最終回 プロジェクト・アプデ完了(現世への帰還)
もう少しだけ続きます。
寛永から数十年、新時代の終わり――。
世界を完全に買収し、日本を地球最強のハイテク・グローバル国家へとアップデートし尽くした3人の転生者たち。
彼らはその後、天寿を全うし、ほぼ同時期に激動の生涯を終えた。
――そして、彼らが次に目を覚ましたのは、見渡す限り真っ白な雲が広がる、不思議な空間だった。
「……あれ。ここは? グラフィックがずいぶん手抜きだな」最初に起き上がったのは、最高戦略責任者(CSO)毛利輝元として生きた男。
彼の魂の正体は、数々のデスゲーム系ラノベを制覇し、戦略シミュレーションゲームの頂点に君臨した天才ネトゲ廃人、神代 蓮だった。
その姿は、老いた輝元ではなく、現代日本の10代の少年の姿に戻っていた。
「あ、蓮くん。お疲れ様」
隣で高級なビジネススーツを整えながら立ち上がったのは、小早川秀秋として生きた男。
彼の正体は、ブラック企業の理不尽な経営陣を労働基準監督署に通報して全員論破した元エリートサラリーマン、新堂 拓也。
彼もまた、現代の20代のスーツ姿に戻っている。
「どうやら俺たち、人生という名のクソゲーを完全にクリアして、天国のリザルト画面にログインしちゃったみたいですね」
「マジかー。まあ、あの荒れ果てた戦国時代を世界一の優良企業にまで育て上げたんだ。最高のエンディングだったよ」
二人がやりきった表情で笑い合っていると、背後の雲が凄まじい勢いで爆発した。
「チェストォォォォォーーーーッッ!!!!」
島津の元CEOこと島津義弘として生きた男。
その正体は、倒産寸前のベンチャー企業を死に物狂いのハードワークで業界トップに押し上げた熱血体育会系の元CEO、岩谷 剛三。
彼もまた、現代のネクタイを締めたゴリゴリのナイスミドル姿で突撃してきた。
「おお! 蓮どん! 拓也どん! ここが次の新規開拓市場でごわすか! 素晴らしいスペースじゃ、初手からフルパワーでここのシェアを奪取しにいくが!」
「岩谷社長、落ち着いてください(笑)。ここはもう戦う場所じゃないです。いわゆるリタイアですよ」
3人がかつての現代人の姿で笑い合っていると、雲の向こうから、まばゆい後光とともに、巨大なシルエットが現れた。
『――転生者諸君、ジャパン・コーポレーションの完璧なクリア(統治)、実に見事であった』
どこからともなく響く、天の神様のシステム音声。
『君たちは戦国時代において、歴史のバグを修正し、誰も無駄に死なない最高のホワイト国家を創り上げた。その偉大な功績(ボーナス報酬)として、君たちに選択肢を与えよう。……このまま天国で永住するか、それとも、君たちが元いた【現代の日本】の肉体へ戻り、第二の人生をリスタートするか?』
神様の提示した破格の報酬(選択肢)に、3人は一瞬目を見開いた。
「元の世界(現在)に戻れる……?」
神代蓮は、かつて自分が部屋に引きこもってゲームばかりしていた、退屈だが平和だった現代の日常を思い出した。
新堂拓也は、理不尽な上司と戦いながらも、忙しく充実していたビジネス街の景色を思い出す。
そして岩谷剛三は、自分が命をかけて育て上げた、あの愛おしい会社と社員たちの顔を思い出した。
3人は顔を見合わせ、言葉を交わすまでもなく、同時にニヤリと不敵に笑った。
「決まってるじゃん。あっちの世界(現代)にも、まだまだアップデートが必要な理不尽が山ほど残ってるからね」
蓮が言った。
「そうですね。戦国時代の200万石のマネジメントを経験した今の俺たちなら、現代のビジネス界なんてイージーモード(完全攻略)ですよ。新しい会社を立ち上げて、市場をハッキングしてやりましょう」
拓也が眼鏡の奥の目を光らせる。
「ガハハハハ! よか返事じゃ! 現代のぬるい経営者どもに、本物の『チェスト精神(初手フルパワー)』を叩き込んでやるがぁぁぁ!!」
剛三が豪快に拳を握りしめる。
『よろしい。契約(エンディング選択)は成立だ。……君たちの現代での新たな挑戦に、幸あれ』
神様の声とともに、3人の足元の雲がまばゆい光に包まれ、そのまま心地よい浮遊感とともに吸い込まれていく。
西暦2026年――日本の某所。
「……ん」
一人の少年、神代蓮が自室のベッドで目を覚ました。
時計を見ると、自分が戦国時代へ転生した、まさに「あの日」のあの時間だった。
だが、その脳内には、西軍の総大将として天下を完全包囲した圧倒的なゲーム理論の記憶が、鮮明に残っている。
「よし、まずはあの2人に連絡を取るか」
蓮がスマホを開いた、その瞬間。
すでにグループ通話の画面には、2人の懐かしい名前が表示されていた。
『蓮くん! 無事に戻れましたね!』
新堂拓也の、スマートで切れ味の鋭い声がスピーカーから響く。
『ガハハハ! 拓也どん、蓮どん! 準備運動は終わりじゃ! さっそく明日、3人で新しい合同会社の設立登記に行くが!』
岩谷剛三の、腹の底から響くような「チェスト」の熱い声が重なる。
「オッケー。じゃあ、明日から現代日本を買い取り(M&A)に行こうか」
蓮は不敵に微笑み、スマホの画面をタップした。
現代の知識、理詰めのコンプライアンス、そして狂気のチェスト精神。
戦国時代という名の最凶のクソゲーをガチ勢として完全攻略し、何段階もレベルアップして戻ってきた最強の3人トリオ。
彼らが創り出す現代日本の新しいビジネスの歴史(新時代)は、今、ここから爆走を始めるのだった。
ありがとうございました!




