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第9話 国士の秘密 第3章

1970年代前半(昭和45〜50年)の日本は高度経済成長がピークを迎え、多くの国民が豊かになったと感じられるようになった時代だった。


反面、社会変革を目指した学生運動は終焉を迎え、労働組合の政治活動も力を失いつつあり、いわゆる権力に対する反対勢力の力は弱まりつつあった。


日本国民の「戦争はもう懲り懲り」と言う気持ちは強く続いていたが、国際情勢の変化に伴って「自衛隊」と言う形の「軍隊」の整備も進められた。


ここに「最後の国士」と言うキャッチフレーズで人気を集めた国会議員が西田英三郎である。


西田議員は戦後初めて行われた衆議院議員選挙で当選し、強固な選挙地盤を作り、当選を重ねてい一方で、戦時中、日本が占領した外地で統治を行った総督府にいた経歴を生かして、「外国通」として与党内でも一目置かれる存在となっていた。


もちろん、当時、西田議員らが行った残虐行為については隠されていた。


この「最後の国士」西田衆議院議員の「裏の顔」を暴くことができないか・・・⚪︎⚪︎新聞S支局で開かれた作戦会議は熱気を帯びていた。


冒頭、山元支局長が檄を飛ばした。


「今回の取材は相手が国会議員で、しかも殺人容疑とあって新聞本社でも極一部の者しか知らされていない大変危険で難しい取材です。それだけに安全には十分に配慮して慎重な取材をお願いします」


続いて信子が発言した。


「これまでの経緯から私がメインになって取材を進めますが、さすがに戦力不足なので、今回の異動で東京本社に行かれた浜田記者に東京取材のチーフとして取材していただきます。今日は『里帰り』して会議に出席していただきましたので、浜田さん、どうぞ」


「皆さん、お久しぶりです。やっぱりこちらはいいなー。東京は忙しくて、忙しくて。こちらに戻りたいなー・・・と、弱音はこのくらいにして、今回の取材は大変危険です。のんびりしてたら危険が更に増します。それと、ターゲットはのこのこ出てくるような相手ではありません。どうやって引っ張り出すか・・・私に案がありますので、もう少し時間を下さい」


出席者はあと2人。


「記者の最後は元気な新人記者青木です。一言どうぞ」


「この西田って議員は、とんでもない奴ですね。みんなで頑張って叩き潰しましょう!」


それを聞いた浜田がすかさず


「おい、おい、元気が良いのはいいけど、我々は映画やテレビドラマの正義の味方とは違うからね。あぶないことをしちゃだめだよ。慎重の上にも慎重にね」


「さて、最後は、皆さんご存知の心くん・・・児玉心さんです」


「今回は亡くなった私の父にも関係する取材なので、特別顧問として参加させてただいています。私の持つ特殊な能力を使って、亡くなった父から真実を聞いて、取材のお役に立てれたらと思っていますが・・・父からの反応がまだ無いのが不安なんです」


「大丈夫! 心くん。これまでも一緒にやってきて、素晴らしい成果を上げてきたじゃない! 頑張ろう!」


「そうですね。ありがとう信子さん、僕も頑張ります!」


心を励ます信子の姿を、全員が微笑ましく眺めていた。


この日の会議では、取材チームの中では心の特殊な能力については疑問を持たずに、貴重な情報として取り扱うことを確認しあった。


このように、心の特殊な能力を限定的な範囲であっても、ちゃんとした形で認められたのは初めてで、心はとても嬉しそうにしていた。



そして、作戦会議が終わってみんなが帰ろうとした時に、支局に訪問者があった。


60歳前後の男性である。


その姿を見るなり、信子が大声をあげた。


「えーっ!? うそ〜!! どうしたの?? こんな時間に! お父さん!!」


信子の父で警察官の小田正一だった。


         (つづく)


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