12. 提案
お読みいただきありがとうございます。
12話目です。
お茶目爺になります。
仙人は今までの些か厳しい態度を緩め、雅に笑いかける。
『すまんの。きつい話ばかりしてしもうたが、其方の心の強さを見極めたかったんじゃ。ワシは端から雅の力になるつもりじゃったよ。』
(始めから?何故?)
『其方がワシの目に留まった。それで理由は充分なんじゃよ。』
仙人が茶目っ気たっぷりに話す。
『ワシはこの世界のモノではないからの。この世界の理を知ってはいても、ワシには関係ないんじゃ。ワシと其方は似たような存在じゃが全く別モノなんじゃよ。』
(さっきの話だとこの世界に居るものに対しては、全てに理が働く様に思えましたが。あ、まさかアタシに諦めさせる為の嘘だったんですか?!)
雅が詰め寄ると仙人が笑う。
『ホホ、嘘など吐かんよ。ワシの話は全て本当じゃ。』
髭を撫でる。
『ワシは世界から世界を行く渡りじゃぞ。この世界とは似ても似つかぬ世界をも渡るのじゃ。一つの世界に囚われる筈が無いであろう。訪れた世界には敬意を払い、その理にむやみやたらと逆らうような事はせんが、それも時と場合による。ワシは自由なんじゃよ。』
内緒話をするように仙人が話す。
『世界を渡るワシが幾多ある世界の小さな存在を目に留める様な事はあまりない。其方は稀な存在じゃ。運が良いの、雅よ。』
雅は呆気に取られる。
何故か急に軽い話になってきた。
今までの重い雰囲気は何だったのか。
雅はため息混じりに言う。
(仙人様が凄いことだけは理解しました…。)
『ま、ワシの話は良いわ。さて話を本筋に戻すぞ。其方の願い通り、其方の大事な者達に思いを伝える方法はある。一番簡単なのはワシがちょいと力を貸して其方に現実に姿形を与え、その者達の前に顕れる事じゃな。』
(出来るんですか!そんなこと?!)
雅は愕然とする。
仙人の力って何でもありなのか。
(…あの、アタシを甦らせる事も出来たりします?)
雅は恐る恐る聞いてみる。
『それは無理じゃ。』
キッパリと仙人が答えた。
『其方の肉体は既に崩壊を始めた。魂を戻したとしても肉体が機能することはないし、崩壊も止まることはない。其方が無駄に辛い思いをするだけじゃ。』
(そうですよね…そんな都合良い話は無いですよね。)
『なんじゃ?死んだことは受け入れたんではなかったのかの?』
仙人が雅をからかう。
(すみません…仙人様の力って凄いんだって理解したら、つい欲が出ちゃって…。ごめんなさい。)
素直に謝る。
『甦らせる方法もあるにはあるがの。其方の肉体は死して時間が経ちすぎた。実際死して直ぐなら其方を戻す事も出来たじゃろうが…すまんな、巡り合わせじゃ。』
(いえ!仙人様が謝られる事など無いです!アタシが欲を出したのが悪いんです!ホントにすみません!)
謝る仙人に慌てて又詫びる。
『そうか?ならば話の続きじゃ。』
アッサリ切り替える仙人。
『其方に現実に姿形を与えて、その者達の前で直接話をするやり方なんじゃが、あんまり薦められんのう。まず大騒ぎになるわな。』
確かに。雅でもわかる。
『これ以上の混乱は其方の望むことでは無いであろう?』
雅は仙人の問いかけに頷く。
(はい。)
『フム。では他の方法じゃな。何か物を使って気持ちを伝えるのは現実的では無いの。変に怯えさせるかもしれんし、大体其方の言葉かどうか、まずそこが疑わしくなるからのう。と、すると…。』
(何かありますか?)
『ある。まぁよくある話じゃが、あやつ等の精神に語りかけるやり方じゃな。【夢枕】…聞いたことは無いかの?』
(【夢枕】ですか?いえ…。)
『あやつ等が見ている夢に其方が顕れて、語りかけるんじゃ。実際人が死んだ際、その者と親しい者が見たりする。そう珍しいもんでもない。其方の望みに一番合うとるやり方じゃないかの。』
(夢で語りかける…。)
『そうじゃ。【夢枕】ならば怯えさせる事もなく、精神に直接語りかけるから、あやつ等も聞き入れやすくなると思うぞ。』
(そうですね。理想的かも!)
『フム。決まりじゃな。誰の夢枕に立つか、其方は考えているかの?』
雅は考える。
(これって一人にしか出来ないのですか?)
『いや、ワシが力を貸すし、別に何人でも構わんが。但しあんまり多いのもどうかの。それこそ怯えさせる事にもなりかねん。』
(そうですよね。家族と先輩には伝えたいからなぁ。家族は全員一緒に話したいんですけど、可能ですか?)
『また難儀なことを。まぁ一時でも家族全員が同時に眠る事が出来れば可能じゃな。だとすると、家族全員で1回、先輩とやらに1回…2回で良いかの?』
(同時に眠るか…大丈夫かな?)
仙人が悪巧みをするようにニヤリと笑う。
『ワシに任せておけ。例え起きておっても、ちょちょいと眠らせてやれば良いんじゃ。夢枕を見せるのには一時あれば良いのじゃからな。』
(…少し心配なんですが…背に腹は変えられないしぁ。そこは仙人様にお任せします。)
雅は仙人の楽しそうな顔に些か不安を感じたが、考えないようにした。
悪いようにはしないだろう。多分。
『後はいつ夢枕を行うか…じゃの。それについては、ワシから其方に言わねばならんことがある。』
(何でしょう?)
仙人は今の碎けた調子から、スッと真面目な顔になる。
『出来れば其方の肉体が荼毘に付される迄に夢枕を行うが良い。というか、そうするんじゃ雅よ。』
(え、何故?)
仙人は目を閉じて暫く考えていたが、目を開けると雅に言った。
『…其方をこの世界より別の世界にワシが連れていくからじゃ。雅、其方を守るためにな。』
次話は明日か明後日に投稿します。




