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安心できる帰り道  作者: たい


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19/22

名前を呼ぶ日

第19話は、“名前をつけること”をテーマに描きました。


今回は、


* 名前を考える時間

* 出生届を出す瞬間

* 「家族になった」実感


を中心に描いています。


名前は、

これからずっと呼び続けるもの。


だからこそ、

奈々と悠斗らしい、

優しくて安心できる響きを意識しました。


小さな家族が、“悠真”として歩き始める瞬間を楽しんでもらえたら嬉しいです。

冬の午後。


病室には、柔らかい陽射しが差し込んでいた。


奈々はベッドへ座りながら、小さな男の子を見つめる。


「……まだ不思議。」


悠斗も隣で苦笑いした。


「ぼくも。」


赤ちゃんが生まれて数日。


少しずつ、

“家族が三人になった”


実感が増えてきていた。



その時。


美咲が椅子へ座りながら、小さく笑う。


「で、名前は決まったの?」


奈々と悠斗が同時に止まる。


数秒の沈黙。


そして奈々が吹き出した。


「……まだ。」


美咲も思わず笑う。


「えぇ!?」


悠斗は苦笑いしながら頭をかく。


「候補はあるんだけど……。」



テーブルの上には、名前候補を書いたメモ。


奈々はそれを見ながら、小さく息を吐く。


「ずっと呼ぶ名前だもんね。」


「うん。」


悠斗も静かに頷く。


安心できる名前。


優しい響き。


二人はかなり真剣に考えていた。



奈々は赤ちゃんへそっと触れながら、小さく笑う。


「この子、すごい穏やかな顔してる。」


悠斗も小さく笑った。


「奈々ちゃん抱っこしてると安心してる。」


奈々は少し照れながら笑う。


「……悠斗くんもでしょ。」


その時。


赤ちゃんが小さく声を出す。


三人とも一瞬でそっちを見る。


その空気がおかしくて、美咲が吹き出した。


「もう完全に親。」



しばらくして。


奈々が小さく呟く。


「……悠真、とかどうかな。」


悠斗がゆっくり顔を上げる。


「悠真?」


奈々は少し照れながら頷いた。


「“悠”は悠斗くんから。」

「“真”は、まっすぐ優しい子になってほしいなって。」


部屋が少し静かになる。


悠斗は数秒黙ったあと、かなり優しい顔で笑った。


「……いい名前。」


奈々も少し安心したように笑う。


美咲も大きく頷いた。


「うん、すごい二人っぽい。」



その夜。


病室は静かな空気に包まれていた。


奈々は小さな赤ちゃんを抱きながら、そっと呼ぶ。


「……悠真。」


赤ちゃんは小さく動く。


奈々は少し笑った。


「反応した。」


悠斗も吹き出す。


「偶然でしょ。」


でも、その名前を呼ぶだけで、

少しずつ実感が増えていく。


“この子は家族なんだ”


と。



翌日。


市役所。


悠斗は少し緊張した顔で、出生届を持っていた。


奈々は隣で苦笑いする。


「悠斗くん顔固い。」


「だって緊張する。」


「そこ緊張するんだ。」


奈々が吹き出す。


でも、その空気がかなり二人らしかった。



受付。


出生届を渡す瞬間。


悠斗は少しだけ深呼吸する。


そして、静かに書類を差し出した。


“悠真”


という名前が、そこに書かれている。


受付の人が微笑む。


「おめでとうございます。」


その言葉に、奈々と悠斗は顔を見合わせる。


奈々は小さく笑った。


「……ほんとに家族になった感じする。」


悠斗も静かに頷く。


「うん。」



帰り道。


冬の空気は冷たい。


でも、奈々はかなり暖かい気持ちだった。


悠斗は小さく笑う。


「悠真、どんな子になるかな。」


奈々も優しく笑った。


「きっと安心して寝る子。」


悠斗が吹き出す。


「奈々ちゃんの遺伝。」


「ひどい。」


二人は笑い合う。


その空気は、昔から変わらない。


安心できる空気。


帰れる場所。


そして今は、

その真ん中に、

小さな“悠真”がいる。



夜。


病室へ戻ると、悠真は小さな寝息を立てていた。


奈々はその寝顔を見ながら、小さく呟く。


「……おかえり、悠真。」


悠斗も静かに笑った。


小さな男の子。


新しい名前。


新しい家族。


三人の“帰り道”は、

これからまた、

ゆっくり続いていく。

第19話「名前を呼ぶ日」を読んでいただき、ありがとうございました。


今回は、


“家族になる”

から、

“家族として生き始める”


へ変わる瞬間を描きました。


特に今回は、


出生届を出すシーンを大切にしています。


紙一枚かもしれない。


でも、

その名前が、

これからずっと人生に寄り添っていく。


そう考えると、

かなり大きな瞬間です。


また、

「悠真」という名前には、


悠斗の“悠”と、

二人の願いを込めています。


これから悠真が、

どんな「帰り道」を歩いていくのか。


またゆっくり描いていけたら嬉しいです。

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