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ファンタジークエスト  作者: 里山
三章 はじまりは唐突に

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くえすと39


 その日ジパングの西側の海岸線で大陸から押し寄せる敵との戦いの火蓋が切って落とされた。


 攻め込んできた人数は当初の予想を大幅に下回る一万強だと思われる……なぜ思われるというのかというと作戦の一角で在るハカタ湾防衛網を襲った敵が数時間もかからず全滅してしまうからである。しかも半数以上が遥か沖合で船が大破したため溺れて死に戻りしてしまい人数が把握できなかったせいもある。

 

 ハカタ湾防衛戦と言われるこの作戦に参加したプレイヤーは後にこう語る。

「敵の船が見えたと思ったら事前に聞いていた数の半分くらいしかいなかった」

「超可愛いメガネっ娘エルフが一人でやってくれた」

「数十隻は近海までたどり着いたんだけど酷い物見た……あれは敵が可哀想だった」





 遡ること決戦前夜


「あ~あ~皆さん聞こえますかー」

 壇上ではこの作戦の指揮官であるライデンが習得したばかりの音声増幅魔法をつかって話を始めていたが。

 ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ

 ここ金印島、リアルで言うところの志賀島に集まった約5000人のプレイヤー達は思い思い準備をしている最中なので全くといっていいほど聞いていなかった。まあ俺達もだけどな。


「おーい皆準備は大丈夫かー?」

 俺はPTメンバーに声をかける。

「私はだいじょぶだよ~」

 と新しい装備品のメガネを掛けたリリィが答える。このメガネはアーチャー系には必須なスキル〈ホークアイ〉の効果を1.5倍に引き上げるというチート級の装備なのだが如何せん顔が隠れない事と。

「お前ホント似合うなそのメガネ」

 可愛さが更にアップしてしまうのでこういう非常時以外は絶対につけたら不味そうな装備である。流石にここに集まってるプレイヤーはナンパ目的でゲームをやっていたわけじゃない奴らが大半なので滅多なことじゃ声は掛けられないがそれでも結構な人数から声をかけられていた。

「えへへ~ありがと」

 いやぁ照れるなぁと言いながら照れ隠しなのかクリスとじゃれてるリリィの隣で。

「私は特に準備するものもないし大丈夫よ」

 とは委員長もとい、メガネっ娘撲殺プリーストのラピス。だがその服装は今は動きやすそうな初心者魔導師ルックである。何故こんな装備に成ったかというと「ウィザードと思われたほうが遠距離では警戒してくれるし近距離では油断してくれるでしょ?」とトゲ付き杖を撫でながら言っていた。怖いよう。

「じゃあ明日は後方遊撃宜しくな」

「私の出番があればね……無さそうなら前に出るけど」

 どんだけ殴りたいんだよお前は。とは言わない、言ったら特訓といって殴られるから。

「私の方も打ち合わせは終わったわよ」

 そう言って何やらゴテゴテと指輪やらティアラやら首輪やらを付けたシオンが言う。

「そっか何か海でやってたけど何やってたんだ皆で」

「ふふふ、それは明日のお楽しみ……素敵な音色を響かせてあげる」

 何やら怖い笑みを見せるシオン。何やら大陸の人に色々と思うところがあるらしい。海賊版がとか違法コピーがとか違法DLがとか言ってた、歌手って大変なんだな。

「まあ頑張ってくれたまえ」

 その迫力に押されつつそういった俺の横にいつの間にか立っていたイノリが。

「私はいつも道理なんで準備の必要も無いですよ」

 とそれこそいつも道理の微笑みを見せる我が妹、うむ、いつも道理ラブリー。

「そっか明日は頑張ろうな」

「はい兄さん」

 そう答える妹の頭をぽむぷむと撫で話が佳境に入っている壇上に視線をやると。

「ということで明日は皆全力全開で行くぞーーーーーーー!!!」

「「「「「「「おおおおおおーーーーー!!!!!」」」」」」

 最後だけは皆無駄に合うんだよなぁ。



 そんな風に俺達がのんびりしているこの時海上では警戒を強化した海大好きっ子ギルドが総出で敵の誘導にあたっていた……らしい。




 そして翌日、日も昇ってない頃、寝込みを襲おうとしたのか海上を警戒していたギルドからの緊急連絡が入ったらしく作戦本部が騒がしくなったかと思うと。

[後1時間ほどで敵が目視圏内に入る可能性有りとの報告、ただし暗視スキルを使っても詳しいことがわからないが水柱が時折上がっていてなにかしらのスキルの可能性有りとのこと奇襲に警戒せよ]

