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ファンタジークエスト  作者: 里山
二章 そして三ヶ月後また彼女は出会う

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23/52

くえすと21 おみやげ

本編?多分本編

 朝ごはんを食べ終えた咲百合さんとおじ様は御迎えに来た車に一緒に乗って学校と会社へ。兄さんは私の帰国にあわせて有給を取ってくれたみたいでのんびりとお出かけの準備をしている。有給なんて取らなくていいのにと言ったら取らないと怒られるんだよ……と言うか怒られたと言っていました。良い会社じゃないですかどうかクビになりませんように。

「莉乃そろそろ行くぞ~」

 半分開けていたドアをノックしながら部屋に入ってくる兄さんに。

「はい、今行きます」

 そう返事をして部屋を出る。留美さんに見送られて五ノ宮邸を出た私たちはテクテクと一路バス停を目指します。

「バス停まで遠いのですか?」

「いやもうつくぞ?」

「早すぎませんか……」

「立地条件がよすぎなんだよなあの家」

 バス停まで徒歩一分程度、と言うより住宅街のブロック一つ先を曲がったらバス停でした。そしてバスを待ちつつ端末で路線図を出してみると。

「JRまで西鉄バスで十分、西鉄まで十五分、JRで博多まで十分西鉄で天神まで二十分ですか……ほんと凄い立地ですね」

 それにしても福岡はホントに西鉄ばっかりですね……。

「あー、ちなみにそれ西鉄の方は普通電車のやつだから急行あったらもっと速いぞ」

「熊本時代とは大違いですね兄さん」

「まあ最後のほうは少しは改善したじゃん」

「あれは私が電車通学だからって無理に兄さんが駅に近いマンション借りたんじゃないですか……バイトまで増やして」

「ナンノコトデショウカ」

「はぁ、もういいです。あ、バス来ましたよ」

「お、おう」

 端末リーダーに端末をかざしながらバスに乗り込み一番後ろの席に並んで座る。そう言えばと思い出す。留学の際に高校の先生から色々聞いた話では、昔は往来の際にお金を両替しなくてはならず細かいお金の両替が実にメンドクサイと言っていました、だけど今はすべてが端末で処理されるので登録銀行にお金が入ってさえいれば円だろうがドルだろうが関係なしに使えるのです。

「それにしてもお前とこうして出かけるのも二年ぶりなのか」

「はい、なのですごく楽しみです」

「そうなの? 高校の時は“一人でいけます”とか“友だちと行きます”って言ってあんまり楽しそうじゃなかったけど」

「あ、あれは……休みの日くらいゆっくりしてて欲しかったんです」

 ソッポを向いてブツブツと言う私に。

「いやよく聞こえないんだけど……」

「もういいです、過ぎ去ったことは忘れてこれからの事を話しましょう兄さん」

「まあ良いけどさ」

「それでは早速」

「おう、どこでも連れてってやるぞ?」

「ルームメイトに頼まれたんですがポケモ◯センターって近いのでしょうか?」

「近いも何も博多駅たぞ」

「そ、そうなんですか……なら大丈夫そうですね」

 ふむふむ、日本に帰るとしか言ってなかったから遠い所のおみやげ頼まれたらどうしようと思ってましたが随分近くでした。ギリギリに言われたので調べる暇がありませんでした。

