本編20
「それなら、彼女は……」
ヒラッ
めくられた表面には、女の子の絵。
これ、タロットカードってやつか。
裏面とは違い、ポップな絵柄だ。
そっとそれに手を伸ばした時、ポケットから何かが落ちた。
「落ちたよダイチ」
「え?なにが?」
それを拾ったセトが、俺の目の前にそれを突き出してきた。
「なんこれ~ネックレス?」
セトの手にあるもの。
それは、あの日。
シュリを見つけた日。
ばあちゃんのコレクションから1個いただいたやつだ。
最近この服着てなかったし、普通に忘れてたわ。
「そー、ばあちゃんの。ありがと」
「それ、それをどこで!」
何気なく受け取ると、占い師が鬼の形相で見つめてきた。
「え!? お、俺のばあちゃんの形見というか、なんというか…」
若干引き気味な俺に、食い気味な占い師。
逃げ腰になりながら、どんどん顔を近づけてくる占い師からなんとか距離をとる。
鼻がぶつかりそうになり、ぎゅっと目を瞑ったとき。
「…このままだと長くはないぞ。お前も、その子も」
離れていく気配と声。
「は、はあ……」
ゆっくりと目を開ければ、占い師はすでに元の位置に戻り俯いていた。
「……いずれわかる。ただ、わかった時にはもう遅い」
持っていけ、と先ほどのタロットカードを指さされる。
言われるがまま、そのカードを手に取り個室を出た。
料金とか払わなくてよかったのかな…
ま、まあ向こうからの指示で入ったようなものだし占いもされてないしいいのか。
一体何の時間だったんだ…?
「なんか、占いっていうより押し売り尋問だったね~」
ほんとにな。
頭の後ろで腕を組んで隣を歩くセトに同意だ。
「一気に疲れたわ…」
しかも誰だよ、これ…。
カードに描かれている、三日月に座り目を瞑る女の子。
女の子の知り合いなんて、姉ちゃんか、シュリか、クラスメイトしかいないけど。
こんな絵に描かれているような友達は、到底見つからない。
とりあえずもらったカードをぽっけに入れれば、ちょうど前からシュリとシバがやってきた。
「どこ行ってたんだよ、探したぞ」
「の割にはアイス片手に楽しそうじゃ~ん」
左手を上げるシバと、シュリを見て笑うセト。
シュリはソフトクリームを片手に持ち、俺らに手を振っている。
「シバくんがくれた~!」
どうやら、シバがおごったらしい。
…めっちゃ懐いてるな、お互い。
シバが女の子に何か買ってあげたところなんて見たことないぞ。
「よかったな。サンキュ、シバ」
シュリの頭にぽんと手を置き、両手をぽっけに突っ込んでいる友人に礼を言う。
すると、シュリが開いている左手を俺に伸ばした。
「ダイチ、なんか出てるよ?ひも?」
「あ、」
するりと引っ張られたそれは、あっさりとシュリの手に渡る。
一緒に、さっきのカードが地面に落ちた。
「!」
「っぶね!」
一瞬目を見開いたシュリの手からソフトクリームが離れそうになり、慌てて手ごと握る。
我ながら、今のはいい瞬発力だ。
…じゃなくて。
「どうした?」
俺の代わりに、シバが声を出す。
セトは無言でシュリの手から離れ地面に落ちたそれとカードを拾い、俺のぽっけへ入れた。
「う、ううん……落としちゃって、ごめんなさい…」
慌てて首を振ったシュリは、どこかぎこちない。
「いや、全然いいけど大丈夫か?」
だいじょうぶ、と復唱したシュリは、俺にではなく自分に言い聞かせているようにも思えた。