 そんなチャットが飛んでくる。まあこのチャットで分かる通り俺達は深夜に起きて既に準備万端待ち構えているわけだ。


 そして何故“目視県内に入る可能性”と言う曖昧な表現なのかというと、各プレイヤーで見える範囲が違うので遠距離攻撃職の平均値から目視圏内を割り出したためである。ちなみにアーチャー部隊は5000人中19人。その平均値は1.5km……つまり。

[こちらアーチャー部隊、あー本部聞こえますかー?]

 各部隊長用のチャットにリリィの声が聞こえる、ちなみに俺とイノリは前衛部隊の隊長、リリィはアーチャー部隊の隊長、シオンは魔術師部隊の隊長となっている、ラピスは遊撃PTということになっているのでその専用PTに入っている。ちなみに隊長達用のチャットは攻城戦などの大規模戦闘用に作られた簡易チャットを使用している。前衛隊長は俺とイノリを含めて30人ほどいて、アーチャーは1人魔術師は2人隊長がいる。

[こちら本部、アーチャー部隊は敵を発見したら攻撃を開始してください]

[あ~それなのですが……もう射っちゃってます、すみません]

 だろうなーと思う俺達ギルメンとは違い。

[え?]

 と固まる他の隊長たちと作戦本部。

 もうすぐ一般的な目視圏内ってことはリリィからすると“射っていいよね? まだ? えーまじでー”と言う距離だから……多分報告にある水柱は敵の船を外れて海面に着弾してるリリィの矢だと思う……。

[今のところ10隻は沈めてると思いますが暗くてちょっと正確な数字がわかりません]

 と言う若干余所行き口調のリリィの声が思考の中で響く中少し高台に位置してるアーチャー&魔術師部隊の待機場所から時折瑠璃色の闇に解けた何かが放たれている。


 それに気づいたのか他の隊長陣から。

[何だそれ、どういうことだよ]

[弓ってそういう物なの?]

[俺の知ってるアーチャーと違う]

[まあ剣で戦う弓兵も居るしなハハハハハハ   はぁ……]


 まあそうなるよなぁと言う俺の思考を打ち破るように。

[ちょっとリリィ、私の獲物も残しておいてよね]

 と言うシオンの物騒な声が聞こえるがそれを聞いた他の隊長が。

[こんなのシオンちゃんじゃない!]

[いやこのシオンちゃんもなかなか]

[シオン様踏んでください]

 何か良くわからないことになっていた……芸能人って大変なんだな。

 

 ココに来てから数日経ったわけだけど面倒くさいのか目隠し無しでシオンもリリィもいたため最初は色々と大変だったがあの一応戦力確認という名目で行われた紅蓮団との一戦に始まりその次の日の模擬戦で俺達のPTが殺戮の限りを尽くしたせいもあるけど――お互い身内に近いPTメンバーを殴って刺して焦がしてた俺達的に赤の他人を同じ目に合わせるのに何の迷いがあろうか――それにより近づくものが激減、近づいてくるのは純粋にその強さに惹かれたものでありそういったプレイヤーは相手が美少女エルフだろうが芸能人だろうが割とどうでもいいと言う人種だ。


 まあそんなこんなでシオンは現在色んなアミュレットが追加されたせいもあり目隠しは取ったままである。ちなみにアクセサリーは有志による貸し出しである。通常この手のアイテムはかなりのレアなのでそうポンポン貸してはくれないのだが「シオンが付けた装備なら更にレア度がアップ!」とばかりに言ってもないのに我先にと持ち寄ってきた。そんなことを考えていると。

[シオンさん広域魔法はくれぐれも注意してくださいね]

 と愛しのラブリーシスターの声が聞こえる。すると。

[巫女さんキター]

[アックスにこんな可愛い妹がいるわけがない!]

