小さな帰り道
第18話は、“家族が三人になる瞬間”をテーマに描きました。
今回は、
* 男の子の誕生
* 初めての「お父さん」「お母さん」の空気
* 小さな命への安心感
を中心に描いています。
このシリーズではずっと、
「安心できる場所」
を大切にしてきました。
そして今、その場所は、
二人だけではなく、
“子どもが帰れる場所”
へ変わろうとしています。
新しく始まる家族の時間を、楽しんでもらえたら嬉しいです。
冬の朝。
病室には、柔らかな朝日が差し込んでいた。
奈々はベッドへ横になりながら、小さく息を吐く。
その腕の中には、小さな赤ちゃん。
悠斗は隣へ座りながら、まだ少し信じられない顔をしていた。
「……ほんとに生まれたんだね。」
奈々は小さく笑う。
「うん。」
その声は、かなり優しかった。
⸻
赤ちゃんは男の子だった。
小さな手。
小さな寝息。
まだ目もあまり開いていない。
でも、その存在だけで部屋の空気が変わる。
悠斗は恐る恐る赤ちゃんを見る。
「……ちっちゃい。」
奈々が吹き出した。
「昨日も言ってた。」
「だってほんとに小さい。」
悠斗はかなり真剣だった。
その様子がおかしくて、奈々は少し笑ってしまう。
⸻
奈々は赤ちゃんへそっと触れながら、小さく呟く。
「……男の子かぁ。」
まだ少し不思議だった。
自分がお母さんになったことも。
悠斗がお父さんになったことも。
でも、不思議と怖さは少ない。
隣には悠斗がいる。
その安心感が、奈々をかなり落ち着かせていた。
⸻
悠斗は赤ちゃんを見ながら、小さく笑う。
「……なんか、奈々ちゃんに似てる。」
「え、どこが?」
「なんとなく。」
奈々が吹き出す。
「まだ顔分かんないでしょ。」
でも悠斗はかなり真面目だった。
「絶対優しい子になる。」
奈々はその言葉に、少し目を細める。
その未来を想像すると、
少しだけ胸が暖かくなった。
⸻
昼。
美咲がお見舞いに来る。
病室へ入った瞬間、美咲は固まった。
「……ちっちゃ……。」
悠斗が苦笑いする。
「みんなそれ言う。」
美咲はそっと赤ちゃんを見る。
そして、かなり優しい顔で笑った。
「男の子なんだ。」
奈々は小さく頷く。
美咲はしばらく赤ちゃんを見つめてから、小さく笑った。
「なんか不思議。」
「奈々たちが親なんだね。」
奈々も少し照れながら笑う。
「まだ実感ない。」
⸻
その時。
赤ちゃんが小さく泣き声を上げる。
奈々は少し慌てながら抱き直した。
悠斗も一瞬で立ち上がる。
美咲が吹き出す。
「悠斗くん完全にお父さん。」
悠斗はかなり真剣だった。
「だって泣いてる。」
奈々も思わず笑ってしまう。
でも、その空気はかなり暖かかった。
⸻
夜。
病室は静かな空気に包まれている。
赤ちゃんは奈々の隣で、小さな寝息を立てていた。
悠斗は椅子へ座りながら、小さく笑う。
「……安心して寝てる。」
奈々は赤ちゃんを見ながら、小さく頷く。
「うん。」
その寝顔を見ていると、不思議と落ち着く。
奈々は小さく息を吐いた。
「……この子にも、安心できる場所って思ってほしいな。」
悠斗は静かに頷く。
「きっと大丈夫。」
奈々は少し照れながら笑った。
「なんでそんな安心できる言い方するの。」
悠斗も少し笑う。
「奈々ちゃんにずっと言ってきたから。」
その言葉に、奈々はかなり優しい顔になった。
⸻
窓の外では、冬の夜が静かに広がっている。
小さな男の子。
新しく始まる毎日。
そして、変わらない安心感。
奈々は赤ちゃんへそっと触れながら、小さく笑った。
「……おかえり。」
その声は、かなり暖かかった。
三人の“帰り道”は、
これからまた、
ゆっくり続いていく。
第18話「小さな帰り道」を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、
“親になる”
という変化の中でも、
奈々と悠斗らしい、
穏やかな安心感を大切に描きました。
特に今回は、
* 悠斗の「完全にお父さん」な反応
* 奈々の少しずつ芽生える母親の実感
* 美咲が見守る空気
など、“三人らしさ”も意識しています。
そして、男の子として生まれた赤ちゃんが、
これからどんな「帰り道」を歩いていくのか。
またゆっくり描いていけたら嬉しいです。




