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異世界政治モノはいかが?  作者: 神野皇極
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第38話「祭りの始まり」

次の話が濃厚になる予定なので、とりあえずさらっと。

 紅茶を飲みながら、机を挟み国王と政策の話をする。最近ではもう慣れた行動だ。

「魔物の進行がだいぶ過激化しているようですね。」

俺は報告書を見ながら国王に話しかける。

「ええ。それに色々なタイプが見られるようになりました。陽さんたちの出会って巨大なものも、その1つです。」

話を聞きつつ、報告書に再び目を通す。どうやら、今までは中型の陸上生物に限られていたが、最近はより大型のものや、鳥にまで魔石が付けられているようだ。

「食い止めるには、軍事費を増やす必要がありそうですね。しかし……」

「はい、まだまだ内政も拡充したいものです。都市部はともかく、末端の村々はまだまだ貧しい状況ですし、治安や人権侵害も不安です。」

国王も俺も基本的に内政をどうにかしたいという想いは一致している。しかし、現実問題、段々と魔物の被害は大きくなっている。軍備を拡充するべきだ。同時に行うには資金が足りない。どうにもならないジレンマを抱えている。

「勇者の方の進捗はどうでしょうか。」

「私たちが持っている情報は出しましたし協力もしていますが、まだまだ原因究明には至らないようです。」

もう何か月も経っているのに。思い通りにならない状況のせいか、無性にのどが渇く。

「まあ背に腹は代えられませんね。軍備を拡充しましょう。」

「そうするしかありません。」

最近の仕事の会話はいつもこれで終わる気がする。

「この後はしばらく各地を訪問したりしますので、私はそろそろ行ってきます。今日はお祭りですし、陽さんはそちらに行ってみてはいかがでしょうか。」

国王は先に部屋に席を立って外に出た。そういえば確かに前にソレイユが祭りだと言っていた日だった。

 俺も続いて外に出る。すぐに宮殿の使用人が部屋の中の忘れ物をチェックしてから、鍵をかける。


 一先ず家に一旦帰ろうと廊下を歩いている……ここに来てから結構経つが、宮殿を出入りする元貴族などからは今でも怪訝そうな視線を向けられる。そんなくだらないことを考えながら角を曲がると、誰かにぶつかってしまった。柔らかい感触と女性特有の甘い香り……多分女性だな。怖いなぁ、誰だ。

「すみません、大丈夫でしょうか。」

一応相手を気遣うようなセリフを吐く。見てみると、見覚えのあるそこには美しい女性が頭を抑えていた。

「ええ、大丈夫です……あ、誰かと思ったら陽か。」

丁寧な口調から急に砕けた口調になった。ソレイユだ。

「パパから聞いたよね。今から私もついていかなきゃいけないんだ。だから残念だけど今日のお祭りもいけないの。ミカちゃんと楽しんできて。」

ソレイユは畳みかけるように話、すぐに立ち去って行った。どれだけ重要なイベントなのかわからないが、国王や姫が揃って直接行くぐらいだから重要なことなのだろうか。まあ考えても栓がない。早く帰ろう。


 家に帰り、ミカにソレイユが来れないということを話す。

「ええ、ソレイユさん来られないんですか。」

心底残念そうに喋る。仲が良さそうなのが逆説的にわかってちょっと嬉しい。

「でも、これで先輩と2人きり……なんちゃって。」

小悪魔め。可愛いことを言ってくれるな。乗せられる気はないがな。

「ところで先輩はどうしてそういうイベントの類は出席しないんですか?」

不思議そうに尋ねる。まあ最もな質問だろう。

「前にも言わなかったっけ。俺そのものは確かに裏から国王を傀儡にできるぐらい権力がある。でも、公式の物じゃないからな。正式なイベントとかに参加すると強い反発を受ける可能性がある。」

「どこの世界にも、そういうことに拘る人はいるんですねぇ。」

まあおかげでやってもやらなくても変わらなさそうなイベントに参加する必要がないのは助かるけどな。

「さて、それじゃ先輩、私は部屋で待ってるので、準備ができたら部屋に来てくださいね。」

俺は小さく「ああ」と返事をして、自室に戻る。


 いつもより少しおしゃれをして、ばっちり決めきたミカとと共に祭りの会場に近づくと、今日の祭りに関する張り紙が壁や掲示板の至る所に貼ってある。ついでに風俗店の張り紙も。

「これぐらいならいいけど、ものや状態によっては張り紙も規制すべきだろうか。悩むな……。」

「また仕事のこと考えてる……。」

ミカは呆れたようにそういう。しかし、政治と言うのはむしろ、日常生活に何よりも近い仕事だ。何も不思議なことじゃないはずなのだが……。

「ところで、この祭りってなんていう名前だっけか。」

「勇者降臨祭……ですね。文字通り、勇者の活躍が由来のお祭りです。なんでも、昔起こった災害の時に勇者が活躍して世界を守ったとか。」

勇者か。「あいつ」が祭り上げられそうな祭りだな。

「しかし、それって勇者が助けてくれたのはいいものの、元々災害が問題なんだから、むしろ厄災の日に近い気もするな……。」

「言われてみればそうですが……そういうマイナス思考ばかりじゃダメですよ。」

怒られてしまった。マイナス思考かは置いておいて、昔からこういう怒られ方をするところ、俺は変わってないな。

 何か爆音が聞こえた。そう、まるで花火のような音だ。空を見てみると……明るくてわかりにくいが、何か飛んでいた跡は見えた。

「今のは花火なんでしょうかね?」

「多分そうだろう。」

空を見ながら話をしていると、今度は花火らしきものが飛んでいるのが見えた。

「祭りが始まる合図か何かだろうか。まあいい、とりあえず進んでみよう。」

そう言って、ミカと一緒に人が多い方……それから、露店が並ぶ方向に歩いていく。





 

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