第八話~いざ~
あちゃ…計画を堂々暴露してるよ。普段は爽やかに物事を進めてそうだけど…熱くなると自分以外の者を見捨てるタイプね…。
そんなことを心の片隅で呟きながら呪いを解いていく。
だがやはり、ターミシャルイミハサの呪いは強い。ただの呪いであれば裁縫に使うような糸をほどくような感覚でできるが、これはまるで鉄でできたロープがピンと張られているものをほどくくらいに難しい。
いつの間にか体中。汗でびっしょりだ。
額に付いた汗を軽く拭いながらも再びカワテヒの方に意識を戻す。
「やれ…」
ジミサルの冷たい声を発した。それはまるで今までに感じていた憎悪や怒り、憎しみの全てを込めた。そんな感じだった。
武妖の全員が一斉に剣を振り抜いた。鞘と刃が擦れ会う、鋭い音だけがその場に響く。
「ちっ」
舌打ちを打ちつつ、剣を抜く。こうなってしまったら、もう口での交渉は不可能だろう。
やるしかないのだ。
その場に沈黙が走る。ある程度時間を稼ぐことができれば、狩妖精が参戦できる。そうすればこの人数相手にも勝算は生まれる。
だが、そうなってしまうと自分だけではなくこの狩妖精までも守らなくてはならない。
攻撃をかますよりも守るほうがずっと難しい。それを肝に命じなければ。
━━━パチッ…
ジミサルが指を鳴らした瞬間。武妖達が一斉に襲いかかってきた。
「らああぁぁぁぁ!」
一人が声を張り上げながら剣を降り下ろす。それを剣で受け止め勢いを横にそらす。
「うおっ!?」
それでバランスを崩した武妖の足を引っかけて転ばせる。正面から地面に突っ込んだそれを瞬時に抱えて、武妖の塊に向かって放り投げる。
「きゃああぁぁぁぁ!?」
いくつもの断末魔が聞こえた。断末魔といっても殺してはいない。最低限、殺すことは避けたいのだ。だから、殺しはしないが戦闘復帰ができないくらいに痛めつけておく。
「っと」
なんてちょっと遊んでいたら、狩妖精の方に太刀先を向けているやつがいた。
狩妖精の方に向かおうとしているやつに剣を振るう。致命傷にならぬようにしっかりと肩あたりにいれておいた。
「がっ!」
肩に力が入らなくなり、そいつは剣を落とす。すかさずその剣を拾いあげ、上半身を持ち上げると同時に別の武妖の腿に投げつける。
「うわっ!」
これで数人はしばらく動けないはずた。
後どのくらいこれを繰り返せば良いのやら…。骨が折れそうだ。
その刹那、目の前に何かが通りすぎた。
「っ!?」
刹那、足にやけつくような痛みが走った。これはまさか…
「実矢《カースヤアロー》…」
足に突き刺さっているのは、光矢とかの魔力を凝縮して造った魔矢《ハルバーアロー》ではなく、木や石などの素材を使って己の手で造った矢だ。
素材が魔力だけの矢に比べて実矢《カースヤアロー》は何もメリットが無いようにも思えるが、実矢《カースヤアロー》にはしっかりとしたメリットが存在する。
一つ目として威力が高い。返しを作りなどの細工を仕掛けることができるし、時間経過で消えてしまう魔矢《ハルバーアロー》とは違い抜かない限り、永遠に刺さったままだ。
そして最大のメリット。それは『毒』を塗れること。
「あ…ぐ…」
足に突き刺さったままの実矢《カースヤアロー》には私の血以外にも黒いものが付いている。おそらく即効性の毒だろう。体が痺れてきた。額にも汗が滲んできた。
「おい!っ!」
そんな私を見て近寄るコルミヤに対して、剣が振られる。瞬時に体を捻るもふくらはぎ辺りに赤い筋が浮いていた。
「こ、このままだと…」
三人とも殺される。動くことさえままならない私とカワテヒは確実に殺されるだろう。だけどコルミヤだけならっ!
その瞬時だった。
ドアの付近から爆発音が轟き、それと同時に数々の悲鳴が響いた。
「退きやがれ!このへなちょこ野郎!」
「この声は…」
馴染みのある声。よく聞く声。この声の主は。
「ヘリフス!!??」