本編32
「…40分か。なら、そこにその人が実在するのかだけでも確かめに行くか?」
空になったカップを手で転がしながら、さらりと言う友人。
地図を見たら、どうやら姉ちゃんがとってくれたホテルの最寄り駅を2駅ほど通過した場所のようだった。
「本当にいたら、明日出直せばよくね」
顔色一つ変わらない、黒い目と目が合う。
「え、でも……」
二度手間になったら、時間も交通費ももったいなくねえか…?
いや、俺は全然いけるんだけど。
シバにはただでさえ付き合わせてるし、いくら友達とはいえさすがに申し訳ない。
今日は飯でもおごって、そのままホテルに向かおうと思っていたんだが…。
数秒空いて、先に行動したのはシバだった。
「……なら、ホテルの最寄り駅から散歩がてら行こうぜ。俺も、ちょっと気になることあってさ」
俺から空のカップを奪い、待合室を出る。
…気になること?
別に大阪にゆかりないだろ、お前。
追いかければ、それを二つ重ねてゴミ箱に入れたシバは、ポケットに手を入れながら振り返った。
いつも死んだような眼をして、ダルそうなのに。
ほんの少しだけ揺れた瞳。
「ダイチが嫌なら、俺だけで行くけど」
「んなわけ!行くわバカ」
即答すれば、今度は安堵したように伏せられた眼。
マスクの下は、たぶん微笑んでる。
「よっしゃ、目的地へゴー!!」
目的地。中継地。通過地。
待っているのは、どんな人なんだろうか。
天城さんがくれたヒント。
きっと役に立つと言っていた。
だから、前を向く俺には気づけなかった。
「…………おかしいのは、誰なんだろうな」
天を仰いだシバのつぶやきなんて。