[アックスさんお兄さまと呼ばせてください]

 などという声が聞こえてくるがさくっと無視。

[あーあーこちら本部お前ら少しはまじめにやれよな、それはそうと敵の逃走を阻むために敵の後ろに味方の船が回り込み始めるようなのでアーチャー部隊は気をつけてくれ]

[了解です]

 うーん久しぶりに聞くリリィの丁寧語は……馴染めないなぁと思うのは身内だけである。他の連中的には。

[リリィたんまさにエルフ]

[おしとやかなリリィたん萌え]

[リリィたんに射抜かれたい]

 などという始末である……さっきまでテントで腹出して寝てたなんてとても言えない。なかなか起きなくて肉を口に放り込んだら起きたなんて言えない。

 

 そうこうしているうちにそのリリィから本部へと連絡が入る。

[敵のアーチャーが構え始めました警戒を、それとこちらの射程に入ったのでこれからアーチャー部隊は全力射撃に入ります]

[了解。各隊長聞こえたな、俺達の国を守るぞ]

[リリィたんはぁはぁ]

[シオン様あなたは私が守ります]

[巫女さんのおしりは俺が守る]

[はぁ、まあいいから勝ちに行くぞ]

 そう言う指揮官の声が聞こえる中うっすらと夜が明け始めた空に一斉に放たれた矢が吸い込まれ敵陣の上空に無数の雨となって振りかかる。

「おおおお」

「すげー」

「これ俺達の出番あるのかな?」

 と周りからどよめきが聞こえる、それもそのはずである基本狙撃に特化しているリリィの中途半端な〈サテライトアロー〉でも今では30本くらいの矢が降り注ぐのだが普通の弓使いは狙撃できるほどの腕が無いため逆に面制圧に長けるこのスキルのLvを上げる傾向にある。つまりリリィを除くアーチャー部隊は一人ひとりが100本近くの矢をかなりの広範囲に降らせるスキルになってしまっている。つまり目の前に広がる光景は水柱というか何というかさながら海面が沸き立つようなそんな光景が広がっていた。このまま行けば本当に出番がないなと思ったが流石にそうはいかない、スキルはスタミナを使う、したがって。

[アーチャーより本部スタミナ切れのためしばらく射撃ができませんあとはお願いします]

 そう言う声が聞こえるやいなや。

[まかされた!]

[きみのためなら死ねる]

[疲れたリリィたんハァハァ]

[あーこちら本部了解した、しばらく休んでくれ]

 そんな本部の声が聞こえると同時にタイミングを見計らったかのように。


[こちら魔術師部隊作戦開始までカウント30、前衛部隊死にたくないなら海にはまだ入らないでちゃんと作戦道理にやって]

 シオンの声が聞こえウィザード部隊に視線を向けると、アーチャー部隊が場所を譲った丘の先端でライトエフェクトを放ちながら華麗に詠うように、そして舞うように詠唱するシオンとその横に並ぶウィザード達もゆっくりとシオンと違う魔法を詠唱を開始した。

 しかし詠唱しながら思考チャットするなんてことよく出来るなぁ……歌手ってスゲー。歌手関係ないって?

 

 


 そしてカウントゼロが告げるその瞬間シオンの声が戦場に響き渡る。


「〈フリージング・ヴォルト〉!!」

 それは少し前にリリィたちから聞かされていた湖を凍らせたというシオンのアレンジスキル、だがそれからスキルLvを上げステータスを上げそして数十のレアアミュレットでブーストされたその技は。

 明け始めた世界が一瞬で闇に染まったかと思えば上空から降り注ぐ無数の雷にも似た氷柱達が海を凍らせ始めるズガガガガガガと響く氷柱の着弾音とそこから凍り始めるバキバキバキバキと言う音が戦場を支配する中俺はずっとシオンを見ていた。いや俺達は見ていた。このスキルは自分のスタミナが尽きるまで氷柱を振らせつつけることができると言う特性があるのだがスタミナの消費が半端無く大きくあっという間に空になってしまう、なのでそれを補うためにシオンは貸し出された一つのアミュレットを身に着けている。『生魂の指輪』と言われるそのアイテムはスタミナポイントが減るとヒットポイントを消費してスタミナポイントを自動回復すると言う物だ。そう聞くとなにそれ便利すぎ、と言われるが今の仕様ではそれだけ痛みが続くということに成る。しかも今シオンは専属のプリースト数名による無限回復を行なっている。

