本編21
「何見てんの?」
リビングで、テレビもつけずに寝転んでいる姉ちゃんにアイスを投げる。
「サンキュ~。昔のアルバム!」
綺麗にキャッチした姉ちゃん。
その隣に座っていたシュリには、蓋を開けたアイスと使い捨てスプーンを手渡した。
こんなに広げて、片付けるの絶対俺じゃん…。
なんて思いつつ。
散らばっている幼い自分の写真を見ると、やっぱり気にはなるもので。
俺は適当にアルバムを1つ手に取って、棒アイスを咥えながらソファに座った。
するとすぐにシュリが立ち上がり、そのまま俺の隣に来る。
「あいす、ありがと」
「ん」
そのままソファの上で体育座りをしながら、俺が持ってきたアルバムを覗き込んだ。
「あ、これ。ソラちゃんとダイチ?」
最初の1ページ目。
トップバッターには赤ちゃんの頃の俺。
四つん這いの姉ちゃんと俺が笑顔で写っている。
「そうそう。多分2、3歳かな」
他にも、母さんに抱っこされる姿や、父さんの上に座る姉ちゃん…。
写真が好きな母さんの影響で、今はほとんどなくなりつつある、現像された写真が残っている。
時代は電子上での保存だもんなあ。
場所は取るわ、現像代はかかるわで。
でも俺も紙の写真は嫌いじゃない。
色あせた感じが、こうして後で見た時に懐かしさを倍増させる。
まぁ写真の当時のことは、ほとんど記憶にないけど…。
「あ、ソラちゃん変な顔~」
シュリが指さした先には、姉ちゃんが変顔をして父さんを笑わせている写真。
「ほんとだ。姉ちゃん大体変な顔してんな」
ペラペラとめくっていると、あっという間に1冊終わってしまった。
大体が家族4人の誰かか、親戚付き合いの旅行で人と写っているか。
俺が0〜4歳くらいまでの写真が多くて、中には姉ちゃんと妊娠中の母さんの写真なんかもある。
うわ、これ従兄弟のカイくんだ。
懐かし〜。
俺が小学校に入る頃くらいまでは近くに住んでて、よく遊んでもらったお兄さん。
引っ越してからはほとんど会ってないけど、また会いたいなあ。
なんて、思い出に浸りながら捲っていると、
「あら、カイくんじゃない。去年結婚したわね、そういえば」
「「マジ?!」」
後ろから覗き込んでいた母さんの衝撃発言に、俺と姉ちゃんがハモった。
「まじよ、まじ。仕事の関係で、結婚式は来年以降にやるみたい。その時にまた招待状くれるって言ってたわよ」
全然知らんかった…。
まあ、あの時すでに中学生か高校生だったもんなあ。
にしても結婚か。すごいな〜。
「え……」
感心していたら、俺の代わりにページを捲ったシュリの戸惑ったような声が聞こえてくる。
「どした?」
見れば、さっきのカイくん達家族も含めたスナップ写真。
旅館の前で撮られたそれは、何の変哲もないけど…。
「……ュゥ…」
「?」
シュリの言葉がききとれず、首を傾げた。
どれのことだ?
何か知ってる場所が写っているのだろうか。
「……ううん。この人って…」
シュリが指さしたのは、写真の端に写っている人物。
恐らく後ろで腕を組み、微笑んでいる。
「あぁ、じいちゃんだよ、俺らの」
「!」
一瞬驚いたように目を見開いたシュリに気づかず、ページをめくる。
何枚かめくった先。
「あと、これがばあちゃん。ばあちゃんは、もう死んじゃったけど…」
さっきの写真には写ってなかったから、きっとばあちゃんが撮ってくれたんだろう。
2人でこちらに笑顔を向けているその写真の真ん中には、俺と姉ちゃん。
さっきの旅行よりはだいぶ後に撮られたものみたいで、多分俺らが小学生の頃だ。
そう説明すると、じっと写真を見ていたシュリはぎこちない笑顔を作った。
「そ、そっか。見たことない人だったから、気になって…」
まあ、それもそうか。
「おじいちゃん、仕事の関係で沖縄にいるのよ。もう3年くらい会ってないから、そろそろ会いたいなあ」
姉ちゃんはそう言いながら、アイスの棒をゴミ箱へ投げる。
綺麗に入ったそれは、コン、と小さな音を立てた。
じいちゃんに最後に会ったのは、姉ちゃんと同じく3年前。
それも、ばあちゃんの葬儀。
そのあとは俺たちの高校受験があった事や、ウチ自体が慌ただしくなって、全員で予定を合わせることがまず難しくなってた。
母さんと父さんは、墓参りとかちょくちょく行ってたけど。
その時以来俺たちは、電話やメッセージはたまにするくらいだ。
今年は姉ちゃんの大学受験は推薦で決まってるし、俺は2年だから余裕あるけど…
「お義父さん、今年は研究で籠りきりだからねえ」
「まったく…返事もよこさずに没頭しすぎなのよ」
父さんの言葉に、母さんがため息をつく。
…こりゃ、沖縄旅行は望めなさそうだ。
でもいつか、シュリをじいちゃんに紹介出来たらいいな。
きっと驚く。
じいちゃんは、不思議なこと大好きだから。
俺は、シュリが持っていた空のカップとスプーンを回収して立ち上がる。
「先に寝るわ」
「はーい、おやすう~」
「おやすみ」
そのまま手に持っていた全てをゴミ箱に落として部屋に向かうと、シュリもついてきた。
「わたしも、寝る!」
「お、おお……?」
そのままカーテンを閉めて布団に潜る彼女。
全然眠くなさそうだし、意気込みながら言うセリフでもないけど…。
「じゃ、おやすみ」
「うん!」
戸惑いながらもカーテンをしめた。




