表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファンタジークエスト  作者: 里山
三章 はじまりは唐突に

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/52

くえすと30 主人公は遅れてやってくる

デスゲームが始まって数十日目、予定では今日中に太宰府政庁の街に着くはずだ。


 何故そんなに時間がかかったかって?

 まず、ラピスの軽いLv上げに一日、その後に痛みの特訓をしながら旅を始めたわけだが途中台風の直撃を食らったり、このゲームをやり始めたばかりのラピスに基本的なことを教えたりしていたらこんなに時間が経ってしまった……。


 まあ、お陰でラピスのLvは現在三十台に到達した。俺が知るかぎりトップクラスに速いレベリングだ。何故そんな事になったかって? まずパワーレベリングは面白く無いからっていう考えは今のこの世界ではナンセンスだ、実際の命がかかっていて楽しくないとか言っていられない、それにラピスはプリーストだ、つまり俺が一撃で敵を倒しても経験値が入る、但し実はPTを組んでいるだけじゃ経験値は入らない、プリースト側から俺の戦闘が見える範囲じゃないとダメなわけだ、なぜプリースト側かと言うとダメージディーラー側から見えればいいという理屈だとそれこそリリィと組んだりしたら五キロくらい離れてても大丈夫ということになってしまう。


 しかしパーティは五人でも実際は二人パーティ状態の俺達の場合プリーストだけ放置して俺が戦闘してると後方で襲われるかもしれないので色々考えた結果ラピスを背中にしがみつかせて――首にぶら下がってとも言う――戦うという謎の戦い方で一日でレベル二十まで上げることに成功した。


 ただこのゲームの場合レベルが上がればスキルを覚えると言うわけではなくヒットポイントとスタミナに補正が付いてステータスボーナスポイントを貰えるだけである。

 つまり呪文詠唱系の職は実は最初から最強呪文を唱えることができる。但し威力はレベルによって装備制限がある杖と下位呪文のスキルレベルが関係してくるので滅茶苦茶長い呪文を唱えてもお花さんを倒せないという事もある。


 そして今度は下位呪文のスキルレベルが上がってしまうと長ったらしい最強呪文よりサクッと出せる下位呪文のほうが使い勝手が良くなりそれしか使わなくなるという感じで魔法使いが下位魔法だけしか撃たないということになってくる。

 聞く所によるとシオンは上位魔法をポコポコ打てるらしいがどんなもんなんだろうなと思っていると。


「どうかしたのかしらアックス?」

 斜め前を歩く瑠璃色の修道服のようで若干アレンジの効いた服を華麗に着こなすプリーストが軽く振り返りながら俺に問いかける、しかしゲーム世界でよく見るプリーストの服はどうして左右にスリットが入っているあのデザインなんだ? 最高すぎるんだけど、問題はパンチラしづらいトコだな……と言うか見えない。


「いやラピスもこの世界に慣れたなぁと思ってただけ」

 と適当に返事をする。

「そう?」

 そう言いながらトゲのついた杖を背中から外して。

「そうね」

 と呟いたりしている。


 そう、出会った時に持っていたトゲ付きのメイスに見えたアレも実はトゲ付きの杖だったらしい……このゲーム作った奴はどういうセンスでこの武器を作ったんだ?

 その杖を見て分かる通りラピスはプリーストはプリーストだけどその杖で相手をぶちのめす事もできる、そしてプリースト特有の回復系のスキルも普通に使える。


 昔のゲームで殴りプリーストという物があったらしいがアレはステータスの関係で回復魔法がちょっと弱くなったりしてたみたいだけどこの世界だと基本的な動きは本人に依存するので華麗に敵をボコりながら回復魔法をかけるのも思いのままというわけである。


 そしてこの杖、多分ウィザードの杖もそうなのだろうがシステム的には実は『棍系』扱いらしく普通にスキルが設定されている。これには俺も驚いた、というかこの世界でプリーストをやっている奴の大半が前衛なんて怖いってやつばかりだろうから殴るという概念が存在していなかったんで誰も気づかなかったという方が正しい、特にデスゲームとなった今では……。まあ昔の知り合いに普通に杖で殴ったりしてる奴は居たけどスキルを使ってるのは見たことなかったなぁ……スキル無しでも強かったからなあいつ。


「アックスあれ」

 と、メガネをくいっとしながら杖で指したその先にいかにも政庁と言わんばかりの街並み? が見える……眼下に……あれ?