「シオンちゃんがんばれ」

 そう誰かの呟く声が聞こえた……ライトエフェクトの激しい輝きに若干阻まれてはいるものの今のシオンの格好は酷いものである全身から出血エフェクトを発生させ服を血に染めそれでも集中を途切らせる事無くスキルを発動し続ける。

 それを見守る俺達は何も言わずその姿を刻み続ける……刻み続けるんだけどさっきからギルドチャットで「いたたたたたたたた」「やっぱこれきついいいいいいいいいいい」「調子に乗ってこんな作戦提案するんじゃなかったあああああああ」などという声が聞こえるので身内達は随分と冷めた目で「意外と余裕そうだなぁ」と眺めているだけだったりする。

 だがそんな事を知らないその他大勢は。

「シオンがんばれえええええええ」

 だの。

「もういいよあとはまかせてっ!」

「シオンちゃんの死は無駄にはしない!」

 などと何やら盛り上がってる……芸能人マジすげー…え、もういいって? ちなみに後から聞いた話によると普通に氷系の魔法のほうが凍らせる速度も早いし燃費もいいらしい。じゃあ何故このスキルなのか聞いてみたところ「格好いいからに決まってるじゃない」との事。駄目だこいつ。


 そんな中、雷鳴と共に着弾音が突如消え、静まり返った世界に映るのは一面の氷だった。

 一瞬あっけにとられた敵味方だったが、直ぐに立ち直った敵は氷に挟まれ動けなくなった船を捨て氷の上を滑りながら陸を目指そうとした。その数十秒後程よく船から氷面に降りたのを見計らって魔術師部隊の無情なる一撃が数十の重なる声とともに発動する。

「「「「〈サンダーレイン〉」」」」

 明るさを取り戻していた世界をまた闇色に染め今度は本物? の雷鳴が木霊し世界に黄金の軌跡を描き、凍った氷面に着弾するとスキルの効果が作用し凍らせた物体を元に戻す――ちなみに今回のように視線が通れば魔法は使えはするもののアーチャーの様にホークアイが在るわけではないので狙いはかなり大雑把になる。


 さっきまで氷面だった足場がアチラコチラで魔法の干渉により海面に戻りその上にいた敵はそのまま海中へとダイブしていく。そしてそこに降りそそぐ雷鳴。

「うわぁ……まさに地獄だな」

 そんな呟きが先ほど「シオンちゃんがんばれ」と言っていた奴の口から漏れ聞こえてくる。

 それから数秒響き渡った雷鳴は止み静寂が戻った。そこに。

[後は任せたわ……]

 弱々しいシオンの声が聞こえる…え? 演技派女優でも目指すの? と俺が思った瞬間。

「やろうどもいくぞおおおおおおおシオンの犠牲をムダにするなああああああ」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

「シオンちゃんの仇ぃいいいいいいいいいいいいいいいい」

「てんちゅううううううううううううううう」

「ぬっころおおおおおおおおおおお」

 こうかはばつぐんだ!

 気づくと俺の指揮下の幾つかのPTも我先にとなんとか浜辺に辿りついた敵に向かって突撃していった。


[あー前衛部隊のアックスですけどー敵は後どれくらいですかー?]

 と本部に確認をとってみる。

[え? あ、あーえーと味方の船からの情報によると今の攻撃を食らってない船が50隻程度人数にして多くて1000人位と思われる]

 なるほど用心深く後ろで待機していたか……ならそれが数少ない精鋭部隊ってわけかな。

[了解、各隊長はそれを念頭に置いて回復が必要になったら早めに交代しろよー]

