表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/6

プロローグ

慶長五年(1600年)九月十五日、美濃国関ヶ原。天下を二分した未曾有の大決戦は、開戦と同時に誰もが予想だにしない「異常事態」に包まれていた。


歴史が知る関ヶ原ではない。なぜなら、東軍を率いる徳川家康を挟み撃ちにするはずの西軍主要トリプルエースの肉体に、それぞれ「現代の記憶を持つ転生者」の魂が宿ってしまっていたからである。



1. 松尾山:小早川秀秋(20歳)の場合


問鉄砲といでっぽう……? ああ、家康がこっちを脅すために撃ってきたアレね。うっさいわボケ、耳元でクラクション鳴らされた気分だよ」


松尾山の山頂で、小早川秀秋は吐き捨てた。歴史上の彼は、家康の脅しに怯えて東軍への裏切り(西軍への攻撃)を決意したとされる。


しかし、今の秀秋の魂は、かつてブラック企業の理不尽な上司を全員論破して退職した元エリートサラリーマンだった。


「優柔不断? 迷う? ナメんなよ。最初から西軍の勝利条件は確定してんだよ」


秀秋は眼下に広がる大谷吉継の陣を見つめ、不敵に笑う。


迷う様子など、最初から一微塵もなかった。


「全軍、松尾山を駆け下りるぞ! 狙うは東軍の横腹――藤堂高虎と京極高知の陣だ! 叩き潰せ!」


歴史のバグが、まず松尾山から牙を剥いた。



2. 烏頭坂:島津義弘(66歳)の場合



「三成ん使いが、馬から下りんで助勢を請うただと? だから何ち言仏いっぶつか!」


島津の本陣で、鬼石曼子おにしまづこと島津義弘は豪快に笑い飛ばした。


本来の義弘は、三成の無礼な使者にヘソを曲げ、自陣に引きこもって「動かない」選択をした。


だが、今の義弘の中身は、死に物狂いで会社を急成長させた熱血体育会系の元CEOである。


「ビジネスも戦も、面体(めんたい:メンツ)で動く奴は三流ごわす。そげんこっで天下を逃してしてたまる しんくか! 島津のホンマの『チェスト』を見せてやるが!」


義弘は愛刀を引き抜き、ギラついた目で前方の東軍を見据えた。


「おい薩摩ん隼人ども! ぬっくなった準備運動は終いじゃ! 最初からクライマックスでくい(行くぞ)! 敵の先陣、福島正則ん首を、いの一番にぶっ叩き割る! 全軍、チェストーーーッ!!」薩摩の狂犬たちが、開戦の太鼓と同時に最高速度で解き放たれた。




3. 大坂城:毛利輝元(48歳)の場合


「総大将が大阪城でぬくぬく留守番? そんなコスパの悪いこと、この俺が許すわけないだろ」


西軍の総大将でありながら、大坂城から一歩も動かなかったはずの毛利輝元。


しかし、今の彼の頭脳は、数々のデスゲーム系ラノベを読み漁り、効率と勝利のみを追求する冷徹なゲーマーのそれだった。


「本陣の毛利秀元が『弁当を食べている(宰相の空弁当)』とか言って足止めされてる? 実権は俺が握る」


輝元は、大坂城ではなく、すでに美濃の手前まで大軍を直率して進軍していた。


吉川広家が東軍に通じようとした密書は、数日前にすべて押収し、広家本人はすでに大阪城の地下に転がしてある。


「毛利の全力、三十万石ではなく百二十万石の真価を見せてあげるよ、家康公。……全軍、進軍。徳川の退路を完全に遮断せよ」


西軍の総大将が、ガチの殺意を持って戦場を包囲しつつあった。



霧が晴れた関ヶ原。


そこにあったのは、家康が夢にも思わなかった「最強の西軍」だった。


「……何かが、おかしい」


冷や汗を流す徳川家康の視線の先で、歴史の歯車が完全に崩壊していく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