「なんでこんな所に崖があるんだ? しかもすっごい高さ…」

「だから聞いたじゃない、地図のこの表示は何? って、そしたら貴方“そんな物はいけばわかる”とか適当に答えてたじゃない」

「ごめんなさい」

 ふ、今までそんな事気にしたことなかったからな、それにしてもメガネがやっぱり良く似合う――倉庫の中で眠っていた上部の縁無しピンクのメガネを無理やりプレゼントした時は変な目で見られたが――若干フレンドリーになった喋り方と相まって色々やばい、痛みの特訓の時なんかマジで何かに目覚めそうになった位だ、だって想像してくれプリースト姿の見るからに委員長がメガネを光らせながらトゲのついた杖で「この位で音を上げるの? 全くだらしないわね」とか言って殴りつけてくるんだぞ?

「で、どうするの?」

 ちょっとトリップしかけていた所にラピスの声が聞こえる。

「んーまあこの高さなら落ちても大丈夫だろ? ヒットポイント減ったらヒールよろしくな」

「はいはい、わかりました、では私から行きますね」

「え? いや俺から降りて受け止めるよ」

「大丈夫よ、貴方の魂胆はわかっているから、覗く気でしょ?」

「何をおっしゃるウサギさんそんな横縞な気持ちはありませんよ?」

「今、字が違わなかった?」

「キノセイデス」

「そう、ならいいわ、お先に失礼」

 そう言ってヒョイッと空中に身を躍らせる彼女を呆然と見つつ。

「鋭いな……だがまだ甘いわ! 空気抵抗を減らせばまだ逝ける!」

 とぅっ! と水泳のスタートのように地面に向かってダイブする。

「居た! 追いつ……い、あれ?」

「どうかしたの? そんなに急いで」

 ティータイムの語らいのような優雅さで声を掛けてきたラピスはその姿もティータイムのようだった……和風の方だけど。

 そう彼女は器用に正座した状態で落ちていた。


「いえ、なんでもありません」

 しくしくと涙を流しながらそう答える俺に。

「そろそろね」

 そう言ってクルッと後方に回転したかと思えば地面を背にして杖を構える。

 なにしてるんだろうと一瞬考えた次の瞬間彼女の杖が動き出す。

「〈ペネレイト〉」

 小さいがよく通る声でスキルが叫ばれ起動する。だが何故? と思った瞬間ラピスの体が上空へ空を蹴って加速する。そう重力を無視して。

「……その発想はなかったな」

 落ちている俺とは対照的に空にむかって駆け上るラピスの背中を見ながら俺は感心していた……そしてそれが俺の覚えている彼女の最後の姿だった……。

 

 


「ねえ、それだと私が死んだみたいじゃない?」

「……」

 何か聞こえる。

「どちらかと言うと貴方の方が死にそうだと思うのだけど?」

 痛みが酷すぎて思考することさえできない……微かに認識できるヒットポイントバーは残り一割を切っている、ドラゴンに踏まれても一撃ではそんなに減らない俺のヒットポイントがこんなに一気に減ることはなかったためこの痛みは予想外だ――高所落下によるダメージと背中から落ちたためクリティカル判定、しかも頭を打ってる、平たく言うとゲーム的回避補正が全くかかってない状態――これはヤバイと感じてるとポワンと温かいものに包まれる。

