吉備団子
やって来た少女には見覚えがあった。
黒い髪も、気の強そうな瞳も、凛々しい眉も何も変わっていない。
「よかった。戻って来たんですね。」
名前を思い出す。
「桃⋯。」
桃は、前の2人と同じように犬養に飛びついた。
「ぐっは!!!」
「犬養さん!御免なさい!私のせいで⋯。私、危うく犬養さんを殺すところでした。犬養さんが止めてくれなかったら、鬼頭を⋯殺してました。」
桃はただ涙を流して謝った。
「正義の味方⋯失格ですよね。」
「おいおい。桃は誰も殺ってないだろ?誰がどうみても、お前は正義の味方だ。」
犬養は慰めた。
「できれば、そこを退いてくれるとありがたい。」
「あ!!す、すいません。」
桃は、恥じらいながら犬養から離れた。
「まったくぅ。犬養さんが体張って桃ちゃん止めた時はびっくりしましたよぉ〜。」
「ほんとっすよ。寿命縮んだっす。」
「でも、これでキビキビ団全員集合ですね!待ちに待った、アレの時間ですね!」
犬養を除く3人が顔を見つめ合わせて笑った。
「?なんのことだ?」
犬養だけはわからなかった。
「きびだんごですよ!」
桃が懐から取り出したのは、あの伝説の吉備団子だった。
読者諸君はお忘れかもしれないが、あの伝説の吉備団子である。
食べたものに、世界一大切なものを与えると言われる、
キビキビ団の真のもくてきである、
桃がキビキビ団をお供にするための餌に使った、
あの吉備団子だ。
「⋯⋯⋯忘れてたな。」
犬養が呟く。
「まじっすか!!!」
猿飛と雉羽田が驚く。
「せっかくなんで、みんなで一緒に食べましょう。」
『せーの、あーん!』
ゴクリ
きな粉の甘さが口に広がった。




