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やりたい事をやる為に … 序章   作者: 千月 景葉
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22. 夢枕・先輩へ 2

お読み下さりありがとうございます。


22話目です。


夢枕・先輩へ2です。


恋愛要素がある…かな?


(羽海乃!)


顔を強張らせた上條が雅の腕をきつく掴む。


しかし雅はその痛みを気にせず、ニッコリ笑う。


(先輩…。アタシをそんなにまで想ってくれていたなんて、ホントに嬉しいです。アタシは今まで全く恋愛に縁が無かったから。告白されるのなんて生まれて初めてで…。今凄く先輩にドキドキしてるんですよ。)


雅が照れ臭そうに話す。


(羽海乃…。)


上條が少し腕を掴む力を緩める。

急に雅が自分の告白に対して嬉しいと返答してきたので、戸惑いを隠せない。


(この事故が無かったら、きっとアタシ先輩にOKしてお付きあいさせてもらってました。だって今アタシ、先輩が凄く好きになってる。)


上條が顔を次第に赤くして、嬉しそうな笑顔に変わっていく。


(こんなにまで大事に想ってくれる男性(ひと)なんて、中々現れませんもん。アタシって凄く恵まれてます。上條さん、アタシを好きになって下さってありがとう。)


雅が頬を染めて上條に礼を言う。


上條は満面の笑みに変わる。


(なら、ずっと一緒に居よう!俺、羽海乃が、雅が側に居てくれたらそれだけで充分なんだよ。)


上條が嬉しそうに雅に話す。


だが雅はニッコリ微笑んだまま、首を横に振る。


(いいえ。大好きな上條さんだからこそ、お別れするんです。大好きだから、現実で貴方にしっかり生きていってほしい。アタシを幸せな気持ちにしてくれた貴方に、この先の人生を幸せに生きてもらいたいんです。)


上條が怒ったように雅に言う。


(雅が居なくなったら、俺が幸せになれるはず無いだろ!こんなに君を好きになって、こんなに大事に思えて…。その君が居なくなって、何で俺が幸せに生きていけるんだ!)


上條が雅に必死に訴える。


(俺を思ってくれるなら、俺を一人にしないでくれ。漸く君が俺を好きになってくれたんだ。俺は君を離したくない!連れていってくれ、雅!)


(貴方は…アタシと居るために死ぬとでも言うつもりですか?)


雅は顔を歪めて上條に問う。


(それしかないならそれでも良い!一緒に居られるのなら!俺が君を死なせたんだ。だから…!)


上條が雅に言い募る。


(先輩はアタシを死なせたりしてません!)


雅が上條に噛み付く。


顔を歪めた雅は、涙を湛えた瞳で上條を睨む。


((むし)ろ先輩はアタシを助けようとして必死になって下さったでしょ。子供を助けて、アタシまで…。アタシが死んだのはブーツが引っ掛かって、焦って自分で何とかしようとして溺れたからです!先輩はアタシの死に何の責任もない!)


上條は強張った表情に変わり、雅に言う。


(だがあの時君から目を離さなければ、もっと早く気付けた!君を助けることが出来た筈なんだ!君から目を離した俺の油断だ!)


雅が大きく首を振る。


(違います!アタシは先輩とカッちゃんが岸に向かう途中に溺れたんですよ!もしあの時、先輩がアタシの溺れている事にすぐ気づいたとしても、カッちゃんを救助中にアタシを助けるなんて不可能だった!あれはアタシの油断と(おご)りが招いた間の悪い事故だったんです!)


上條に一気に言い放った雅は、肩で息をしていた。


(…どうして全て自分が悪いって言うんですか。アタシは自分であの子達を助けるって決めて動いたんです。溺れた原因のブーツを脱がなかったのはアタシ。後先考えないで引っ掛かってたブーツを自力で何とかしようって無茶したのもアタシ。全てアタシが自分でやったことです!悪いのはアタシなんです!)


両手を握りしめ唇を噛み締めた雅を、半ば呆然と上條が見る。


(羽海乃…。)


(アタシが悪いのに、大好きな先輩がそれで自分を責めて苦しんでいるなんて、とても見ていられない…!つらくて…!)


雅はそう言うと俯いた。


上條から目線を外し、何とか高ぶった感情を抑える。


呼吸を調え、再び上條を見上げる。


(だからどうか…どうか自分を責めたりしないで。それは間違っているんですから。貴方は寧ろカッちゃんを助け、アタシを助けようと出来る限りの事をして下さったんです。アタシを思ってくれるなら…お願いです…!)


上條は必死に話す雅を言葉もなく見つめていた。


自らを責めるなと言う彼女に、一体これ以上何が言えるだろう。


上條を心配するあまり、死して尚会いに来てくれた雅。


その気持ちに自分はどう答えるべきなのか、考えずとも分かっていた。


(すまない…。君なら、人一倍優しい雅ならそう考えて当然だったよな。それすらも気付かず…すまなかった…!)


