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第4話 私に足りないもの。

思考ターン

 ゲームの設定として称号には単に通り名として意味をもつのではなく、効果…端的に言えばスキルが付与されている。魔法剣士それぞれ与えられた魔法剣士の称号名によってばらばらだ。

 確かゲームのファンブックではマドゥルゥ侯爵の魔法剣士『ジィーク』は撥ね返しという意味でカウンタースキルだったはずだ。なんでも幼いころに長く続いた戦争のせいで大切な親友を亡くしたらしい。その時この国を脅かすものから守りたい、大切な人を守りたいという一心で魔法剣士の称号を与えられるまでになったらしい。

 それは国王陛下の望むべき国の平和、繁栄とほぼ同じ目的だ。

 …ん?待て。だとすれば国王陛下は心が読める…のか?

 自分と同じ目的の人物を魔法剣士を目指すものから選ぶのはなかなか骨の折れることだ。単に強くなりたい、安定が欲しい、自分を認めさせたいなど理由は人それぞれ違う。その中から自分と同じ未来を見ている人を選んでいるのか。

 確定じゃない。でもなぜかそう思える。

 でなければこんな国王陛下からの一方的な関係ではなく、両方の関係を重視する理由が見つからない。同じ未来を見ているからこそ互いに国のために頑張り、関係を深めている。

 私は根本的に間違えていたんだ。武功をあげたからと言って、武闘大会で優勝したからと言って魔法剣士になれるわけではなかったんだ。

 国王陛下と同じ国の繁栄や平和を願うような思い、そしてそのために身を投じるという覚悟がなければいけなかったんだ。


 私、なんて利己的な判断だったんだろう。


 ただわが身を守りたい、ただ崖エンドから生きのびるため、ただ死んだと見せかけて平和に生きていけるように…魔法剣士に。

 でも違った。

 なんて甘えた考えだったんだろう。

 崖エンドが過ぎたらゲーム終了じゃない。崖エンド後の生活を薄っすらと考えるだけじゃ足りない。


 これは現実だ。ゲームじゃない。選択肢を間違えたからと言ってリセットなんて効かないし、ゲームオーバーもアフターエピローグ終了からのニューゲームもない。死ぬまで続くものだ。次は?その次は?その次の次は?いつでも次のことを考えなければいけなかったんだ。

 簡単に考えすぎていたんだ、何もかも。

 

 そう思うとなぜか両目からポロリポロリ涙が雨粒のように落ちていた。自分の浅はかな考えが申し訳なくなってきたのだ。まだお父様の質問に答えていないのに、目の前にいるお父様はつらい過去を乗り越えるために魔法剣士になり、二度と親友のような人間をつくらないために自分の道を決めたというのに…。

 私は道ではなく、1つの分岐点しか見えていなかった。

 お父様は私の頭をなでながら、口を開いた。

「お前は行動が先行してしまうから、真実が見えていなかったんだろう?でも一旦立ち止まってよく考えてみれば私の言いたいことが分かってしまったんだろう?そして自分のことを振りかって見たのだろう?」

 コクコクと私はうなずいた。


 猪突猛進に前世を生きてきた私にとって、思考よりも足や行動が先に出てしまう。時間がもったいない、早く済ませたい、目を背けたいが為に。



「騎士が毎日することは精神統一…。関係性を重要とするのは叶えたいこと、なすべきことの再確認…。それが答えだよ。リーヴィ、足りないものは何なのか確認できたかい?」


 私に足りないもの…か。そうだね、ちゃんと向き合わなきゃいけない。自分が置かれた状況と自分の叶えたいことと――――――自分自身と。 

ブックマークが増えていて驚きました。

ありがとうございます。

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