くえすと22 スーツの女性が現れた
兄さん事件です! 兄さんに声を掛けてくるスーツ姿の美人OLさんがポップしました! 倒しちゃ駄目ですよ兄さん! と一瞬錯乱しかけた私の思考を元に戻して冷静に考える。お仕事関係の人かな?
「あれ? 朱美さんじゃないですか、どうしたんですこんな所で」
「私はお仕事です、専務が忙しいので私が代わりに」
「仕事しすぎですよ。朱美さんって肩書きは秘書ですよね」
「ええ、でも秘書っぽいことはあんまりしてないですね」
「デスヨネー」
「まあ雑用全般ですね」
「専務の仕事って雑用なんですか」
「……ところでそちらの方はひょっとして彼女さんですか?」
「さらっと流しましたね。あぁコイツは、ほら挨拶」
そう言って一歩下がって話を聞いていた私に挨拶を促す。
「申し遅れました、小野莉乃と申します」
一歩前に出てぺこりと頭を下げ挨拶をする私に続いて兄さんが。
「俺の妹です」
そう付け足し。
「それは良かったお嬢様がいきなりピンチかと思いました」
「なんで?」
と言う兄さんの声を軽く無視して。
「初めまして私、双葉朱美と申します。茂さんの会社の専務秘書をやっております」
パンツルックの似合う女性はそう自己紹介すると軽く会釈をしてきました。
「おじ様の秘書さんですか、それはそれはご丁寧に、って事は今朝御迎えに来たりひょっとしていつも兄を送迎してくださっている方ですか?」
「はい、運転手もやっておりますので毎朝お迎えに伺っております」
「凄いよな俺が出社する前から働いてるんだぜ?」
「兄さん送ってもらってるのに何でそんなに“どうよ凄いだろ?”的な感じなんですか?」
「ん~どうよ毎日隣にこんな美女が座ってるんだぜ? 的な」
「あのう双葉さん、兄に変なことされたり言われたら労働組合の方に」
「なにそれ酷くね?」
「ふふふ、そうですね何かあればその時は」
「朱美さんまで酷い……」
「ですが茂さんに限ってそういう事は無いんじゃないですかね。今までも他愛のないお話はして来ましたが気に障る様なことは言われた記憶はないですし」
「ほら、どうよ俺の紳士っぷり」
「最初は座席の隅で固まっていましたし」
「ひゅ~ひゅ~ひゅ~」
「兄さん吹けない口笛を吹かないで下さい」
はぁ~。情けないと思いつつ、でもまあコレが私の兄さんですしね。と相も変わらない兄さんに安心する……あれ? 安心しちゃ駄目なんじゃないでしょうか。
「と、ところで朱美さんは仕事は大丈夫なんですか?」
話を素敵に変えて来ましたね兄さん。
「ええ、商談の方は終わりましたので今から早めのお昼ごはんです、どうですかお暇ならご一緒に」
「いや大丈夫です。まだお腹空いていないし」
そう兄さんが断りを入れると。
「そうですか専務に言えばお昼代は出ると思いますのでご馳走出来たのですが」
「もちろんご馳走させてもらいます、莉乃ご飯だ」
「……はぁ」
もう恥ずかしいなぁ。
「ふふ、大変ですねえっと莉乃さんとお呼びしても?」
「もちろん大丈夫です」
「では私のことも」
「はい朱美さん」
「ふふ」
「ふふふ」
「じゃあ取り敢えず『くうてん』に行きましょ、あっちょうどエレベーター来ますよ朱美さん、ほら莉乃も」
朱美さんと二人無駄に張り切る兄さんを追いかけるように歩き出します。
エレベーターで博多駅のレストラン街である『くうてん』に着いた私たちは色んなお店を眺め莉乃さんが「あ、おいしそう」と呟いた瞬間に「じゃあここにしようそうしよう」と茂さんが即決し「ふふ、そうですね」と私が快諾しまだお昼前でお客さんの少ない店内に入っていく。
「さてと何を食べようかなぁっと」
席についた茂さんは早速お店のローカルネットに接続した端末のホロメニューを開いて眺め始める。
「へ~もつ鍋かぁ」
その言葉に私は一瞬何を言ってるんだこの人は、と思い。
「あの、茂さんは何のお店か確認せずに決めたのですか?」
もっともな質問を私は聞いたはずだった。
「え? 莉乃が食べたいって言ったので」
それに答えに成ってない答えを返されたが……つまり莉乃さんが食べたいものならなんでもいいのかな? と私の中で解釈する。
「……な、なるほど何となくわかりました。では遠慮無く選んで下さい」
なんとかそう返して私もメニューを開いて眺める。なるほど基本はもつ鍋で後は唐揚げや串焼き等お酒のおつまみになりそうなものばかりなのね。
「では私はこのもつ鍋定食を」
「じゃあ俺もそれで」
小野兄妹は揃ってお手頃価格の定食を選ぶ……遠慮してるのかしら?