「〈ヒーリング〉」

 ヒール系列のスキルでヒールとは違いヒールの四分の一の回復量を二十秒間毎秒持続して回復してくれる優れ物だ。

「ふぅ、ありがとほんとに死ぬトコだった」

「いえいえどういたしまして、こんな事で死なれたらあの子になんて言われるか」

「それは置いといてさっきのは凄いなアレは思いつかなかった」

 今までだと適当に落っこちてから回復させればいいや、というノリだったためわざわざ落下ダメージを減らそうと考えたことがなかったが痛みが存在する今の世界だとそういうのもちゃんと考えた方がいいのか。ここら辺は下手に慣れてる俺とかより思いつきやすいし何よりラピスらしかったなぜなら……。

「そう? 空中でスキル発動できると聞いた時から色々試して見たら出来ただけなんだけど」

「研究熱心だな」

 そうなのだ、ラピスは何事も反復練習を欠かさず基礎からの応用を考えるのが好きみたいで色々と試していた、それもあってか無駄に色々なスキルを習得している。しかもどれも高レベルに成っている。リリィに言わせれば予習復習が大好きな瑠璃らしいとの事だ。

「じゃあそろそろ行きましょうか」

「そだな思わぬ所で最大規模の痛みの訓練も出来たしな」

 よいしょとめり込んだ地面から這い出そうとしたところで手が差し伸べられる。

「サンキュー」

「ん」

 ラピスに引き上げてもらって立ち上がり防具の破損がないかをチェックする、よし大丈夫そうだ、俺の一張羅に何か有っては大変だからな。


「んじゃ行きますか」

「ええ」

 そう言って歩き出したラピスの斜め後ろをいつものように歩き出す、何故この位置かというと後方からの不意の攻撃の盾になりやすいからとしか言いようがない、最初にラピスにもそう説明したのだが「そう言ってお尻を眺めるつもりね」と言われたが最近は何も言ってこなくなった。ふ、見るなと言われれば見たく成るのが人の子と言うものなのだよ、と思い最近はずっとお尻を見てるわけだが、そのお尻が突如動きを止める。

「どうした?」

「誰かに見られてる」

「オシリナンカミテナイヨ」

「貴方のその視線にはもう慣れたわ、それとは別よ」

「何っ? どこだ」

 俺は探索スキルを発動させ周囲を伺う、このスキルもデスゲームになってから更にレベルを上げたせいもあって今だと半径百五十メートルはカバーできる、ちなみにラピスは索敵は覚えているが探索は覚えていないというか剣を今装備していないのでどうやって見つけたのかは解らないが偶に“女の勘”とか言って変な物を見つけたりするからなんかそういう特技なんだろう……ここゲームの中なんだけどそういうもんでいいのかな?


[多分あっちの方向]

 と個別チャットを使い思考だけで話しかけてくる。ほんと適応早いよなぁ。

[居た、数は五人、プレイヤーだなこれは]

[多分こっちを視てる]

 この場合の視てるはスキルで視られてるってことだ。

[向こうもこっちを警戒してるだけだろ、街も近いしただの狩りかもしれない]

[そうね貴方に任せるわ]

 任せられたので取り敢えず。

「おーい誰か居るのかー」

 “何となく誰か居るかと思ったプレイヤー”を装って声を掛けてみる、しばらくするとガサゴソと森の奥から人影が現れる、三人? 見るからに高そうなゴツゴツした甲冑に身を包んだ両手剣使いに軽装の短剣使いそれに魔術師か……。

「驚かせたようだな」

 フルヘルムのバイザーを上げつつそう声を掛けてくる両手剣士とその横に短剣使いその後方に隠れるように魔術師、そして探索スキルによると俺達の後ろに回り込もうとする誰かが二人。はぁ、メンドクサイなぁ。

「いえいえ、こちらこそ急に声を掛けてしまってすみません、彼女がなにか物音がしたと怖がってしまって」

 そう言ってラピスの方を見ると。

「ごめんなさい、私怖いのが苦手で」

 と目をうるませながら申し訳なさそうにうつむく。その光景に一人呆然としていると。

[どう私の演技]

