ヴィルの策略
「久しぶりだな、オスカル。」
「おかえりなさい。…綺麗になったわね、少し見ない間に…。」
「父上、母上、お久しぶりです。」
両親が嬉しそうに僕を見つめる。クリスマスツリーの下には沢山のプレゼントが置いてある。色とりどりのラッピングが綺麗だ。
「びっくりしたわ。馬車で殿下と帰ってくると思ったらいきなり飛行機でおともだちと帰ってくるんですもの。」
「お兄さんと弟は僕の友人で、妹はヴィルのクラスメートなんだ。」
「素敵な方でドキドキしちゃったわ」
「母上…」
「オスカル…少し二人で話せるか?」
「はい。」
父上が僕にコーヒーを入れてくれた。
「ありがとう。…おいしい。」
「スクールは楽しいか?」
「うん、すべて一番いい成績をとれたよ。延長を了承してくれてありがとう。」
「それなんだが…」
「父上?」
父上がとても言いにくそうな顔をする。
「延長を取り消すとか言わないよね?」
「そうじゃないんだが…。」
「オスカル、お前、ヴィルフリート殿下の事をどう思ってる?」
「どうって…ヴィルは親友だよ。」
「それだけか?」
「それだけだよ。特別だけど、父上の聞こうとしてる意味は恋愛の事だよね?」
「まぁ…息子とこんな話をするのもちょっと恥ずかしいな…。」
「だね…。」
「ヴィルフリート殿下がリネアを婚約者に望んでいるそうだ。」
「…はい?」
今、なんかおかしな言葉が聞こえたような…。
「ヴィルフリート殿下がお前を婚約者に望んでる。」
「何で?」
「…何でって、私に言われても。実は留学前にも本人からお話を頂いたんだがな、直接やりとりしてほしいと伝えたんだ。私が勝手に決めたら、その…お前のことだ、めちゃくちゃ怒りそうじゃないか。」
「そりゃそうだ。」
「だろ?だけどなぁ…今回は難しいぞ。」
「なんで?さらっと断ればいいじゃないか。だいたいヴィルにも今彼女がいるのに。」
「オスカル、…今回は王命だ。」
「お…王命?」
「そうだ…。さすがに私も断りきれない。」
「あの親バカ…。」
「マグヌスはなー、昔からそういう所があるから…。」
父上がため息をついた。
「父上、実は僕、今フレーデル王国の殿下と付き合ってるんだ。」
「えっ!?…」
「だから、フリードリヒと付き合ってる。」
「こ…この場合、私は娘をとられた気分になるべきなのか?それとも息子がその…そっち方面へ行ってしまった事を心配するべきなのか?」
「…知らないよ。勝手にしてよ、その辺は…。とにかく、僕はヴィルとは婚約しない。」
「無理だろうな…」
「無理だよ」
「オスカル。そうじゃない。」
「父上…?」
「お前の要求は今回は通らない…。相手が悪い。お前はスモーランドの一国民だ、私もな。我々が王命に逆らえるはずがない。マグヌスはもう決定事項だと言った。
私は臣下としてそれを覆す事はできない。」
「そんな…」
「ご友人が帰国した段階で正式に国王から話があるはずだ。」
「あの野郎…勝手に何してんだ。」
「それからあのご友人についても…いろいろ話し合いが必要そうだな。何でお前は次から次へと話を大きくしてしまうんだ…。」
父上との話が終わってベッドに入ったけど僕は怒りで寝られそうもなかった。
どうして勝手にそんな話を進めた?!
だいたいあいつは僕をオスカルとして見ていて、なんで…。
ヴィルがスモーランドの一時帰国から戻った日の事を思い出す。フリッツと付き合ったと知ったあいつは僕の上に乗ってキスをしてきた。
「僕に支配されればいいい」そう言って。
「はは…あいつがここまで卑怯な奴だったとはな。」
僕の親友のヴィルが、こんな事をするなんて想像もしなかった。僕の外交官になる夢も留学も、フリッツとの関係もすべて終わりということか。
国の為に生きたいとは言った。だけど、こんな形で僕の了解もなしに…。
許せない。僕は絶対にヴィルには従わない。