「でもアメリカにも無かったっけポケ◯ンセンター。あ、ニューヨークだけか、さすがに遠いかぁ」

「へー、あっちにも在るんですね、でもニューヨークは遠いです。東と西で正反対です」

「あとは何かあるのか?」

「えーっと、何故か皆さんくまモングッズが欲しいそうです」

「……なんかこうホントにドコでも人気者だなあいつは」

「そうですね。昔は嫌というほど見てましたけど偶に見るとやっぱり可愛いですよ」

「まあ、それも博多駅でどうにかなるだろ」

「はい、後は特にないので大丈夫だと思います、食べ物とかは空港で帰りに買います」

「そういや空港に限定くまモングッズ売ってたぞ、ゆりが買い漁ってた」

「あはは、咲百合さん好きそうですよね、あれ? でもお部屋にはあんまり置いてなかったような」

「ん? あーそういや言ってなかったな、あの家って壁に見えるところが収納スペースに成ってるぞ」

「え? そ、そうなんですか道理でタンスもなにもないと思ってました」

「すまんすまん、慣れたらそれが普通になってて言うの忘れてた、帰ったら教えてやるよ」

「それにしてもその収納の仕方であの部屋の広さって凄いですね」

「まあ収納スペースを防音材の代わりにしてるらしいからな」

 なるほど、道理で静かでした。いつも誰かと一緒に寝てたのであまりの静かさにちょっと寝る時怖かったです。

「兄さんの方のお買い物は大丈夫なんですか?」

「ん~まあ大体の物は博多駅で揃うだろうな、殆ど熊本土産買うだけだから」

「ふふ、そうですね」

 兄さんの料理楽しみだなぁと胸を躍らせる。

「それにしてもホント綺麗になったなぁ」

「え? そ、そうですか?」

「あぁ、母さんに似てきた気がする」

 その言葉に一瞬戸惑い私は答える。

「やっぱり兄さんもそう思いますか、私も最近母さんに似てきたなぁって思ってたんです」

 寂しげに言う私に兄さんは。

「何でそんなに微妙そうな顔してるんだ? お前母さん嫌いだったっけ?」

 その言葉に私は頭を振って答え。

「そんな事ないです大好きです……だから…逆に思い出しちゃって…悲しくなって」

 俯きそういう私の頭をぽむぽむと撫でながら。

「そんな事無いって、ちゃんと思いだせるって事はまだお前の中に母さんは生きてるんだよ、だからそう寂しがるなって」

 ……そうですね、忘れなければ……あれ?

「兄さん…お父さんは?」

「………俺もどっちかって言うと母さん似なんだよなぁ」

「お、お父さんもちゃんと思い出せますし大好きですしきっと大丈夫ですよね」

 何やら訳の分からない事を言っていると自分でわかりつつそんな弁解をしてみる私。

「お、おう、きっと大丈夫だな。そういや父さんで思い出したけど莉乃も父親に似た奴を好きになったりするのか?」

 ……全く話の繋がりがわかりません、お父さんがかろうじてつながっていますが。昔からそうでしたが一体どういう論理展開をしているのでしょうか兄さんの頭は。

「兄さんはいつも話が飛びますね。まあいいですけど、う~んどうなんでしょうね」

「いやどうなんでしょうねって自分の事だろ? ってあれ? ひょっとして彼氏とか居ないのかお前」

 …………。

「居なかったら何か問題があるんですか兄さん」

 にこやかに微笑みつつそう返す私に何故か一瞬固まる兄さん。

「え、いや問題はないと思うけど、なんてーかこうアメリカンな感じだとこう……ほらキャッキャウフフみたいな?」

「はぁ、確かに周りの友達で彼氏いない人のほうが少ないですけど少数ですが彼氏いない人も居ます」

「おかしいな身内補正を差っ引いても可愛いと思うんだけどなお前」

 兄さんは昔からそうだけど面と向かって可愛いっていうのやめて欲しいです。

「もう、原因の一つは兄さんにあるんですよ?」

「え、俺? 何かしたっけ?」

「中学入った時に帰宅部でいいって言ったのに“えぇ~何か部活やろうよ~楽しいよ~あ、そうだ袴が可愛いし合気道やろうぜ! 色々役に立つしお兄ちゃんもちょっと安心だし!”って言って合気道部に入れたじゃないですか」

