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仁義なき側室  作者: モーフィー
番外編
24/48

捜査開始①



 それから幾日か経った。


 ガーウィンは全く頭を痛めていた。横領事件が進まないのもあるが、頼りにしていたクリスティーナが全くの非協力的だったからだ。


 決して、怠けていたわけではない。ガーウィンが質問をすればそれには答える。だが、積極的ではない。よって、捜査も凡人並にしか進まない。


 議会を積み重ねても、相手は尻尾を出すことはない。クリスティーナの参戦に期待していたガーウィンとティボルトのストレスはいやでも溜まる。


「一度、ご趣味の小説や絵を焼いたら、おまえの婚約者も重い尻を起こすんじゃないか?」


 午後の晴れ渡った青空の下、ガーウィンとティボルトは王の執務室に缶詰であった。ここまで響いてくる若者達の楽しげな声にいらいらを高まらせて、いつもは穏やかなティボルトでも不穏な言葉を吐く。


「燃やされた後が怖いからできないんだろう。おまえの名を借りてそれができるならば喜んでそうしよう」


 ガーウィンは頭を振って大量に机に積み上げられた穀物貿易目録をとった。ガーウィンとティボルトは暇さえあれば捜査に当たっているが、クリスティーナは呼ばれないと来ない。今頃は後宮でゆったりとティータイムを楽しんでいるだろう。


「今頃、クリスティーナ殿は木漏れ日の下、ティータイムだろう、な」


 同じ事を考えていたらしいティボルトが山のように積み上げられた目録におぼれながらぽつりと呟いた。どんよりとした空気の中で吐かれたその言葉が真に羨ましそうで、そして、自分も温かいお茶と日光浴を味わっている彼女への羨望を隠せない。そう思ってしまうのが癪であった。


 考えれば考えるほど心が荒んでくる。


「王兵! 今からクリスティーナを呼んでこい! あいつばかり休ませてなるものか!」


 ガーウィンは大きな声で命令したが、ティボルトが隣で陰気に呟く。


「そう言って素直にやってくるものか。昨日は無理矢理呼んできて、かき回されたばかりだろう?」

「だからといって一人ゆっくり紅茶など飲ませるものか!」


 ガーウィンはイライラが収まらず、書物で狭くなった部屋の中を何度か行き来して、ようやく気分をなだめる。


 その様子をしばらく見ていたティボルトは何か考えているようだったが、慎重に切り出した。


「――なあ、ガーウィン、おまえ、クリスティーナ殿の正室昇格の件、もう一度考えてみないか?」


 ガーウィンは眉をぴくりと動かした。


「どういうことだ?」


 ティボルトはしばらく言葉を探していたようだが、自分をまっすぐ見ている王に言いにくそうに口蓋を切る。


「あの初めての側室お目通りの時、おまえは問答無用でクリスティーナ殿を正室に迎えると宣言しただろう? その理由は、彼女の能力がいずれ国のために役立つだろうと思ってからだ。そうだろう?」

「ああ、そうだ」

「けれども、彼女を押さえる力は我々にはない。つまり彼女の力を国のために使うことは出来ていないんだ。そんな令嬢を正室に迎えても利点は少ない。貴族達は後宮にいる側室達の親を中心に再度の王妃選びを求めている」


 ガーウィンはため息を付いた。


「却下だ。まだ、あいつと馴れあってから時間は少ない。まだ分からないだろう」

「そうではあるが、今までのことを鑑みて、だ」


 それとも、とティボルトは言葉を切り、探るような目つきでガーウィンを見た。


「おまえ、本当はクリスティーナ殿のこと好きなのか?」

「ん」


 一言唸った限り、ガーウィンは肯定も否定もしない。どうしたことか。ティボルトは更に半信半疑で尋ねようとする。


 と、その時、扉が開かれ王兵が高らかに声を張り上げる。


「クリスティーナ様がやってきました!」


 目をやれば、淀んだ空気に鼻をハンカチで押さえるクリスティーナが立っていた。ガーウィンとティボルトが予想していたように手にはティータイム専用の可愛らしい花柄ナプキンが下げられていた。


「何か用ですか? 殿方達。早く帰らないとせっかくいれたばかりの紅茶が冷めてしまいますの」


 早くもやる気なさげのクリスティーナである。


 けれども、ティボルトは、クリスティーナではなく今度はガーウィンに注意を払う。


 彼は婚約者のことになると口を濁す。なんやかんや言いながらクリスティーナ殿のことをどう思っているのか?


 しかし、ティボルトの予想は杞憂に終わった。ガーウィンは眉間のしわを深くし、まるで婚約者にとは思えない苦々しい口調で言った。


「おまえは人がせっかく夜も眠らずに捜査に時間を費やしているのに、紅茶なんか飲んでいる暇があるのか。とりあえずそのいれたての紅茶がすべて自然蒸発するまで手伝え」

「またそう真面目なこと言っておいて、恥ずかしい格好させて監禁しようとするんだから。私、そう言う趣味はなくてよ」

「あいにくだが俺もないな」


 ガーウィンは歯ぎしりして、積み上げられていた貿易目録を指さした。


「あれを見ての感想を聞かせろ。何か不審なところがないか探せ」

「もう、何度も言いましたように、側室のお仕事は夜だけです。昼間もお仕事を強制なさったら、私、疲れてしまいますわ」


 次第に火花が散り始める国王と側室にティボルトは、友人以前の問題だと頭を抱えた。


進みがのろくて申し訳ありません。


次こそ、何らかの発展があると思われます。

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