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僕が妹に転生したら皇太子の婚約者にされました  作者: とらまる
フレーデル王国編
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フリッツの不安

大半の生徒が登校を終えた頃リネアが部屋に戻ってきた。今まで一度も着ているのを見たことがないロマーナ王国のブランドの服を着ていた。


「…遅刻するよ。」

リネアは俺の顔を見てそう言った。

「…お帰り。」

「ただいま。」

「一日だ。一日こうして待っていた。」

「うん。」


「お前は今俺がどんな気持ちか分かるか?」

「…」

リネアは俺に目を合わせない。

「怒ってる、心配してる、呆れてる…かな。」

「…」


俺はリネアの腕をつかんでベッドに押し倒した。

「お前は、どうしてそうやって無茶ばかりするんだ!」

自分の目に涙が浮かぶのが分かった。


「ごめん。」

「そのセリフはもう聞きあきた。これからもお前は変わらない。お前は自分のやりたいことが優先で人の心配は後回しだからな。」

「…そうだね。」


「…これからもこういう事が何度も続くと思うと気が重い」

「じゃあ、離れる?」

何だって…、今、なんて言った?


「リネア…」

「私はこれからもフリッツを心配させる。衝動的に行動するし、反省もいかされない。それが嫌なら離れるしかない。」

何で開き直ってんだ?


「…本気で言っているのか?」

「本気だよ。今は理由は言えないけど、私は今後もっと危険な方へ進むことになるかもしれない。」

「危険?」

「セルゲイとユーラに今より近づくつもり。」


「…何があった?」

「言える時がきたら言うよ。とにかく今は誰にも言えないんだ。だからこれ以上聞かないで。」

リネアが、昨日部屋をでるまでのリネアと違う。一体何があったんだ?


「俺は離れない。やっと一緒にいられるようになったんだ。」

俺はリネアを抱き締めて何度もキスをした。

「…うんざりしたら、離れていいから。」

「離れない。」


いつかこいつは自分で俺から離れていくような予感がして不安でたまらなかった。

ヴィルの気持ちが今ならよく理解できる。

綱をつけて縛っておけたらどんなに安心か。

お前は昨日どこで何をしていた?セルゲイと何があった?

俺がいないと駄目になるまでめちゃくちゃにしてやりたい。俺は自分の中にこんな嫉妬や独占欲があるなんて知らなかった。



俺はリネアを抱き締めたまま昼過ぎ迄寝てしまった。

スクールや仕事をこんなふうにさぼったのは初めてだった。

リネアも疲れていたのか大人しく俺の腕の中にいた。




昼食がてら俺たちは外に出かけた。公園で買ったサンドイッチを食べる。

リネアはほとんど自分から話をしない。食欲もあまりないみたいだ。何か時折思い出しては思い詰めたような顔をしている。

こんなリネアを見たのは初めてだった。


「…メアリーとは会えた?」

「会えた、お前のお陰で。」

「よかった。君の大切ないとこだもんね。本当は私も帰りたかったんだけど帰れない事情があった。」


「…俺は正直お前の事の方が心配だった。俺の為なら頼むから無茶しないでくれ。」

「分かった。」

リネアは、ずっとうつむいたまま、俺にしがみついた。

身体が震えてる。

「好きだよ、フリッツ。」

「リネア…?」

リネアが泣いてる。

聞くなと言われたし、俺は一体どうしたらいいんだ?

本当に何があったんだ。こいつがこんなふうになるなんて普通の事じゃない。






夕方俺はセルゲイの部屋を訪ねた。

セルゲイがドアを開ける。

「…少し話せるか?」

「…私とあなたが?」

「…リネアの事だ。」


今まではっきり見たことがなかったが、髪の毛を切ったセルゲイは本当に綺麗な顔をしていた。陶器のように白い肌、赤い瞳、一つ一つのパーツが整っている。こうして見るとミハイルに似ていないこともない。

「私があなたに話すことはありません。」

「そなた、リネアに何をした?」

「…何もしていません。」

「朝まで何をしていた?」

「年頃の男女が一晩一緒にいて何をしたか聞くなんて不粋じゃないですか?…あ、それから今リネアと共同研究しているんです。スクールを個人的な理由で休ませたりしないでください。失礼。」

セルゲイはそう言って部屋のドアを閉めた。この野郎…!!




腹が立った俺はそのままヴィルの部屋を訪ねた。

ヴィルは俺の話を聞いてため息をついた。

「あなたは何をしてるんですか?」

「だから、俺だってどうしたらいいか分からないんだ!あんなリネアは見たことがないし、何かしてやりたいのにあいつは何か隠してる。聞くなと言ったんだ。」

「じゃあ待つしかないんじゃないですか?」

ヴィルは冷静だった。


「そなた…リネアが心配じゃないのか?」

「フリッツ、あなたは分かってない。」

「何を?」

「リネアは普通の少女じゃない。生まれながらに国王の重臣の息子として育てられ、将来を期待された存在だったんだ。たまたま運命のいたずらで少女になってしまっただけで、自分が何もしないで守られるだけの状況に甘んずる訳がない。」

「…。」


「あなたは自分の彼女としてリネアが心配で、あなたならしくない行動をとっている。何故セルゲイを訪ねたんです?彼があなたに何か情報をくれると思いますか?馬鹿にされるか、リネアが彼に責められるか、どちらにしてもデメリットしかない。」

「…。」

全く否定できない。自分が恥ずかしくなってきた。

「普段のあなたならそんな事はしない。少し落ち着いて考えれば分かるはずです。何故リネアがセルゲイとミハイルに近づこうとしているのか。」

「何だと…?」



「見たんじゃないですか?僕たちが探しているものを。」

「…違法取引を?」

「人身売買も。」

まさか…。



「僕は普段からオスカルが危険な目に合わないよう彼をコントロールしてきた。あなたは彼を野放しにしておいて危険がきたら騒ぐなんておかしくないですか?自由にさせるなら危険はつきものでしょう?あなたがやらなければならないことは何ですか?オスカルが動くと分かっていたらどうすればいいか考えてください。」



ヴィルに言われた事が正論すぎる。

「…はまりすぎたな。」

「みたいですね。ちょっと面白いですよ。」

「頭を冷やしてくる…。」



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