「あ~うん、すっごい可愛かったな袴姿。でもそれがどうして彼氏が居ないことに?」

 またいい笑顔でそんなに可愛いとかいうし……。

「……大学に入ったばっかりの頃後ろから声をかけてきた男の先輩を投げちゃって」

「お、おう。あれか、先に声掛けずに肩でも叩いちゃったか」

「はい……それで無くても知らない場所で知らない人ばかりだし内心ちょっと怖いなぁって思ってる所に突然だったので……」

「体が勝手に動いちゃったか」

 そういう兄さんの顔をムスっと睨むと。

「ま、まあそれだけお前の血肉になっているということだよ、いい先生だったよなあの顧問の人」

「ええ、そうですねすごく綺麗な先生でした」

「なんでそんなに刺があるのかな?」

「別に、今思い出すと凄く兄さんが好きそうな人だったなぁとか思ってませんよ」

「ま、まあそれは良いとしてそれでどうなったんだ」

「凄い軌道修正ですね。結局それのせいで“迂闊に声をかけると投げられる”とか“手を出そうもんなら折られる”なんて話になってしまって」

「声すら掛けてもらえなくなったと」

「まあ友だちの紹介とかでなら」

「その手があったか! で、どんな奴?」

「日本好きの……海兵隊員でした」

「……おう?」

 何やら怪訝な顔をする兄さん。

「合気道を教えてくれって言われました」

「……斬新なお誘いだな」

「最初は私も新手のお誘いかと思ったんですけど……ホントにただ教わりたかっただけの様で、元から格闘技をやっていたので二ヶ月位でコツを掴んでお別れしました」

「ずいぶん早いな」

「転属になったようで、今は沖縄にいますよ。ちなみにFQOもやっています。正式サービス開始の後はあっていませんけど」

「何で?」

「私がキャラ作り直したのと後は正式サービス開始の時って位置情報のリセットがあったじゃないですか」

「あ~、あったな、えっと、つまり彼は沖縄っていうか九州にキャラが移動しちゃったわけか」

「はい、なのでそれっきりですね。まあ連絡を取ろうと思えば取れますけどタイミングもないのでそのまま音信不通に」

「なるほどな~」

 そう言って私越しに窓の外を少し眺めてから

「伯父さんになるのはまだ先のようだなぁ」

 と言う兄さんの呟きに。

「それは私のセリフです。早く私を叔母さんにして下さい」

「え~だってほらお兄ちゃんモテないし」

 兄さんはモテないんじゃなくてモテようとしていないのと、モテてることに気づかないだけなんじゃないのだろうかとたまに思う。なんて言うか告白とかしなさそうな女の子にモテるタイプと言うかなんというか……。

「兄さんはちゃんとしてればモテると思いますよ」

「でもさぁ、そのちゃんとしたってのがよく解んないんだけど。今の俺から変わったらもうそれは俺を好きに成ってくれたっていうのとは違わないか? モテるために作られた上辺だけの俺じゃんそれ」

 ああ言えばこう言いますね。昔っからですが。でも確かに上辺だけ繕ってそれを好きに成ってもらうって言うのは私も釈然としないです。向こうで私も友達から“髪でも染めたら少しは変わるんじゃない?”と言われたことがありますがその状態の私を気に入ってもらえても、じゃあ元の色に戻したらどうなるの? と言う疑問も出てきます。切っ掛けに成るだけならいい気もするけどそれを強いられるのはどうにも……まあ高校時代は茶髪だったのですが。