 脳内に響くそんな声。

[もう女なんて信じられないよう……取り敢えず二人後ろに回ってるから適当に気をつけてなー]

[ククク、私に後ろからなんて目にもの見せてあげるわ]

 ちなみに今の気をつけてはカウンターでやり過ぎないように気をつけてという事だ。

「ココら辺はそんなに強い敵もいないし安全だよ、ただしプレイヤーには注意しないといけないけどね」

 そう言い放つと同時に一気に踏み込んでくる両手剣士!

 あれ? スキルは使わないの? と一瞬思ったがそのまま適当に剣で受け止める、その瞬間。

「〈スネーク・バインド〉!」

 後ろに控えた魔術師が叫ぶ! それと同時に俺の足元からライトエフェクトで出来た蛇が俺の体を縛り上げる、コイツはヤバイ! レベルが低すぎて下手に動いたら解除してしまいそうだ。

「くそっ! どういう事だっ!」

 ちょっと棒読みに成りつつ叫ぶ俺に意気揚々と短剣使いが。

「さっき言ったじゃねーかプレイヤーに注意しろって、そういうことだよ」

「悪く思うなよこっちも生きるのに必死なんだからよ」

「そうそう生きるのには女が必需品ってな」

 そう言いながらジリジリとラピスににじり寄る三人と後方から忍び寄る二人の影。

「いや……来ないで」

 こちらは演技派女優のラピスさん、もうノリノリである、しかしこの状況になっても五人から人が増えないとなるとこれで打ち止めのようである。

[ん~、もうそろそろいっかこれでやっぱり全員っぽいし]

[そう、ならおひらきにしましょう]

「なぁ、これヌルヌルして気持ち悪いから外してくれない?」

 さっきまでとは打って変わりのんびりと魔術師に話しかける俺に。

「何余裕ぶってんだ? お前はそこでおとなしくしてろよお前の女を今からかわいがってやるからよう」

 との事なので。

「いや別に彼女じゃないんだけど……じゃあ勝手に解除させてもらうな、うりゃ」

 気合すら篭ってない――まあステータスに依存してるだけなんで気合は関係ないわけだけど――俺の動きであっけなくちぎれ飛ぶスネークさん達、それを見た三人は。

「そんなバカな! あのスキルはワーウルフの動きも止めるんだぞ!」

 んー、と思い出すワーウルフは確かレベル二十位だった気がする、たしかにこの辺だと強いが俺からするとスライムのほうが気持ち悪い分強そうだ……意味がわからんって?

「おっと、あんちゃん動くなよ、いくらあんちゃんが強くてもアレを見ろ!」

 ちょうど俺とラピスの中間地点で振り向いた両手剣士が後ろ手にラピスの方を指さしながらそんな事を言うのでそっちを見てみた。


 グシャァアアア、グチョオという生々しい効果音が響いたのはそれとほぼ同時だった、あまりの生々しさに顔をしかめる俺の顔を見ていた三人組の顔がその効果音によって戸惑いの顔に変わる、そして後ろを振り向いたその先には。

「あらあら、もうちょっと頑張って下さいよ私をかわいがってくれるのでしょう?」

 血塗れのトゲ付き杖をゆらゆらと揺らしながら妖艶に笑う悪魔が一人。


 デスゲームになってからエフェクトが若干変更され攻撃を食らうと血が出るようになり剣などで切ると切り傷が鈍器で殴られると凹んだりするようになった。まあすぐに痛みと傷なんかは治るのだけど血はヒットポイントを回復させないとダメージエフェクトとして残っている。

[ノリノリだな]

[こういう人達にはお仕置きが必要なんですよ]