「えっと、もっとお高いのでも大丈夫ですよ、専務から搾り取りますので」
「わ、私は大丈夫です」
「お、俺もそれで大丈夫ですよ」
何やらわたわたと拒否してくる二人にパチパチと瞬きをしつつ。なるほど兄妹だなぁっと納得する。
「それでは私もそのもつ鍋定食とあと唐揚げとか色々食べたてみたいのですが一人で食べるのはちょっときつそうなので手伝ってもらえますか?」
そんな私の言葉に。
「割と喜んで」
そう答える茂さんと何やらお腹まわりを気にしつつ。
「す、少しなら」
そんな答えを返す莉乃さん。見た感じかなり整ったプロポーションに見えるのだけど気にする必要はあるのかしら?
「お飲み物は?」
「水で大丈夫です」×2
目を瞬かせてまたもや軽く驚きつつも何とか「わかりました」と答え私の端末から注文をする。決済は店を出るときに端末から自動で引かれるようになっている。
ちょうど注文し終わって端末を直したタイミングで莉乃さんが何やら恐る恐ると言った感じで。
「あのう、ひとつお聞きしたいのですが」
そう声をかけられたので軽く首を傾げつつ手振りで先を促す。
「朱美さんは兄さんのこと名前で呼ばれるんですね。ひょっとして同期の方かお友達なのでしょうか?」
そんな事を聞いてきた。この問には莉乃さんの隣で「は~この一杯のために生きてるぜ!」と言わんばかりのいい笑顔で水を飲んでいた茂さんも動きを止める。まあ、ただの同僚が名前で呼び合いはしないわよね普通……。
「えっとですね話すとややこしいのですが」
「あーいや簡単ですよ朱美さん」
何やら私の言葉を遮るように茂さんが割って入ってくる。
「答えは簡単俺と朱美さんが「付き合っていたとか言うお話ならあり得ないので真実をどうぞ」またバッサリだな妹よ」
「兄さんこう言ってはなんですが朱美さんのようなしっかりした方が兄さんと付き合う可能性があると思いますか?」
「無いな」
「ですから真実だけお願いします」
「は~い」
何やらションボリと返事を返す茂さんと、さぁどうぞという感じで一口水を飲む莉乃さん……なんだろう茂さんの周りはお嬢様も含めて変わった方が多いようですね。
「ん~一言で言うとゆりのせいかな」
そんな簡素な説明じゃ駄目なようなと莉乃さんを見ると溜息一つ吐いて。
「はぁ、何となくわかりました」
わかっちゃうんだ……。
「あれですね。“名前で呼び合ったほうが仲良く成れそう”という展開ですね」
なるほどちゃんとわかってるようですね要約するとそんな感じでした。
そういえば名前で呼ぶと言えば専務にも私は名前で呼ばれている初めは普通に苗字で呼ばれていたのだけど。この件は遡れば入社したての頃、研修と称されて私は他の社員とは別メニュー――と言うかあとから聞いた所完全事務系以外はどこも完全個人独自メニューだったようで皆が皆別メニューだったそうですが――で専務に「まず私という人間を知ってもらうことと運転技術を見せてもらおう」と宿泊込のスケジュール表を渡された時は新手のセクハラか? と思い本気でこのままやめようかとかなり悩んだ末取り敢えずやめるにしても直接言ってやろうと待ち合わせ場所に指定のレンタカーで到着すると。
「おはようございます家内の留美です」
