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碧眼児 孫権  作者: ひろ
6/9

賊 1

閲覧ありがとうございます!

今回の更新に伴い、孫権と朱然の話を少し改稿しました。


「それにしても陳武殿、その大人びた感じといい体躯と言い、羨ましい限りです。どうやったらそんな風な貫禄が出せるんですか?」


 施然が陳武の体躯をまじまじと観察しながら話しかける。

 小柄で童顔な施然にとって、良く言えば大人びて見える陳武は羨ましい存在らしく、御者をする隣に座りしきりに話しかけていた。

 当初はおっさん扱いされて嫌がっていた陳武も、見目が幼く愛らしい施然に懐かれ、まんざらでもない様子で得意げに話し出す。


「やっぱ心身共に他よりも成長しているのが『大人』ってことじゃないかな?」

「なるほど!では心身共に成長していくにはどのようにすればよろしいのでしょうか?」」


 手を打って合点する施然。

 それに対して当然のように陳武が答える。


「そりゃぁもう。漢が成長するって言ったら『女の為』よ」

「『女の為』ですか?」


 陳武の言葉に、施然が少し小首をかしげつつも返す。

 

「なるほど、か弱き者の為に己の腕を磨く。立派な心掛けです」

「まぁそうっちゃそうなんだが……ちと違うな」

 

 施然の解釈にいやいやと手を振りながら、陳武が続けた。

 

「まぁまだお子様にはわからねぇだろうが」

「そうですか。まだ修行が足りぬということですね。ちなみにお子様ではなく私は孫権殿と同じ今十三です」


 話を聞きつつもしっかり歳を強調する施然。

 一方陳武は施然の歳を聞いて驚く。

 

「え?お前孫権様と同じ歳か?」

「はい!」 

「俺が言うのもなんだが、人は見かけによらねぇというか……、まぁでも確かにしっかりしてるな」


 陳武に言われて少し上機嫌になる施然。


「まぁでもそういうお年頃だったらそろそろわかってもよさそうなもんだが」


 意味深につぶやく陳武。

 その様子に頭に疑問が浮かびながらも更に質問する。

 

「つまりどういう事をおっしゃりたいのでしょう?」

「お年頃ってそりゃ決まってんだろ?それともなんだ?とぼけた顔してなんだかんだ興味あるってことか」

 

 ふふん、と鼻を鳴らす陳武。

 その様子に陳武の言いたいことはわかってはいるものの、口は出すまいと思っていた孫権が口をはさんだ。

 

「陳武その辺にしといたほうがいいぞ。施然は……」

「いいか。まず女を落とすにはいい飯屋に誘う所からだ。でもまぁそれよりも良いのが旨い飯を食わせてやるって言って家に呼ぶ。そのために料理の腕を磨いたからな。この身体も女を落とすために鍛えたといっても過言じゃねぇ」

「……は?」


 ここまで来て流石に察した朱然。

 陳武が話すたび、施然の表情がみるみる険しくなっていく。

 その様子に孫権も再度口をはさむ。

 

「陳武、そろそろその辺にした方が」

「後は懇ろになった所で……」

   

 べらべらとしゃべった所で反応のなさに陳武が一瞬黙り、ちらっと施然を見る。

 するとそこにはすっかり冷めた視線の朱然。

 そして、

 

「さいってーです」


 非常に冷たい声と言葉で、陳武に台詞を吐き捨てる。

 

「見損ないました。馬車降りて下さって結構です」 

「え?は?施然?」

「二度とそのような低俗なことはおっしゃらないでください」

 

 ゴミでも見るかのような目で陳武を見た施然は、さっさと陳武の隣から降りると、

 

「次の街で新しい御者を探しましょう。孫権殿」


 そういって馬車の中の孫権の元へと戻ってしまった。



「施然ちゃーん。ごめん。許してくれよ」

「ちゃん付けで呼んで子ども扱いしないでください。あと猫なで声気持ち悪いです」

「そんなこといわないでさー」

「そろそろ次の街見えてきましたね。孫権殿」


 露骨に話題をそらそうとする施然に苦笑いで返す孫権。

 陳武が施然の機嫌を損ねてからずっとこのありさまである。

 施然は次の街で陳武をお役御免にするつもりのようだが、実際陳武は腕も立つし、その他もろもろ(料理の腕も含めて)何かと役に立つ。このままついて来てくれればきっとゆくゆくは兄の役にも立つに違いない。

 

「施然。そろそろ機嫌を直して陳武を許してやったらどうだ?」


 たまりかねて孫権もとりなしに入る。 

 それに陳武も便乗する。


「ほら孫権様もこう言ってるし、施然ち……施然さま~」

「様付けもやめてください。わざとらしいです」


 眉間にしわを寄せながらこたえる施然。

 しかし陳武も食い下がる。

 

「この先まだ道のりは長いし、どんな危険が待ち受けているかわからないだろ?一人でも仲間が多い方がいいって。この辺は賊も出るって噂が」

「そんなこと言って本当に出たらどうするんですか」

「でもさ」

「そうそうこの辺は本当に出るからね~」

「ほらこう言って……え?」


 施然が思わず返事をしたところで、その声が陳武の声ではないことに気が付く。 

 孫権でもない、やけに陽気な第三者の声。

 それが頭上から聞こえ、全員が頭上に視線をやる。

 と、同時に、

 

 どすんっ!


 と、陳武の横に大柄な人物が落ちてきた。

 

「なんだ?!」

「いいからそのまま進め」


 先ほどの声とはまた違う、低いどすの利いた声が陳武に大剣を突き付けて脅す。

 孫権一行の馬車は一気に緊張に包まれた。



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