「む~、まあ言いたいことがわからなくもないので今のは無しにします」

「うむ、人間あるがままが一番」

「でも、もう少し兄さんは痩せて欲しいです」

「う~ん、運動でも始めるかな」

「ご飯食べすぎじゃないんですか?」

「最近は特にいっぱい食べてるな」

「少し減らして下さい」

「でもさぁ留美さんのご飯美味しんだよ」

 そんな兄さんの答えに私は苦笑しながら答える。

「……全く反論できなくて困ってしまいますね」

 昨日の晩御飯を思い出す。お昼に結構いっぱい食べたので軽めに作られた晩御飯は、ご飯にワカメとネギのお味噌汁、冷奴に肉じゃがでした。肉じゃがや冷奴を食べてるとやっぱり日本人でよかったなぁと思ってしまいました。それにしても美味しかったなぁ。“美味しいです”って言ったら材料がいいからって留美さんは言ってたけど謙遜しすぎです、まあ材料のほとんどが兄さんの会社と言うかおじさまの会社の売れ残り品らしいので美味しいのもうなずけますけど。ちなみに売れ残りと言っても別に品質が悪いとかではなく賞味期限の管理が厳しすぎるのと倉庫の中身を効率よく入れ替えているために早めに廃棄と言うか社員に格安で売られるそうです。どうやらお給料の一部に住宅手当のような感じで衣食住に関する手当が付いている様で社食でごはんを食べる人は最初からその手当から引かれる代わりにお昼ごはんは一食何を食べても月額固定料金に成ったりするそうです。ちなみに社食でも廃棄商品を使った料理が普通に出てくるので結構料金はお高いけれど儲けなしの仕入れ値価格なのでそこら辺のお店で御飯食べるよりか遥かにリーズナブルらしいです、そしてそれを食べた社員のレビューがそのまま通販ページに乗っているそうです。前に見たページには“このレトルトカレーを買わないで下さいそうすれば僕達のお昼ごはんが美味しくなります”とか“もっとこのプリンを食べたいので他のプリンを買って下さい”等の文章が並んでいた……なら自分たちも買えばいいじゃないと思ったので聞いてみたところ“それがさ昔は買えたんだけど社員の皆が手分けして買い占めちゃうんだよ、ほらうちの会社の販売方法って入荷した瞬間から販売開始に成るじゃん? だから販売開始する時間は中の人しか知らないわけ、それで中の人同士で結託してさ”販売開始と同時に別の人が端末で買い占めちゃうんだそうです……それで社員は買えなくしてしまったらしい。そして販売開始時間は完全に社外秘に成ってしまい家族に買ってもらうことも困難になってしまったと。そうなると社員の皆様が不公平を訴え始めたので今の制度になったらしいです。ちなみに洋服家電雑貨なども売れ残り品を格安で買えるようです。お風呂も……。

「それにしても留美さん和食作るの上手ですね」

「ん~、と言うか殆ど和食だぞあの家」

「そ、そうなんですか」

「あ、そっか言ってなかったか留美さんお母さんが日本人でお父さんも大の日本好きでさ、それで昔っから日本食ばっかり食べてたんだって」

「えっとじゃあ留美さんがハーフで咲百合さんはクォーターなんですね」

「うむ、留美さんは生まれも日本だしな、中学の時はフィンランドに行ってたらしいんだけど高校からはまた日本に帰ってきたんだってさ、それで高校三年の時に大学か就職で悩んでる時にバイリンガルな事務員募集のバイトに応募して専務と出会っちゃったらしい」

「出会っちゃいましたか」

「専務的には最初に電話で高校生って聞いてたから落とす気満々で居たらしいんだけど、いざ面接に来たのが」

「あの留美さんだったら……合格でしょうね。でも名前でわかるんじゃないんですか?」

 今の時代少子化の影響で中学高校卒業と同時に就職する人もかなりの数にのぼりますがやはり経験や実力が伴わないので色々と厳しかったりもするようです。

「それがさ留美さんの旧姓ってこう、Alajaって書いてアラヤって読むんだ、だから直接会うまでは気づかなかったんだってさ。ほら今ってネットでの履歴書だと名前だけで写真も要らないじゃん、取り敢えず応募みたいな感じで後は面接の時にって」

 と兄さんが端末に打ち込みつつ教えてくれる……。

「なるほど……それにしてもお名前がドコかの魔法使いの様ですね」

「アラヤ ルミもう名前だけ聞くと完全に日本人だよな」

「その名前であの容姿の人が来たら私だったら何かの冗談に思います」

「実際最初は何かの冗談だと思ったらしいよ専務、でも制服着てるし生徒手帳にもちゃんと書いてあるし端末個人データを確認してやっと信じたんだって」

「それで一緒に仕事をしていく内にって感じなんですか」

「ん~と言うか殆ど一目惚れに近かった見たい、だって十九で結婚したらしいから」

「凄い積極的ですねおじ様」

「いや、留美さんが一目惚れしたそうだ」

「え?」

「何でもお父さんに似てるんだってさ雰囲気が」

「そ、そうなんですか」

「まあ専務の方も結構気にはしてたみたいだけど歳の差が九つあるしさ、留美さんは会った時まだ高校生だし、まあその当時から少子化対策で高校生でも結婚やら産休は珍しくなかったんだけど、専務は無駄に古風っていうかなんて言うかな人だから、まあ留美さん的にはソコも好きになったポイントらしいけど。まあそんなこんなで結婚しちゃったらしい」