「おはよーございますっ! えっと、娘の咲百合です!」
何やら銀髪美女と笑顔が可愛いというか笑顔じゃなくても可愛い女の子がいました。
「えっと……あのう専務一体コレはどういうことでしょう」
そんな私の中では当たり前の質問をしてみたところ。
「何が“どういうこと”なのか解らないが取り敢えず挨拶をしたまえ」
「あ、はい、すみません。私この度入社しました双葉朱美と申します。よろしくお願いします」
「あらあら若いっていいわねぇ」
「朱美さんって呼んでいいですか!」
「え? あ、はい、大丈夫です」
「じゃあ私のことも咲百合って呼んで下さい!」
「えっとそれは」
どうしたら良いのだろうと専務の方をチラッと見ると。
「君の好きにしていいぞ」
なにそれひょっとして何かの試験なのコレ? まってちょっとまってこんな時どうすればいいの? 正解が全くわからない……数秒悩んだ末。
「さ、咲百合……お嬢様」
苦肉の策で敬称をそれっぽいものにしてみた所。
「おじょうさま、これはいいかもしれない」
何やら気に入ってもらえたようで良かったわ。
「じゃあ荷物を積んで出発するか」
「あ、はい、あ、奥様私がやります」
「あらあら、ありがとうございます」
「お嬢様も私がやりますから置いておいて下さい」
そう言いながら借りてきたミニバンのハッチを開けて荷物を詰め込んでいきながら何やってんだろ私? と言う衝動にかられてきたので取り敢えず状況確認と今後の方針を確認すべく。
「専務ちょっとお話があるのですが」
そう言って奥様方から少し離れた位置で話しだす。
「なにかな? 給料は安いがちゃんと出るぞ?」
「え、あ、いやそういう事じゃなくてですね。えっと今日は研修ではなかったのでしょうか?」
「そうだが?」
あっさりと認めた……パチパチと瞬きをしつつ再度質問をする。
「宿泊研修ですよね?」
「あぁこれから阿蘇に二泊だな」
ええ、スケジュールにもそう書いてありました。
「えっと専務と二人じゃないのですか?」
「君は何を言ってるのかね、君と二人で阿蘇に行って何が楽しいんだ?」
……なんだろう凄く真っ当なことを言ってるはずなのに酷いことを言われた気がしたんだけど。
「まさか君っ! 私の体が目的か!」
「違いますっ!」
「ふう、よかった……っは! まさか君は同性愛者か!」
「訴えますよ!」
「それは困るが違ってよかった……っは! まさかロリコンか!」
「ほんとに訴えますよ!」
「すまない。まあ大丈夫とは思うが妻と娘に手を出したらその時は覚悟したまえ」
「出しません!」
「そんなに否定しなくても」
「あぁもう」
「で何がわからないのかね?」
その問に何故か息も絶え絶えに。
「え、あ、あのですね。研修でなぜ家族旅行なのかと」
「前に説明したじゃないか“私の事を知ってもらって運転技術を見せてもらう”と」
つまり家族旅行についていくことで専務の人柄を知り運転手をやることで運転技術を見るということなの? 何となく理解した私は。
「何となく理解しました」
「意外と察しが悪いな君は」
おかしいな私が悪いのかな? 察しははいいほうだと思っていたのだけど私程度じゃひょっとして社会では通用しないのかしら?
