雨の日の終電
第2話は、“大人になった三人の終電”をテーマに描きました。
学生の頃と違って、
* 仕事終わり
* 電車遅延
* 終電
* 雨の日
など、“大人の疲れ”が増えている三人。
でも、
「無理をしない」
「安心して帰る」
という考え方は、昔から変わっていません。
今回は特に、
“懐かしい帰り道”
みたいな空気を意識しています。
雨の日の少し疲れた夜を、三人と一緒に感じてもらえたら嬉しいです。
六月。
仕事終わりの駅は、人でかなり混雑していた。
雨。
しかも金曜日。
改札前には傘を持った人が溢れている。
奈々はスマホを見ながら大きく息を吐いた。
『電車遅延』
「最悪……。」
その時。
「あっ。」
後ろから声がした。
振り返ると、悠斗が苦笑いしていた。
黒い傘。
少し濡れた前髪。
昔よりずっと大人っぽい。
でも、“困った時の顔”は変わっていなかった。
奈々は吹き出す。
「悠斗くんも?」
「うん。止まってる。」
「終わったね。」
二人は顔を見合わせて笑った。
⸻
少し遅れて、美咲もやって来る。
「二人ともいた。」
「電車やばい。」
「ホーム入れないくらい混んでる。」
三人は少し考えたあと、駅ナカのカフェへ避難することにした。
⸻
店内はかなり混んでいた。
でも奥の席が一つだけ空いている。
奈々は座った瞬間、大きく息を吐いた。
「助かった……。」
悠斗も苦笑いする。
「人多すぎ。」
窓の外では、雨がかなり強く降っていた。
昔だったら、
* 雨
* 人混み
* 電車遅延
* 長時間移動
それだけでかなり不安だった。
でも今は違う。
ちゃんと、
“無理しない”
を選べる。
それがかなり大きかった。
⸻
奈々は温かいカフェラテを持ちながら笑う。
「大人になると、“帰れるか”がリアルだね。」
「分かる。」
悠斗も頷く。
大学帰り。
終電。
雨。
社会人になると、奈々たちももっと遅くなる。
昔より自由だけど、その分疲れることも増えていた。
美咲は静かに笑う。
「でも、こうやって集まると安心する。」
奈々は吹き出した。
「美咲まで言う。」
「ほんとだし。」
悠斗も小さく笑った。
⸻
その時。
駅のアナウンスが聞こえる。
『現在、運転再開の見込みは――』
奈々は顔をしかめた。
「まだ動かないじゃん……。」
悠斗もスマホを見る。
終電まで、かなりギリギリだった。
しかも外は大雨。
奈々は苦笑いする。
「こういう時、昔ならめっちゃ焦ってた。」
「うん。」
悠斗も頷いた。
でも今は違う。
ちゃんと準備している。
無理をしないって決めている。
それだけで、気持ちはかなり変わる。
奈々は小さく笑った。
「……今日は最初から安心優先。」
悠斗が吹き出す。
「懐かしい。」
「悠斗くんもでしょ?」
数秒止まったあと、悠斗も苦笑いした。
「……まあ。」
美咲はそんな二人を見ながら静かに笑う。
十年経っても。
この空気だけは変わらなかった。
⸻
しばらくして。
ようやく電車が動き始める。
ホームはかなり混雑していた。
三人は人波へ流されながら電車へ乗り込む。
車内は蒸し暑い。
濡れた傘の匂い。
疲れた人たちの空気。
奈々は吊り革へ掴まりながら息を吐いた。
「うわ、ぎゅうぎゅう……。」
悠斗も苦笑いする。
「金曜の終電前だしね。」
昔だったら、
“ちゃんと大丈夫かな”
って、そのことばかり考えていた。
でも今は違う。
“安心して帰れる”
ことをちゃんと優先できている。
それが昔との一番大きな違いだった。
⸻
電車が揺れる。
雨音が窓へ当たる。
その時。
奈々が小さく笑った。
「なんかさ。」
「ん?」
「こういう帰り道、昔いっぱいあったよね。」
悠斗も頷く。
電車。
旅行帰り。
疲れた夜。
その全部で、三人は少しずつ安心できるようになっていった。
悠斗は小さく息を吐く。
「……やっぱここいると安心する。」
奈々は吹き出した。
「ほんと変わんない。」
美咲も静かに笑った。
大人になっても。
終電でも。
雨の日でも。
三人の“帰り道”は、ちゃんと安心できるままだった。
第2話「雨の日の終電」を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、
“昔の不安が、懐かしい思い出になっている”
という空気を大切にしました。
昔の三人は、
* 電車
* 人混み
* 長距離移動
だけでもかなり緊張していました。
でも今は、
“どうすれば安心できるか”
を知っている。
だから、終電や雨の日みたいな疲れる状況でも、
「まあ大丈夫」
と思えるようになっています。
特に今回は、
「安心優先」
という言葉が、昔の“合言葉”みたいになっているのもポイントでした。
子どもの頃の不安。
旅行帰りの電車。
そういう記憶を共有しているからこそ、今の三人には“帰ってこられる安心感”があります。
これからも、大人になった三人の少し疲れていて、でも安心できる帰り道を描いていけたらと思います。