 そんな俺の注意を聞いてるのかわからないが前衛チームはやる気に元気に駆けていく……一部を除いて。


 その頃後方支援のプリースト部隊のさらに後方1人と1匹はのんびりと森の中を歩いていたらしい。




「暇ね」

「がう」

 私のPTは後方支援の更に後方で普通に湧いてくるモンスターを倒す簡単なお仕事。ほんとに簡単すぎて今はのんびりとお散歩中よ。

「それにしてもさっきのは凄い音だったわねシオンのアレンジスキルだと思うけど、聞いていたのより凄かったわ」

「がうがう」

 ここから戦場は見えなくてもあの音と空をいきなり覆った雲は見えた。アレだけのスキルだしもう決着はつきかけてるのかな? とそんな事を思った瞬間。

「ぐるる」

 クリスの様子が変わった、明らかに何かを警戒してる、この付近ではそんなに高Lvのモンスターは出ないはずなのに。そう思いながら杖を握りしめる……。

「がうっ!」

 吠えてダッシュしたクリスの向こうに人影が見える。MAPで確認するもそこに味方はいない――後方警戒は専用レイドPTの為後方に居る味方は全部MAPに表示されているの――ならば。

[緊急。後方で敵らしきプレイヤーと接触、迎撃に入ります]

 レイドチャットにそう報告して同時にクリスが向かった方向と逆の方向に向かって自己バフをかけながらダッシュする。今のが斥候だとしたらあいつの逃げた反対側に本隊が居るはず……まあ何も考えずに味方の方に逃げる可能性もあるのだけど。森の木々を半島の南側の海岸線に出るそこで、見つけた。

[敵複数発見。見える範囲で10名、どうやら泳いで上陸している模様これから遅滞行動に出るわ応援よろしく]

 レイドチャットにそう言いギルドチャットに切り替える。

[リリィ仕事が済んだら直ぐにクリスと合流して。敵と交戦中のはずよ]

 と言う声にリリィは驚きの声を上げる。

[え? うそっ! 後ろから来てるの?]

[ええ、私は別の奴らの足止めを今からするわ]

 それに答える私、そしてすかさず最善の提案をイノリさんがしてくる。

[兄さんこっちは大丈夫なようなので私のパーティも向かいます、私達の方が後方部隊が行くより早いです]

[解った勝手に死ぬなよ二人共]

 そこに若干元気が無いようなシオンの声。

[わ、わたしも行く]

[シオンはもう少し休んでろ、結構きつそうだぞお前]

[そ、そんな事ないわ余裕よこんなの]

 クリスのことが心配なんでしょうけど確かに辛そうに聞こえるわね。

[いいからお前はじっとしてろ、まだ敵の主力が残ってるようだし、頼りにしてるぞ]

[わかったわよ、そこまで言うなら仕方ないわ]

[こっちは1、2分でクリスと合流できそう]

[早いな]

[結構近くまで来てたからね、なんとか奇襲は回避できたって感じかな]

[解った本部に場所を知らせて前衛部隊を送ってもらえ、その部隊と入れ替わりでお前は持ち場にもどれクリスも連れてけ]

[解った、だけど]

[どした?]

[時間をかせぐのはいいが、別にアレを倒してしまっても構わんのだろう?]

 意外と余裕みたいねリリィの方は。

[お前は1回がつんと痛い目にあったがいいんじゃないか?]

[ひどいなおい、昔酷い目にあったじゃないさ……まあ適当に頑張るよ]

 

 そんな声を聞きながら敵の動きを木陰から伺っているとその内の1人が視線をこちらに向けた。この距離で!?

[見つかった、高レベル索敵スキル持ちがいるわ]

 こっちを認識したと同時に走り寄って来る敵に木陰から一気に姿を表して杖を向ける。案の定私の格好と杖に騙されてくれた。魔法が来ると思った敵がサイドステップした着地地点目掛けて杖を構えてスキルを発動する。

「〈フラッシング・ペネレイト〉!」

 グショッ! と言う音と派手な出血エフェクトを伴って吹っ飛ぶ短剣使い。なるほど今の一撃で死なないってことは結構Lvが高いのね。ちなみに槍などと違いトゲ付き杖だと刺さらないようよ。威力が上がると解らないけど。

[後40秒で着きます]

[流石早いですね]

 イノリさんにそんな言葉を返しながら何やらうずくまってもがいている短剣使いにトドメの一撃をグショッっと入れるとパキンと砕けちりマーカーが浮かぶ。

[速さしか取り柄が無いですから、でも他の皆がついてこれてないですけど]