「仕方ないですねぇもっとがんばってくださいよ~ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ~♪」

 何やら物騒な歌を口ずさみながら杖を大きく振りかぶる悪魔の姿が。

「クソッなんでコイツプリーストのくせにこんなに速いんだよ!」

「いってぇええ トゲ! やめておねがッゴフッ!」

 そんな叫びとともに殴られ続けていたシミター使いがパキンと言う音と共にライトエフェクトを伴って消えていきその場にポコンとマーカーが表示される。

 どうやらヒットポイントが無くなったようだ。こんな感じでヒットポイントが無くなるとその場にマーカーが表示される仕組みは以前と変わらない。その後も以前と一緒で経験値のデスペナルティがそのレベルの経験値の三割しかもレベルダウン有りと言う「なにそれふざけてんの?」とサポートに突撃しそうなレベルになってしまったがデスゲームの今それが逆に役にたってる面もある。プレイヤーキル、PKだ。今の俺達のようにプレイヤーに襲われた場合逆に撃退すると相手のデスペナルティ分の経験値を習得できる。これはパーティ単位で先に攻撃したほうがプレイヤーキラーと認識され攻撃された側はそれを撃退した場合そのデスペナルティ分を習得できるわけだ。しかし仕掛けてくる側は経験値は発生しない。つまりプレイヤーキラー側はされる側より旨みがあるようでない。確実に勝てる相手に対して挑まなければ大損ということに成る、そんな感じであまりプレイヤーキルは行われていないがやはり何処にでも馬鹿はいる。

 そんな馬鹿でも今の出来事で逆に冷静になったようで残り四人でラピスを囲む……あれ、俺は? と自分を指さしていると。

「くそっ! まさかこっちのねーちゃんがアタッカーとは思わなかったぜ」

「だけどコイツを動かなくしてしまえば!」

「勝ったも同然だなっ!」

「おう」

 ……あれぇ? と首を傾げる。どうやら彼らはさっき俺がバインドを破った事実を忘れているようだ。まあいっかこれも経験経験。

 ラピスは対人戦闘経験が今のところ俺しかいなかったためちょっと偏った戦い方になっているからなぁ――俺はその昔闘技場で散々しごかれたのである程度の対人経験はある。あ、闘技場っていうのは昔っからある対人戦が行えるフィールドのことだ、今となってはどこでも対人戦が可能なので多分使われてないだろうけど――まあ、ある程度の武器は俺も使えるんで武器の攻撃範囲くらいはわかるんだけど流石に魔法系はスクロールで持っていた〈ファイヤ〉〈ブリザード〉くらいしか試したことがない。

 どちらも一瞬熱いか一瞬冷たいだけなので気合で何とかならないこともないが、そう例えば……。

「〈サンダー〉!」

 そう、サンダーって「あ、やばいかも」と思った時には時既に遅く魔術師にズビシッ! と杖で指された瞬間に放たれた雷がラピスを襲う。

「ッァ!」

 言葉にならない叫びを上げ膝をつくラピス、そして。

「ふー今のは危なかったわ、アナザーなら死んでたわね」

 すくっと立ち上がりつつ事も無げにそう告げる。そっか一応プリーストだし装備もプリースト用だから魔法耐性あるのか、俺だとアレ食らうと一瞬スタンしちゃうんだよなぁ。まあ今のサンダーくらいのレベルだと平気だけど。

「な、な、なんだそりゃ! なんで今のでまだ動けるんだよ!」

 それを見た魔術師が驚愕の声を上げる、意外とコイツら対人戦やってないのかな? そう言えばプリーストがいないなどうやって回復してるんだろうこのPT? と良くみてみるとポーションをがぶ飲みしていた。お金持ちだな。と思っていると両手剣使いが。

「クソっ! 死ねぇ」

 そんな暴漢Aがよく言うセリフに数えられる物を発しながら両手剣を振り上げスキルを発動させる、アレは若干溜めが入りはするがかなりの攻撃力を誇る両手剣スキル、その名も〈グランドスマッシュ〉その名のごとくレベルが上がれば地面を切り裂く事もできる! できるんだけど……まあ発動すればね。


