表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
根絶やし伯爵と枯れ枝令嬢  作者: 片山絢森
【第二部】ドルキアンの青い花

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/93

女神の爪先


「――着いた」


 それからしばらくして、ギルバートが馬を止めた。


「わぁ……」


 彼に連れてこられたのは、岩の転がる荒れ地だった。


 目の前には岩山がそびえている。陽光を浴び、白く輝いているようだ。変わった形の山で、(のみ)を垂直に立て、半分を一気に削り取ったような形状をしている。岩山というよりも、大きな一枚岩といった方がいいかもしれない。

 その向こうには青い山々が連なっていて、こちらも陽光を受けて輝いていた。


「ここが花の咲く場所だ。何もないが、代々の領主には伝えられている。好きなだけ調べてくれて構わない」

「ありがとうございます」


 岩がごろごろしているのを除けば、特に変化のない場所だ。ちらほらと草が生え、乾いた風に揺れている。灌木(かんぼく)の茂みらしきものもあるが、ほとんどが砂と小石だけだ。木が生えているのはずっと向こうで、思ったよりも見晴らしはいい。


 すぐそばが削り取られた岩山の(ふもと)で、まるで巨大な根のようだった。


 無駄かもしれないと思いつつ、花の痕跡を探す。

 あちこち探してみたものの、花はもちろん、葉の影さえない。膝をついて探すレティに、ギルバートは戸惑った顔になった。


「レティ、服を汚してしまうぞ」

「大丈夫です。汚れても問題ない服を着てきました」

「だが、虫もいるし、怪我をしたら大変だ」

「刺す虫は怖いですけど、それ以外は平気です。怪我は気をつけますね、ありがとうございます」


 レティは森育ちなので、山もまったく問題ない。森で食料を探す時と同じだ。怪我をしないよう気をつけながら、目的のものを探索する。今は花の痕跡なので、探すのもそれほど苦労はない。砂で汚れた顔で笑うと、ギルバートは無言になった。


「……貴族の令嬢というのは、みんな君のような人なのか?」

「いえ私を基準にしたら駄目ですよ!? みなさんもっとおしとやかで愛らしくて上品でいらっしゃいます……!」


 何しろレティは森育ちなので(二回言った)、これが普通と思われたら困る。貴族の令嬢というのは、パメラのようなすべてに秀でた女性の事だ。野性に馴染んだ自分を見て、結婚相手への夢と希望をぶった切られたらまずい。というか彼の部下に叱られる。主にガストルとか。

 必死で説明すると、どうやら分かってくれたようだった。


「そうか、普通の貴族令嬢は虫をつかまえないのか」

「貴族令嬢じゃなくても苦手な方はいらっしゃると思いますよ?」

「地面に膝もつかないのか」

「それは私が悪いです」

「馬を怖がったり」

「人によりますね」

「宝石とドレスが何より好きと」

「それも人によると思います」

「貴族令嬢とは……難しいな……」


 しみじみと語られてしまったので、レティはなんとも言えない顔になった。


(い……いい方がみつかるといいですね……)


 彼は真面目で良い人だ。少し突っ走るところはあるけれど、そこを好ましいと思う令嬢は必ずいる。なんとかこの窮地を乗り切って、素敵なレディと出会ってほしい。


 そのためにも、何か手がかりを。

 小石のひとつに触れた時、ふと妙な感じがした。ぱちりと目を瞬き、じっと観察する。


「レティ、どうした?」

「いえ……なんでも」


 気のせいかもしれないと首を振ったが、どうにも気になる感じがした。

 だが、確証はない。

 結局その日、手がかりは何も見つからなかった。

お読みいただきありがとうございます。パメラも元気にやっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