 援軍は後40秒来ない。それまで持たせられるか……愚問ね、死ななければ私の勝ちよ。と薄く笑う私と対照的にいきなり襲ってきたのが女とわかって下卑た笑いをする男たち。そんな奴らに向かって。

「貴方達日本人じゃないわね」

 そう声をかけた私にシミターを構えた男が返事をする。

「だったらどうした、御相手してくれるのか?」

 と翻訳エンジンが頑張って綺麗な日本語に直してくれる。凄いわね本当に。

「いいわよ相手してあげる、一人ずつにする? それとも……」

 私が言い終わる前にシミター使いの後方で男が呪文を発動させる。

「〈サンダー〉」

 スタンを狙ったのか、はたまた速度の速い術で気勢をそごうとしたのか放たれたスキルは私の遥か左後方の木を焦がすが、その時には私はサイドステップから思考発動のペネレイトを使ってさっきまで話していたシミター使いの側に跳び顔面に向けて杖をフルスイングする。

 グショッ!

「ふぎゃっ!」

 という打撃音と悲鳴と共に振りぬかれるトゲ付き杖。そしてその場で仰向けに倒れこんだシミター使いに止めとばかりに杖を振りかざし。

「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪」

 と時折グショっと言うあいのてを交え歌う私を遠巻きに呆然と見つめる残り8人。やっぱりこの歌は捗るわね。

「あら後ろからは来ないの? 意外と正々堂々なのね」

 パキンとマーカーを残して粒子になって行く元シミター使いから振り返りそう問いかける。

「な、なんでサンダーを避けれるんだよ」

「そんなの簡単じゃない、でも教えてあげないわ」

 実際簡単なのだが教えてあげる義理はない。言ってしまえば指した所に着弾するんだからその軸線から逃げればいいだけのことなのだけど。対人慣れしてなくても意外と知ってそうなんだけど? でも最近のシオンの場合はそれを見越してフェイント掛けてくるのよね……。

「くそ! 一気に行くぞ!」

「おお」

「死ねええ」

 そう言ってダッシュする男。それに合わせて視界の隅のMAPを確認した私は棒術スキルを発動させる。

「〈爆砕〉!!」

 このスキル簡単に言うと突いた物が爆発するのだけどレベルによって爆発させれるものが変わるため私のスキルLvではまだやわらかいオブジェクトくらいしか爆発させれない。だけど今はそれで十分だった。目の前の砂浜に向かって打ち込まれた〈爆砕〉はそのまま地面の砂を巻き上げ視界を覆うそして私は全力で真上に跳ぶ。土砂に向かってきていた男たちはそのまま土砂にツッコミそして。

「〈フラッシング・ペネレイト〉!」

 本人的にはテッテッテーと言う祇園で表される神速の速度にスキルのブーストをまとった巫女さんを見たところで多分その男たちは粒子となって爆散した。

「凄いですね、一撃で8人なんて」

「この技貫通属性ですし、それにカウンターで入りましたからね」

 そんな話をしているところに他のメンバーがたどり着く。

「イノリさん速過ぎです何であんな速度で森の中走れるんですか」

「AGI的にはそう変わらないはずなのに……本人の適正なのかなぁ」

「わけがわからない」

 等の不満がイノリさんのパーティメンバーから聞こえてくる。

「慣れですよ慣れ」

 と言っているイノリさんを横目にレイドチャットを繋ぎ現状を報告すると。

[ラピスです、こちらは片付きました]

[こちらウォルス。今リリィさんの援護につきました他のメンバーは予定道理北東を索敵中]

 レイドPTのリーダーのウォルスさんからそんな報告が返ってくる。

[了解]

「今うちのPTは北東を索敵中のようです」

「そうですか、じゃあわたし達もお手伝いしましょうかまだ居るかもしれませんし」

 とイノリさんが言ってくれたので。

「では南東をお願いします」

 そう言って周りを確認した所あたりに浮かんでいたマーカーは消えていた。どうやら帰ったようね。

「その前に本部に連絡しときますね」

 そう言ってチャットに集中していたイノリさんの顔色が眼に見えて変わる……流石ゲームね。などと思える状況じゃないようね。

「何かあったの?」

「兄さん達が……」


こまけぇこたぁいいんだよ


そればっかりだな

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