本編62
一体、なにが起きてるんだ……?
「そこの2人、動かないように!」
理解が追いつかないまま、俺らは数人のおじさんに拘束される。
恐らく研究員かなにかだろう。
ほぼ全員ひょろひょろの頼りなさそうな人達だが、多勢に無勢。
また殴ったり暴力で解決したら、今後に影響が出そうだよな……。
とくに、シバ……。
「捕まるようなことした覚えないっスけど」
シバの言い分もわかるけどな。
さっきの警備員のこともあって、俺たちは素直に大人しくした。
その間、セトは動かないどころか目も合わせてくれない。
「ダイチもシバも、ちょ~っとだけ大人しくしてて~!」
貼り付けられた笑顔は、どこか強ばっている。
俺らに向けられた顔と声は確かなのに、視線は交わらない。
……こいつ。
なんかあったか?
長年の付き合いの勘というか。
いつもヘラヘラしてて何にも考えてないように見えて、常に何かを抱えている。
セトは、そんな奴だ。
「………セト」
声をかければ、後ろ手に拘束された手が引っ張られた。
くそ、このおっさん…。
地味に痛えんだ、覚えてろ…!
「なに〜?」
「俺、シュリ迎えに来たんだけど、知らね?」
素直に言えば、セトのまつ毛が少しだけ揺れる。
十中八九知ってるんだろうけど、なにか事情があるみたいだ。
きっと、俺らには言えないような。
だって絶対に、意地悪とか出来心でこんな事するような奴じゃない。
向こう側に立つ理由が、きっとある。
「もし……────!?」
さらに口を開こうとしたとき、突然フロアの電気が切れて真っ暗闇に包まれた。
「はじまるのか!」
「来たな」
急にザワつく中、俺は辺りを見渡した。
なんだ?
何も見えないけど、空気が高揚している。
こんなの、サプライズ動画でしか見た事ないぞ。
今日、誰かの誕生日?それとも記念日か何かか…?
エレベーター前から、90度右側。
暗がりの中で映されたモニターには、
『準備が整ったので、ゲートを開けます。ゲート内の確認ができ次第、彼女と共に出発します!』
「は………?」
シュリ。
俺が迎えに来た女の子が映っている。
それは1階で見た映像と大差なかったから、そこまで驚愕したわけじゃない。
……問題は、隣にいる人物。
ニコニコと手を振りながら挨拶している男。
姉ちゃんがアルバムを引っ張り出てきたあの日。
若い頃のばあちゃんと一緒に写ってた。
その姿でここにいるはずない。
だって……
「神野、ユウ……」
「!」
じいちゃんが、若返るわけないじゃないか。
つい先日、テレビで見た時は俺の知ってる普通のじいちゃんだったのに。
そこにいる人物は、まるで……
『では、しばらくお待ちを!』
それこそ、タイムスリップでもしてきたのかと疑いたいくらい。
信じ難いが、写真でしか見たことの無い若いじいちゃんがいた。
「ゲートってなんだ…?シュリちゃん、またあの機械に乗るんじゃないのか?」
驚きの連続で言葉も発せない俺に、シバがセトに問う。
そうだ。
シュリがまたあの機械に乗って、元の世界に帰るんじゃないかと危惧してここまできたんだ。
「……時代も進化したんだよ。もう、機械なんていらなくなった」
モニターから視線を移すも、セトは淡々と告げるだけ。
それは、確かに目の前にいる友人から発せられた言葉なのに。
「…………」
お前、誰だ……?
そんな気持ちが大きくなった。
上手く言えない、言葉に出来ないけど。
俺の知っているセトとは違う。
いっそセトの皮を被った他人と言われた方が、まだ信じられるレベルで…。
だって、お前が淡々と感情も乗せず話すところなんて見たことない。
出会った時から、たぶん家族以外で1番近くにいた。
親友の2人のうちの片割れ。
「シュリちゃん、別の世界から来たみたい。そこに帰るんだって」
すとん、と面白いくらいあっけなく、セトの言葉が心に落ちた。




