第14話「とにかく尋問だ。」
突然襲い掛かってきた…いや、やっぱり襲い掛かってきたイザリオとガエリオと馬車の運転手を拘束した。途中、電撃での麻痺が治りかけたが、そこは再びミカの電気魔法で痺れさせてもらった。武器も取り上げたから、また目が覚めて話を聞くのを待つだけだ。
「先輩、やっぱり馬車いませんね。」
ミカには一応、周りを見てもらっていた。片方の馬車は俺が壊したから当然として、ミカの乗っていた馬車もどこかへ逃げたようだ。
「つまり俺たちは今、草原の中にポツンといるだけだな。まあいい、方角は分かってるし、幸い俺は結構国王から小遣いを貰ってきた。そこはおいおい考えるとしよう。」
時間があればなんとかなるものは後回しだ。まずは縛った3人から情報を引き出そう。無論、引き出せる保証はないが。
どうやら、最初にガエリオが動けるようになったようだ。もちろん、簡単に抜け出せはしない。次いで、残りの2人も動けるようになった。
「さて、それじゃあ始めるか。」
まずは高圧的に行くべきか、それとも宥和的に行くべきか。
「ろとにかく拷問だ、拷問にかけろ、ですね先輩!」
「拷問じゃないから、尋問だから。そんな酷いことしないから。」
ミカがふざけた声でふざけたことを言ってくる。酷いことしないと言ってしまったし、まあまずは宥和的に尋問しよう。3人にめちゃくちゃ睨まれてて怖いが。
「ええとまずは、あまり反抗的な態度を取る場合は再び感電させて動けなくなってもらいます。今回俺を襲った件について、しっかりと説明をしてもらえれば悪いようにはしません。」
「口を割るつもりはありません。」
ガエリオが最初に返事をしてきた。まあそういう反応は想定内だな。あとはそこから、どう運ぶかだ。
「まあそう言うだろうと思いましたよ。でもそっちの馬車の運転手さんはどうでしょうかね?彼にはそこまでの義理はない。金に困ってるなら、俺が雇えばいいんですから。暴力的なことは嫌いだが、多少の汚い手は使わせてもらう。」
最後の文章だが、ちょっと高圧的になってしまった。少し頭を冷やさなくてはならないな。
「本当ですか!話せば助けてくれるんですね?」
「待て、そんなことをしたらどうなるか分かっているな。私たちが死んでも、必ずお父様は貴方だけでもl始末する。」
ちっ、折角運転手は釣れたのに、イザリオに水を差されたか。しかし、今の言葉は失言だな。こちらにある程度の事情が流れてきてしまった。お父様…俺の推測なら、これは家の話が絡んでるな。
「イザリオさん、ガエリオさん…2人は双子ですね。そして、ここは勘ですが、恐らくは貴族だとか、そういった類のものですね?」
「……そうだ。だから何だという?」
イザリオさん不機嫌だな。当たり前か。だが何とか情報を引き出さなくてはならない。下手したらこの事件は国民全体に関わることだからなちなみに勘は含まれているが、実際のところほとんど推理だ。言動などを見ればわかる。
「まあ単刀直入に言えば、その動機も含めて説明して欲しいんですよ。脅すようで悪いですが、説明していただけなければ、このまま国王の前に突き出します。そうすれば、それこそ家なんてものは余計に苦しい思いをするでしょうね。」
「くっ…だがそんなことをすれば、お前なんてすぐに始末されるぞ!」
ガエリオがイキっている。だが彼の言うことも一理ある。
「それは果たして誰にだ?君の父上か?それともそれ以外か?」
思わず俺も少し声を荒らげてしまう。
「どっちもだ!」
ガエリオが答えた。しかし、この言葉はこの状況では間違いだ。勝手に自爆して情報を晒してくれるなんて、あまり頭はよろしくないようだな。
「じゃあ良いことを教えてあげます。親なんてものは、所詮エゴで子どもを作るんだ。それに愛着が湧くことはあるようだが、ただエゴで作っただけのものが壊されて、そこまでの報復をするか?するかもな。だが、それが逆に自分に迷惑をかけているなら?確率は下がるよな?」
ちょっと揺さぶりをかけるつもりが、やりすぎてしまったかもしれない。だが俺の言うことは十分に真実味がある。そもそも自分の毒親を見て至った考えだから、現実のものだ。ただまあ、ミカにはあまり聞かれたくない程、感情がこもってしまった。聞かれていないといいが、残念なことに聞かれてしまっている。まあいい、所詮これが俺の本性だ。
「そんな……。だがしかし、それでもあの人がお前を狙うことは変わらない。」
ショックを受けながらも、強がっている。そして、もう今の台詞でこいつらの裏に何か他の者がいることは確定した。
「やっぱり裏に誰かいるんだな…。さて、遊牧民問題についてだが、あれは嘘でしょう?」
「そんなことはない。そうだ、私たちになんて構ってないで、早く報告に行かなくていいのか?」
ふむ…発破は効いているようだが、流石に認めはしないか。それにイザリオの方は多少冷静なのもあるな。ならば仕方がない。
「そうか。これ以上情報を引き出せないなら、あとは逃がすしかありませんね。でも、そうしたら裏にいる人間に貴方たちは消されるでしょう。情報漏洩の可能性がありますからね。それに当たり前ですが、お父上にも何を与えられなくて終わる。そこで取引です。もし俺に協力して、事件の真相を話し、もう俺を狙わないのならば、貴方たちを解放し、守るように動きましょう。どうです?悪くないでしょう?生きてれば親孝行なんて、他に機会がありますよ。」
先に厳しく、後に優しく…アメとムチを使い分けるのが重要だ。あとは成功を祈るだけ。
「分かった…。」
「姉さん!?」
ああやっぱりガエリオ君が弟なのね。そしていい返事がもらえたようだ。
「でも私たちが嘘を言ったら……」
「それは大丈夫です。さっき言った通り、この後は東の遊牧民に接触して話を聞くので。そうすれば、少なくとも嘘だということは分かります。」
そう、俺は既にこの場を完全に制圧しているのだ。今更こいつらが足掻くことはできやしない。
「負けだ…もう負けです。」
「あ、協力できることがあるなら、家族のことについても教えて欲しい。もし、どうしようもない理由があったのなら、それも解決したいから。」
と言っても、今更こんな悪魔みたいな奴を信用しないだろうがな。
「ええ全部話します。もうそれしかないのですから…。」
イザリオがそう言うと、項垂れていたガエリオも頷く。ついでに、馬車の運転手はもう付いていけない状態のようだ。
とりあえず拘束を外してあげた。
「いいんですか?また襲い掛かるかも。」
「圧倒的な戦力差でそんなことをしてくるなら、生かす価値すらありませんね。」
当然、そんなことは考えている。しかし、相手が襲ってくると分かっているなら、対処は簡単だ。
「さて、話を聞かせてもらいましょうか?」
主人公、陽の黒い部分がかなり出てきた話かと思います。