「まあそんな訳だからこれから二泊三日よろしく頼むよ双葉君」
「え、は、はい」
それから行きの車の中で専務の私の呼び方がお嬢様によって双葉君から朱美君に変更された。確かあの時も「お仕事一緒にするんだったら名前で呼び合ったほうが信頼できそうじゃない?」と言う謎提案が発端だったわねぇ……その後の研修と称された旅行では色んな観光地を巡り色んな郷土料理を食べつつ唐突に専務が農家の方と仕事の話を始め私も一緒に商談が開始されたりと波瀾万丈な二泊三日だったわね。もうあれから三年か、最初の頃は色んな人に言われたなぁ「何で名前で呼ばれてるの?」「セクハラなの?」と。一度社長に「仲がいいな君たちは」と言われたので慌てて「いえこれは専務のお嬢様に」といったところ「あー…そっかぁ」と同情の眼差しで言われた時に何か色々わかった気がした。
とまあ、お嬢様にかかればこんな感じで“傍から見ると何やら親しそうな人達”が出来上がってしまう。
そんな回想をしている間に小野兄妹は食事の邪魔になるからという事で莉乃さんが髪をまとめようとした所「あ、やってやるぞ」と言ってヘアゴムを受け取った茂さんが何故か三つ編みを編み始め最初は「何をやってるんですか兄さん纏めるだけでいいです」と言っていた莉乃さんも途中からは幸せそうに“しょうが無いなぁ”と言った表情ではにかんでいた。
「ごちそうさまです」
「ごちそうさまでした」
そう俺たちがお礼をいうと。
「いえいえお礼なら専務に言っておいて下さい」
「そうですね、じゃあお礼も兼ねて今日は張り切って作るか。じゃあ朱美さんお仕事頑張ってください」
「はい、それでは」
そう言ってパンツスーツの素敵なお尻じゃなくて朱美さんを見送ると。
「そんじゃ取り敢えずくまモン買って食品買いに行くか」
「はい」
それから俺達はおみやげコーナーでくまモングッズを買い込み流石にこれだけの量を飛行機で持っていくのは無理と悟りゼニガメと一緒に莉乃の寮に送りつける事になり駅前の郵便局から発送してもらう。値段が結構したがお土産を頼んだ人数で割ると一人数百円じゃなくて数ドルなので文句は出ないだろう。
再び駅に戻った俺達はプラプラと食品売場をうろつきつつ目ぼしい物を買っていく。というか、だご汁なんかもう鍋に入れてあっためたら完成じゃないのかこれ? ほんと至れり尽くせりだよなぁ今の食品売り場って。これで料理失敗するのはどういう奴なんだ? と横を歩く莉乃を見ると見られているのに気づいたのかこっちを見て“なんですか?”と言った表情をするんで“なんでもないよ”という風に頭を振る。つまりコレが料理を出来ない奴である。
食料品をひと通り買った所で良い感じに新幹線の時間になったので俺達兄妹は帰路についた。
帰り着いた俺達を待っていたのはお腹をすかせたゆりとのんびりとリビングで寛ぐ五ノ宮夫妻だった。
「ただいま帰りました~。あ、専務お昼ご飯ご馳走様です」
「ご馳走様ですおじ様」
「いや構わんよアレくらい。もつ鍋は美味しかったかね?」
「はい、とても」
そうにこやかに答える莉乃とは正反対に不貞腐れるのが一人。
「え~いいなぁもつ鍋~私も食べたかった~」
「お前はいつでも食えるだろ」
「じゃあ今度連れてってよ~」
「はいはい、今度な今度」
「わーいもつ鍋~」
そんな風に満面の笑みで喜ぶゆり……知らない人が見たら一瞬で惚れてしまいそうな可愛さであるが。
「もつ鍋は今度でいいからさっさとだご汁とか作ってよ」
基本は妖怪食っちゃ寝の親戚筋であるからして油断はできない。そういやあのマンガって最後どうなったんだっけ? と三つ目がチャーミングな妖怪食っちゃ寝がヒロインの漫画を一瞬思い出しかけたが。
「ほらはやくー」
と、ゆりに手を引っ張られキッチンに拉致られる事により思考を強引に料理へと戻される。
「んじゃまあチャチャッとやっちゃうからお前もテレビでも見てろよ」
「ふふ~ん、手伝ってあげよっか?」
「そう思うなら莉乃の相手でもしてやっててくれ」
「え~折角私がやる気に成ってるのに~こんなこともう無いかもよ?」
「割と無いことを願うよ」
「むー、もういいわよ」
そう言うとむすくれた顔で何やら凄く嬉しそうにこっちを見ていたがゆりがむすくれだすと酷く残念そうな顔になった莉乃の手を引きリビングから出て行ってしまう。
「さて頑張るか」
何だかんだで久々に莉乃に食べさせる料理だ、ちゃんとしたもの作らないとな。と、思考を切り替え材料に向かった。
はい、設定をまとめていたらまとまらなくてワケガワカラナイ作者です
そうだFF14やろう(あきらめ感