「それはなんというか……なんとも言えませんね」

「うむ」

「でも留美さんのお父さんは反対しなかったんですか?」

「ん~一応反対はしたらしいけど“お父さんに似てるから”っていうのがなんて言うかこう良くも悪くも決定打になったらしい」

「可愛い娘から自分に似ているから好きって言われちゃうと折れちゃいますね」

「まあそんな感じでゴールインしてゆりが生まれて、生まれてからは専務と留美さんが仕事が忙しいからって言うこじつけを利用してゆりの世話をしに良く日本に着てたみたいだぞゆりのおじいさんは。まあそれまでも大半は日本で過ごしてたんだけどな」

「お祖母様は?」

「ん? あー普通に専務達の家に押しかけてゆりの面倒見てたらしい専業主婦でしかも実家が大分だから何かと融通きくみたい」

「お祖父様は仕事があるから一人仲間はずれだったのですか。お祖父様のお仕事は?」

「日本雑貨の販売らしい、しかも二代目」

「なんというか職業まで似てますねおじ様と」

「まあな~うちの会社の取引先にもなってるらしいし、っと次だボタン押してくれ」

「あ、はい」

 ぽちっと降車ボタンを押すとぴんぽーんという音と運転手さんの「次停車しまーす」的な声が聞こえてきます。

「てか何の話だったっけ?」

「えーっと……何でしたっけ?」

「ま、いっか」

「そうですね」

 そう言って兄さんに微笑みかけ視線を窓の外に向けると少し先に駅とバス停が見えてくる。

『博多南駅~博多南駅です、降車の方は停車してからゆっくりと移動して下さい』

 そんなアナウンスが聞こえゆっくりと減速したバスはなめらかに停車後、プシューっと前のドアが開く。アニメとかだと前から乗って真ん中から降りたりするのをよく見ますが福岡では真ん中から乗って前から降りるのが一般的のようです。熊本は……思えばあまりバスに乗った記憶が無いので覚えていません。

「降りるぞ~よいしょっと」

 私に声をかけ歩いて行く兄さんの後を私も追って兄さんにならって運転手さんの横の端末に自分の端末をかざして料金を精算しバス停に降り立つ。

「ふぅ、久しぶりに来たなこの駅も」

 兄さんが周りをキョロキョロと見渡しながらそんな事を言う。

「そうなんですか?」

「あぁ、最初にゆりに呼ばれて遊びに来た時以来かな。あの時は着いたらハイヤーが迎えに来ててビックリしたけど」

「それは何やら大変だったみたいですね」

 駅に向かい歩きながら兄さんはそんなことを話し始めた。

「まあ、あとから聞いたらなんか専務の大学の時の友だちがやってる会社だから料金的には普通のタクシーより安くしててくれたらしい」

「へ~おじ様の友達って色々やってるんですね」

「ん~なんか社長と色々やってたら起業したい奴らが集まってきて色んな情報を共有しあってたらしい」

「ゲーム友達ばっかりの兄さんとは大違いですね」

「ふ、俺はそんなメンドクサイことはしたくない人なんだよ」

 階段を登りつつそんなことを言う兄さんの横顔をチラッと覗き“やっぱり私が負担になってたのかな”と少し思いつつ視線を階段の先に戻した私の頭をぽむぽむと兄さんが叩く……少し泣いちゃいそうです。