 そう、そのスキル名が叫ばれる一瞬前俺達の脳裏に響く声が一つ。

[二人共動かないで〈スナイプシュート〉]

 剣士が勝ち誇った顔でスキルを発動しようとした瞬間。

 スパンと言う軽い矢が刺さった音とは対照的なゴガンッ! と言う良くわからない効果音とももに剣士もろとも地面がえぐれ叫ぶまもなくエフェクトを放ちながら剣士が消えてその場にはマーカーがふよふよと浮かんでくる。

 それを呆然と見る魔術師、短剣使い、シミター使いとラピス……あーそういやラピスも初めて見るのか、てかまた威力上がってるなぁ、あいつどんな特訓してたんだ?

 とその場で唯一何が起きたかを理解している俺は着弾跡から狙撃地点を逆算してそっちの方向を見る。が、何も見えない。周りには森があるがその位置からだと木が邪魔して狙えないし着弾地点のえぐれ方からもうちょい上だから多分森の中に在るちょっと背の高い木のどれかかな。

 フリーズ状態から再起動した残りの三人組は。

「何しやがったてめえ!」

「よくもやりやがったな!」

「火炙りにしてやる!」

 そう俺に向かって言い放つ……なにそれ酷い誤解だ。

「いやいやいや俺じゃないよ? ホントダヨ? たぶんあそこら辺からね怖いお姉さんがね」

 と、遥か彼方の背の高い木を指さした時視界の片隅今指さした森の方角とちょうど直角、三時の方向の森の付近から何かマーカーが出たと思ったがシミター使いの言葉で意識が突きつけられた刃に向く。

「なにもねーじゃねーかなにいってんだコイツ頭おかしいんじゃねーのか?」

 そう言ったシミター使いの腕が付け根からもげたかと思うと俺の前にふわっと現れる黒髪の巫女さん。

「ってええええっ! 腕がぁっ! 何だコイツどっから湧いてきたっ!」

「兄さんに向かってその口の聞きよう、私が許しません」

 おお、わが妹よお兄ちゃんのことをそんなに思ってくれていたのか。なんかキャラが若干違うけど気にしたら負けかなと思っている。何故ならそれよりも重要なことがあるからだ。

「お前いつから居たの?」

「やですよ兄さん今きたトコですよ? てってって~って走って」

 おかしいなぁたぶんさっき一瞬見えたマーカーだと思うんだけど、そう思いながらマップの縮尺を見ると二百メートルを示してた。

「貴方がラピスさんね安心して下さい、もう終わりますから」

「え? いや安心も何も別に不安になんて成ってないような」

 ラピスのそんな俺も同意見のセリフを中程から全く聞いてない感じで三人組をズビシッ! と指差しつつ。

「あなた達には犯した罪を償ってもらいます!」

 ノリノリだなぁとのんびり眺めていると四次元ポケットからアイテムを取り出しマーカーに向かって投げつける、あれは蘇生クリスタル?

 パキーンパキーンと2つのクリスタルが弾けライトエフェクトとともに両手剣士とシミター使い(撲殺された方)が現れる。

「な、何のつもりだ!」

 ごもっともなことを言い放つ両手剣士に。

「先程言ったとおりです、あなた方には罪を償ってもらいますジェイルキャッスルの中で」

 ん? 何か聞いたことあるような無いような……なんだっけ? と思っていると

「なんだそりゃ! お宝でもくれるのかよ」

 英語弱いのかなこの人? と現実逃避をしているとなおもノリノリのテンションで我が妹が言う。

「そうですね、日本語で言った方が良かったですね、監獄城と」

 あー、あそこかなんかいっぱい牢屋があって“強制労働プレイが可能、貴方も奴隷の気分を満喫!” とかっていう謎の触れ込みで実装されたギルド用のお城だったけど、まあお察しの通りどこのギルドも手に入れようとはしなかったような。

