昼はフィッシュアンドチップスを食べた。ポテトも魚のフライもサクサクして美味しい。
「んー!このソースをつけるとさらに美味しいね。」
「食べすぎないように気を付けてね。太るから。」
「こんな美味しいお店が近くにあるとやばいかも…。」
「ねぇユーラ、ビジネスって何を始めるつもり?」
「それをこれから考える。」
「えっ!?ノープランでエンゲル王国まで来ちゃった訳?」
「何か問題?」
「…だって…。ユーラの事だからいろいろ考えてここに来たんだと思ってた。」
「私は結構思いつきで行動するタイプだからね…。フレーデル王国に行ったのも君たちが留学するという話をフェルセン侯爵から聞いてなんとなく行ってみた訳だし…。」
「そうだったの?!」
意外だった…。
ユーラはかなりの自由人だったらしい。
「私からの宿題だよ。一人一つビジネスをここで立ち上げる。資金は私が用意するから、各自計画書を作製し必要経費を請求するように。」
「何それ?!好きな事をしていいの?」
「私が計画を認めたらね。」
「えっ!?兄上!私も聞いていませんよ?!」
「君たちは生物の課題もきちんとこなして賞までもらっていただろう?一人が不安ならペアでやってくれても構わないよ。」
「セル…どうする?」
「…とりあえず、リネアと組みたい。」
「じゃあそうしよう。」
「私はある何をするか程度決めている。君たちが何をするか楽しみにしてるよ。きちんと利益を出すようにね。父親を納得させる為にも。」