「お、ちょうど来そうだな」

 しんみりしてる私を気づかってるのか明るめにそう言って兄さんが小走りに改札機に端末をかざしながらホームへと向かう後をトテトテとついていく。

「おー来た来たやっぱり700系はいいなぁ」

 と何やら感嘆の声を上げる兄さんとは逆に困惑する私。

「あ、あの……私には新幹線に見えるのですが」

「ん? そだよ、だってここ新幹線の駅だし、ほらあっちは新幹線基地だからいろんな車両止まってるだろ? たまにドクターイエローもいるぞ」

 えっとドクターイエローが何なのかよくわかりませんが、何故ちょっとお買い物に行くのに新幹線なんでしょう? と首をひねっていると。

「あ~ここはその昔“線路在るんだから駅造ってよ”的なノリで作られた駅なんだよ。九州新幹線出来る前まではここが一番南の新幹線駅だったんだぜ」

「えっと、料金は高かったりするんですか?」

「なんと特急券込みで二九〇円」

「……安いですね、ヘタしたらバスより安いんじゃないですか?」

「しかも一駅だから時間もずれないぜ!」

「至れり尽くせりですね」

「まあ元々通勤用だからな」

「それでこんなにお客さんが少ないんですねこの時間だと」

「おう。だからのんびり出来るぞ」

 目の前でゆっくりと止まった新幹線のドアが開き乗り込んでいく兄さんの後をついて乗り込む、九州新幹線とは別口で稼働しているので始発駅になるらしく車両の中には誰も乗っておらずガラガラの状態なので兄さんは眺めのよさそうな席を見つけて私を窓際へと座らせる。その昔なんで私が窓際なの? と聞いたことがあった、その時は俺通路側が好きなんだ、と言っていたがホントのところはわからない。

「私新幹線乗るの初めてです」

 そんな声に。

「あれ? そうだっけか? ん~そういや俺も入社したての頃研修で福岡来た時に乗ったのが最初だったかな」

「兄さんバイクで動いてましたからね」

 そこであれ? っと思う。

「そう言えば兄さんバイクはどうしたのですか?」

「あ~コッチに来るとき一回処分したんだよ。流石に居候の身でバイク置いとくのもな」

「まあそうですね。でも咲百合さんは“乗せて~”とか言ってなかったんですか?」

「お前良くわかるな」

「咲百合さんですし」

「何気に酷いな」

「気のせいです」

「まあ最初“何で売っちゃったのよっ!”とか言われたけどな。まあレンタルバイクでも借りて乗せてやるよいつの日か」

「いつの日か。ですか、まあいいですけど。じゃあどうやって通勤してるのですか? ひょっとしておじ様と一緒ですか?」

「あー最初はそう言われたんだけどさ、それもどうかなぁと思ってバスと電車とバスで通ってたんだけど」

「だけど?」

「経理の方からさ“住んでるトコが一緒なんですから一緒の車で来て下さい交通費がうきます”的なことを言われて最近は送ってもらってる。帰りはゆり次第だから乗せてもらったり一人で帰ったりかな」

