アプローチュバ
「甲聖、今日新弾の発売日だし、オリエンテーション終わったら爆速でカドショ行くぞ。」
隆二からこの誘いを受けるのは一体何回目だろうか。俺はあの時、先輩に振られた。というか殺された。ただ、俺の頭に最も深く刻まれたのは、初めてみる拳銃でも、初恋の人に殺された衝撃でもなく「別に、君からの好意が嫌なわけじゃないからね!?」という、先輩から言われたひと言だった。そこに脈ありの可能性を感じた俺は、世界線を越えて先輩に好意を示しまくった。
「甲聖君、前の世界でも言ったはずなんだけど、私を好きにならないんでほしいんだよね。」
「甲聖君…君、もしかしてループのたびに記憶なくしてる?」
「甲聖君、君が私に恋し続ける限り君と私の意識は今日に囚われたままなんだよ!?いいの?」
ループを繰り返すほどに先輩の声のトーンと突きつけられる拳銃がどんどん重みを増している気がするが、女心と秋の空は変わりやすいと聞くしきっとたまたまだろう。今日はどんなアプローチをしてみようか。
『はい。では今日のオリエンテーションを終わります。皆さん気を付けて帰ってきてください。』
―待ってました!早く先輩のところに行かなくては。
先輩がいるのはどの世界線でも同じ場所である。隆二を置いてきてしまったことを思い出したが、気にせずに先輩の元へと人ごみをかき分けて進む。
「先輩、こんにち…は…」
人ごみを抜けていつもの場所にたどり着いたが、そこに先輩の姿はなかった。