上條が頭を下げる。


(謝らないでください…!まず、アタシが先輩にお礼と謝罪をしなきゃなんないんですよ?なのに偉そうに言いたいこと言っちゃって…すみません、ホントに。)


そういうと雅は背筋を伸ばし、上條を見て深々とお辞儀をする。


(先輩、アタシとあの子を助けるために飛び込んで下さって有り難うございます。なのにアタシの死で辛い目に合わせてしまってごめんなさい。本当に本当にごめんなさい…。それを先輩に伝えたかったんです。伝えられて…良かった。)


お礼と謝罪を言うことが出来て胸を撫で下ろしている雅に、上條が聞く。


(雅…。俺が君のためにせめて何か出来ることはないだろうか?俺を心配して会いに来てくれた君に、俺は何をすれば良い?言ってくれないか?)


そう尋ねる上條に、しばらく考えていた雅が口を開く。


(…じゃあお言葉に甘えて、2つお願いしても良いですか?)


(ああ、何でも言ってくれ。)


身を乗り出す上條に、遠慮がちに言う。


(佐奈に…永峯さんに何も言わないで死んじゃってごめんねって、伝えてくれませんか?彼女にはいっぱい力になって貰ったのに、何も返せていないから…。大好きな佐奈にそう伝えて欲しいんです…。構いませんか?)


雅がそう言うと、上條が頷く。


(分かった。必ず彼女に伝えるよ。)


(有り難うございます。…あと、これは先輩にお願いなんですが…。)


雅が言いにくそうに口ごもる。


(何でもするよ。何をすれば良い?)


やがて雅が決心した様子で話す。


(…いつか…アタシの事が吹っ切れて、新しい恋を見つけられたら教えて下さい。アタシは先輩に迷惑しか掛けてないから…先輩が幸せを掴んだら、何も出来ないけど祝福したいんです。どんな形でも良いですから、アタシの名前を呼んで教えて下さい。それで…アタシの事は忘れて下さい…。)


そう言い終わると雅が上條を見つめる。


上條は衝撃を受けた様だった。


口を開け反論しようとしたが、雅の思いの丈を込めた眼差しに何も言えず、やがて苦し気に目を閉じるとため息をついて答えた。


(果たせる約束だとは思えないが…分かったよ。もし、そんな時が訪れることがあれば、必ず君に教えるよ…。訪れることがあれば、だからね?今はとても考えられない。)


(はい、充分です…。有り難うございます。好きだと言ってくれている貴方に…酷なお願いをしてごめんなさい…。)


上條は再び雅をふわりと抱き締める。


(…君以上の女性が現れるなんて思えない。君を忘れるなんて…出来そうにもない。)


そう言うと雅の髪に顔を埋める上條。


その肩が小さく震えている。


上條の背を優しく撫でながら、雅は囁く。


(先輩は素敵な人だから、近くで先輩を見つめている女性がきっと居ますよ。アタシなんかよりずっと綺麗で先輩にピッタリな女性がきっと現れます。先輩が大好きなアタシが保証しますから!)


(はは、心強いな、それは。)


力無い声で上條が答える。


(じゃ、そうなるようにアタシがおまじないをしてあげます。先輩、目を(つむ)って屈んでくれますか?)


(?こうか?)


すると雅は上條の頬にキスをした。


(!!)


焦る上條に雅が笑う。


(恋愛経験が無いもんで、これが精一杯のアタシの愛情表現です。唇はいつか現れる彼女さんに取っておいてあげて下さい!)


上條は赤くなってキスされた頬を押さえて、苦笑いする。


(君には敵わないな…。全く。)


(じゃあ、そろそろアタシ…行きますね。先輩、本当にありがとうございました。そして、ごめんなさい…。どうか幸せになってくださいね。大好きです…洋臣(ひろおみ)さん。…さようなら。)


(好きだ…雅!忘れない…!)


上條が雅に触れようとしたその時。


白い光が二人を包み込んだ。


やがて全ては光に溶け込み…。


気が付くと雅は斎場に戻り、上條は再び自宅で眠りについていたのだった。







(先輩…どうか幸せになってくださいね…。)


雅が願う。


横から静かに仙人が声を掛けた。


『では、最後の夢枕じゃな…雅。どうじゃ、調子は。』


(変わりありません。ではカッちゃんに…。お願いします。)


『うむ、始めよ。』


雅が泣いていた克真を思い浮かべる。


仙人が三度(みたび)、雅に溶け込んでいく。


最後の夢枕が始まったのだった。

恋愛って、これ又難しい…。


次話は明日か明後日になります。


ヤンチャな子供への夢枕です。

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