「そ、そうですか不思議な会社ですね」

「あぁ、この家に来て謎がどんどん増えていくよ。まあ無駄な経費は削るが必要経費は惜しまないけどな。昇給もちゃんとするし、良い事したらボーナス増えるし」

「ほんとにいい会社ですね」

「我ながらそう思う。いやぁ入れてラッキーだったよ」

「クビにならないでくださいね」

「お、おう」

 何やら目をそらされました。何かあったのでしょうか? まあ深くは聞かないでおこうかなと話題を変えます。

「それにしてもなかなか発車しませんね。ってもう動いてます!」

 視線を窓の外に移したら既に走り出していました。

「ん? あぁバイクの話あたりで出発したぞ? 放送聞いてなかったのか?」

「き、気づきませんでした。こんなに静かなんですね」

 全然揺れもしないし発車の時の加速もわかりませんでした。

「まあ基本的に三〇〇キロで快適に過ごせる空間だからなこの速度だとそりゃ静かだろ」

「日本の技術はすごいですね」

「これ三〇年以上前の車両だけどな」

「……ほんと未来を生きてますね日本は」

「制御系のシステムは更新されてるだろうからそこら辺も在るんだろうけどな」

 へぇ~と兄さんの説明を聞きながら窓の外を眺めていると。

「ちょっと過ぎちゃってて見づらいけどあそこら辺の山の中にILCが在るんだぜ」

「え? ILCってあのILCですか? こんな近くなんですか?」

「そそ、アホみたいに近いだろ、見学に行きたいんだけど予約でいっぱいなんだよなぁ」

「私も行ってみたいです……」

 ほえ~と過ぎゆく街並みの先にある山を眺める。まさかこんな近くにILCがあるなんて、やっぱりちゃんと調べてくるべきでした。ここで簡単に説明するとILCとは【インターナショナル・リニア・コライダー】わかりやすく言うとセルンのLHC【ラージ・ハドロン・コライダー】の親戚みたいなものです。粒子と粒子をぶつけて色々調べたりするものです。(二〇一三年二月現在はまだ候補地です)(二〇一三年八月おしくも候補地から外れました…できたら見学行こうと思ってたのにしくしく)

 その後時折兄さんの説明を聞きながら福岡の街並みを数分眺めていると。

 『まもなく博多に到着します』的なアナウンスが流れて来ました。

「そんじゃ降りるぞー」

「はい」

 そう言って立ち上がりドアの方まで歩いているとちょうど減速しながらホームに到着しました。

「凄いです減速Gも感じません」

「逆に気味が悪いけどな」

「ふふ、そうですね」

 プシュー。とドアが開き兄さんがホームに降りたのに続いて私もホームに降り立つ。

「広いですね……」

「ん? あー新幹線とあっちは在来線が並んでるからな」

「迷子になりそうです」

「アメリカのほうが広そうだけど」

「向こうで電車なんて乗ったことないですし」

「そなの?」

「基本車ですから」

「あー車がないと生活できないような国だっけ」

「はい」

「そういや免許取らずに向こう行ったけど免許取ったの?」

「はい取りました三〇ドルで」

「………安いな」

「私も正直びっくりしました」

 これには私もホントにびっくりしました日本の一〇〇分の一です。

「まあ、お国柄なんだろうなぁ」

「そうですね、向こうはなんでも自己責任ですしね」

 そんな事を話しながら改札を抜け九州の色んなお土産が並ぶ場所に出る。

「さて、くまモン買っとく?」

「……か、帰りでいいです」

 所狭しと並ぶお土産の半分くらいにはくまモンがプリントされたりしているのを見てちょっと引いてしまいました。

「んじゃぶらぶら見ながらポケセン目指すか」

「はい」

 そう答えて私は兄さんの横に並んで歩き出します。








 横を歩く妹の莉乃を横目で確認しながらノンビリと駅ビルの中を歩く。ここ自体にはコッチに来てから何度かきたことはあるが大体一緒に来るゆりが俺と一緒の目的地しかいかない為他にどんなお店が入ってるかはよく知らない。ちなみに良く行く所は映画館とハンズである。というかソコしかいかない。ゆりはあんまりお洒落には興味が無いので化粧品や何やらのお店は軽くスルーしてしまう。ちなみに最近は二人きりではなくかなりの確率でるりっぺじゃなかった瑠璃がついてくる。何故呼び捨てかって? 西園寺さんとか瑠璃さんって呼んでたらなんか拗ねられた……ワケガワカラナイヨ。でもるりッペは駄目らしい。難しいな乙女心。

 ちなみに瑠璃もゆりとは違う理由でファッション系のお店はスルーするのだが偶にお店の人から挨拶されている時がある。ネームプレートが店長とかマネージャーばかりなのがなんともかんともだが。そのたびに何時ぞやと同じ“え? あんたら何者?”的視線がお店のお客さんから向けられる。なにせ連れの二人はウニクロにしまむらチックな黒一色の服とかだったりするわけだからな。べ、別に黒がかっこいいから着てるんじゃないぞ? 汚れが目立たないからだぞ? まあ瑠璃が挨拶終わると流れで軽く挨拶してるわけだけど俺はともかくウニクロ装備のゆりがお嬢様チックに挨拶してる姿はいつ見ても吹き出してしまい俺の足が踏まれる……今度安全靴買おうかな。ちなみにるりっぺの服装は俺達に合わせてか大人しめの物が多い……高そうだけど。

