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安心できる帰り道  作者: たい


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終電前のカフェ

『安心できる帰り道』は、


『安心できる場所』から十年後を描いた続編シリーズです。


大人になった奈々、美咲、悠斗。


学生だった頃とは違い、


仕事、

大学、

終電、

疲れた夜。


不安も、少しずつ“大人の形”へ変わっています。


でも、


「安心できる人がいる」


という気持ちは、昔と変わっていません。


今回は、そんな三人が久しぶりに集まる“金曜夜のカフェ”を描きました。


少し大人になった三人の空気を、楽しんでもらえたら嬉しいです。

金曜日の夜。


駅前は仕事帰りの人で混雑していた。


スーツ姿の会社員。


飲み会帰りのグループ。


疲れた顔で改札へ向かう人たち。


奈々はカフェの窓際席で、大きく息を吐いた。


「……今週ほんと疲れた。」


テーブルの上にはアイスカフェラテ。


氷はもう少し溶け始めている。


その時。


「あっ。」


聞き慣れた声。


奈々が顔を上げる。


店の入口から悠斗が入ってきた。


背が高い。


昔よりずっと大人っぽい。


黒いシャツに、落ち着いた色のバッグ。


でも、奈々を見ると少し安心したみたいに笑うところは変わっていなかった。


奈々は吹き出す。


「悠斗くん、スーツ似合わなそう。」


「ひどい。」


悠斗は苦笑いしながら席へ座る。


「今日は大学帰り。」


「あー、そっか。」


十年。


かなり長い時間だった。


でも、三人で会う空気は不思議なくらい変わっていない。



少しして、美咲もやって来る。


「ごめん、遅れた。」


「仕事?」


「うん。」


美咲は小さく息を吐きながら座った。


昔より落ち着いた雰囲気。


でも、柔らかい笑い方は変わらない。


三人は自然に顔を見合わせる。


それだけで、少し安心する。



窓の外では、雨が降り始めていた。


奈々はそれを見ながら苦笑いする。


「最悪。帰り絶対混む。」


「金曜だしね。」


悠斗も頷いた。


昔だったら、


* 長距離移動

* 人混み

* 雨

* 終電近い時間


そういうだけで、かなり不安になっていた。


でも今は違う。


もちろん、不安がなくなったわけじゃない。


ただ、


“どうすれば安心できるか”


を、三人ともちゃんと知っている。


それが昔との大きな違いだった。



奈々はストローを回しながら笑う。


「そういえばさ。」


「ん?」


「この前、出張でめっちゃ長距離移動だったんだけど。」


悠斗が吹き出しそうになる。


「奈々ちゃん絶対“安心優先”したでしょ。」


「した。」


即答だった。


美咲も笑う。


「奈々らしい。」


奈々は苦笑いする。


「だって、新幹線三時間だったし。」


悠斗は少し懐かしそうに笑った。


「昔、そんな言葉ばっか言ってたよね。」


“安心優先”。


昔の三人にとっては、かなり大事な言葉だった。


不安にならないように。


無理しすぎないように。


ちゃんと安心して楽しめるように。


そのための言葉。



その時。


悠斗が小さく息を吐いた。


「……でもさ。」


「ん?」


「今でも、ここ来ると安心する。」


奈々は吹き出した。


「変わってないね。」


「だってほんとだし。」


悠斗は少し照れながら笑う。


大学。


バイト。


就活。


大人になると、不安は別の形で増えていく。


でも。


この二人といる時だけは、昔みたいに肩の力が抜けた。


美咲は優しく笑う。


「帰ってきた感じするよね。」


その言葉に、悠斗も静かに頷いた。



夜。


カフェを出る頃には、雨はかなり強くなっていた。


駅前のアスファルトが濡れて光っている。


奈々は空を見ながらため息をつく。


「うわ、これ絶対電車混む。」


「終電近いしね。」


悠斗も苦笑いする。


昔だったら、


“ちゃんと帰れるかな”


って、それだけで緊張していた。


でも今は違う。


ちゃんと安心できる準備をしている。


無理をしないって決めている。


それだけで、かなり気持ちが変わる。


奈々は小さく笑う。


「……まあ、今日は最初から安心優先だから。」


悠斗が吹き出す。


「ほんと変わんない。」


「悠斗くんもでしょ?」


数秒の沈黙。


それから悠斗も苦笑いした。


「……うん。」


美咲はそんな二人を見ながら静かに笑う。


十年経っても。


大人になっても。


変わらないものはちゃんと残っていた。



改札前。


終電を知らせるアナウンスが流れる。


奈々は小さく手を振った。


「じゃあ、またね。」


「うん。」


悠斗も笑顔で頷く。


美咲も静かに微笑んだ。


雨音が駅前へ広がる。


でも三人の空気は、昔みたいに安心できるままだった。


それはきっと、


“帰ってこられる場所”


みたいなものになっていた。

第1話「終電前のカフェ」を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、


“大人になった三人の再会”


をテーマに描きました。


十年前と比べると、


悠斗はかなり落ち着いています。


でも、


* 「ここ来ると安心する」

* 少し照れながら笑うところ

* 無理をしすぎないところ


は、昔と変わっていません。


奈々と美咲も、社会人になってかなり大人っぽくなっています。


でも三人で集まると、昔の空気へ自然に戻れる。


そこを今回一番大切にしました。


また今回は、


「安心優先」


という昔の言葉を、“懐かしい合言葉”みたいに描いています。


子どもの頃は、不安を減らすための言葉だった。


でも今は、


“安心して過ごすことを大事にする”


という、大人になった三人の考え方として残っています。


これから、


大人になった三人がどんな帰り道を過ごしていくのか。


その続きを、これからも描いていけたら嬉しいです。

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