「けッ! そんなとこに誰が行くかよ!」

「そうだそうだ、このまま戦ってまた死んだら速攻街で復活してやるぜ! さあさっさと殺せよ!」

 そう確かにこのゲーム転移系のスキルが無いので自発的に行ってもらわないとどうしようもないんだけど。と言う事を考えているとマップにマーカーがまた現れる……あぁ、なるほどなアレがあったかぁ。

「いえ、あなた達には強制的にあの城に行ってもらいますよ、それが嫌なら私達に勝つことです」

「へっ! 別にお前たちに勝たなくたって俺達が死んでも勝ちだからなぁ!」

 そうなんだろうけど。それなら自分たちで同士討ちすればいいんじゃね? と思ったがそれは口にせず、さぁ攻撃してこいよと挑発する五人組を眺めながらマップを見るとマーカーが俺達の五十メートル位前で停まる、そちらの方を横目で見てみるとクリスから華麗に降り立つふんわり金髪少女が一人そのまま華麗に詠い出す。


「あ、あのどうすればいいの?」

 と思わず対角線上のラピスが俺に聞いてくるので。

「ん~あと一分くらい適当に相手してて」

 投げやりに返答すると。

「わ、わかったわよ」

 戸惑いながらも了承するが相手からは攻めてこずこちらからも特に攻めないので特にすることもなく時は過ぎる。


「一分で何ができるっていうんだ? もう三十秒経っちまうぜ?」

 それを合図にしたかのように五人組の中央に魔法陣が展開される。へー早いな。

「なんだこりゃ?」

「まさか転移魔法?」

「そんな物このゲームには存在しねぇ!」

「じゃあなんだよこれこんな魔法陣見たこと無いぞ!」

 そう魔術師が叫ぶ中魔法陣はその輝きを強くし漆黒の球体が現れたかと思うと叫ぶまもない五人とともに消えていく。そして五人が消えて数秒後はてなマークを頭上に漂わせながらラピスが尋ねて来る。

「何がどうしたの?」

「どうってアイツらを監獄城に送ったんだろアイツが」

 こちらにトテトテとふんわり金髪を揺らしながら走ってくる自称アイドル歌手……シンガー? のシオンの方を見やりながら言う俺に。

「でも転移魔法は無いんでしょ?」

「そう転移魔法はな、でも攻撃魔法ならある〈ダーク・ポータル〉通称ブラックホール」

「……どんな魔法なの?」

「それはシオンから聞くといいよ、久しぶりだなシオン元気かー?」

「元気よ、あなたがラピスねよろしく」

 そう言ってつけていた目隠しを外したシオンに。

「あ、はいよろしくお願いします……あの失礼ですが何処かでお会いしたことは」

 ラピスがそんな反応をした。そう言えばチャットで自己紹介した時にはアイドル歌手って言ってないんだっけ?

「これよこの反応よ! 見なさいこの反応が普通なのよ!」

 突如として何やらシオンが言い出す。

「あー分かった分かったそれ前にも聞いたし、えっとなラピス、ざっくり言うとシオンって自称超売れっ子アイドルらしいんだ」

「アイドルじゃない! シンガーよ! そして自称じゃない!」

「あ。ひょっとして結城詩音?」

「ふ、バレちゃあしょうが無いわね、そうよ私が結城詩音よ、サインくらいなら書いてやらないでもないわ」

「別にそんなのいらないわ、ただもう貴方アニメソングは歌わないで頂戴作品が汚れるわ」

「なっなんですてええええええええええ!」

 シオンの叫びが木霊する中森の方から。

「お~~~~~い私も混ぜて~~~~~~」

 とクリスに乗ったリリィの声が微かに聞こえた。



サブタイトルなんて飾りです


作者もたまに忘れてるけど主人公ってリリィなんだよねぇ……


それはそうと影牢シリーズの新作が出るそうです…まさか出るとは思ってなくてちょっと嬉しい作者です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