 そんな事を思いながら莉乃に合わせた速度で歩いていると何かを見つけたのか周りを見ていた莉乃の視線が止まった。

「ん、なにか気になるのでもあったか?」

「え? えっと、あのブラシが可愛いなって」

 視線の先を折ってみるとなるほど確かにヘアブラシがいくつか並んでるな。

「んじゃ見ていこうそうしよう」

 そう言うやいなや莉乃の手を取りズンドコお店に突撃する。莉乃は多少強引にしないと遠慮しちゃうからなぁ。

「え、ちょとまって、あうあう」

 何やら言いながら手を引かれてついてくる、っと目的のブラシの前についたが意外といっぱいあるので聞いてみた。

「色いろあるんだな」

「はい、材質とかでも結構変わりますし」

 へ~ゆりのはなんか高そうだけどどんなもんなんだろな? と思っていると何やらお気に入りを見つけたようで空色のブラシを手に取り見つめていた。

「その色好きだったっけ?」

「え、ええ、何となく落ち着くんです」

 言われてみると今日の服装も薄い青みがかったマキシ丈とか言うロングワンピースだ。しかしなんだか若奥さんみたいだな女子大生なのに……。

「そっかじゃあ買ってやるよ」

「え? いいですよそんな」

「ガーン、お兄ちゃんに買ってもらうのが嫌なのか……しくしく」

「そ、そんな事ないです」

「じゃあ買おうそうしよう」

 そう言うとさくっと莉乃の手からブラシを強奪するとテクテクとレジに向かって行き。

「これください」

「はい、ありがとうございます。お支払いはどちらになさいますか?」

 と現金やらカード、プリペイドなどの一覧の画面を差されるので。

「ほんじゃぽちっと」

 端末での支払いを選択すると。

「はい、お会計九八〇〇円になります」

 ………その言葉に一瞬固まりかけたがなんとか精神力で乗り切り。

「は、はいじゃあ」

 そう言って端末をかざすと、ピロリーンと決済終了の音が響き。

「ありがとうございます、プレゼントの包装はいたしましょうか?」

 と言う声に。

「あ、いえ大丈夫です」

 なんとか答え。

「ありがとうございました」

 にこやかに袋に入ったブラシ(九八〇〇円)を渡される。ブラシってこんなに高いの? (後からゆりに聞いた所ブラシもピンきりらしく何気に使ってるゆりのやつも結構高いそうだ)

「ほら、大事に使えよ」

 なんとか笑顔で莉乃に渡せたと思う。

「あ、ありがとうございます兄さん、大事に使います」

 何やら嬉しそうなのでまあいいかと思う。それに特にお金の使い道が在るわけでなく貯金も結構貯まってるしなぁ……主に莉乃の結婚資金だけど。

「そんじゃ行くか~」

「はい」

 そう言ってまた俺達は歩き出す、ポケセンへ向けて。



「……おおう。なんか凄いな」

「凄いですね……何が何やらわかりません」

「俺もポ◯モンはアニメでちょこっとしか見てないからなぁ」

「私もです」

 兄妹二人お店の真ん中であまりのキャラの多さに途方に暮れてみる。

「それでお友達は何がほしいんだ?」

「えっと等身大ゼニガメぬいぐるみだそうです」

 端末で開いたメモを見ながらそう言う莉乃。

「なんてーか渋いなお前の友達」

「変わった学校ですし」

「世界のあっちこっちから色んな人が来てるしなぁしかも工科大……そりゃ変人ばっかになるだろうな」

「むぅ~兄さんそれって私も変ってことですか?」

「はっはっはお前は可愛いからいいんだよ」

「変って所は否定しないんですね」

「さてゼニガメゼニガメっと」

「はぁ……もういいです、兄さんこっちじゃないですか? ぬいぐるみいっぱいですよ」

 そんな感じで何とかぬいぐるみを見つけおっきなポケセン専用袋に入れてもらい後は晩御飯の材料を買えば大体終わりと思ったその時それは起こった……起こってしまった。

「あら小野さんじゃないですか」

「ん、俺?」

 そんな声に莉乃と二人で振り向いた先にはスーツ姿の朱美さんが立っていた……何故ここに?


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