アーナの日々
もう、ダメかもしれない。
いつもなら、強気の自分も子供の病には勝てず、ただオロオロする人間になる。
あの、夫まで。。。我々夫婦は、これまでにない危機に晒されていた。
大切なカノンの命。。。
あの日。。。突然歯車が動き出す。
絶望が希望に変わる瞬間を、ただ茫然と眺めていた自分。。。
あっという間の出来事だった。
やがて、ひとつの出会いが夫を目覚めさせた。
そして、夫は、長年の夢を叶える機会を得て旅に出る。
一人になり私は、いつもの強気の自分を取り戻した。
夫の不在中も、送られてくる食材を卸し売りしては、日々の暮らしを立てていた。
ある日。。、
旅先の夫から突然の要請。
願い事などする事のない彼からの頼み。
私も、決意する。
移住の決意。。。
昔の仲間たちを誘い、カナベルの街をへ向かう。
久しぶりの食材探し協会だ。
「これは、お久しぶりです。アーナさん。
この子がカノンちゃんですか?」
「はい。私も夫の勧めに従い移住を決意しました。元の冒険仲間のクユリとチェミです。」
「ははは。もちろん存じてます。
有名な冒険者チームだ。さて、
もうひと方いらしてます。お入り下さい。」
扉から入って来た人物に驚く。
「まさか。。、ランクなの?
貴方、ヘルベルトに頼まれたのね。
あの人。。、貴方を呼ぶなんて。。。」
「アーナ。お久しぶり。驚き過ぎだよ。」
「いえいえ。アーナさんの驚きは、私の驚きでもあります。冒険者として一流にして、現役のSランク。冒険から移住の道を選ばれるとは。。」
クユリが驚く。彼女だってAランク。
間違いなく一流だ。
「いやね。ヘルベルトが引退する時、俺達の望みが叶えられる機会を得たら、必ず呼んでくれと。
今回の話を聞いて即決したよ。
多少。。冒険者の俺で役に立つのか不安だがな。」
昔話が終わり、いよいよ塩田村へ向かう。
塩田村は、とても刺激的な場所だった。
本当に夢を見る場所。。。
あれから、難題が次々とくる。
やがて、努力の甲斐があって、少しずつ私達『船工場』の形が整う。
船作りとは。。。
まず、木の乾燥から始まる。
その為の工場がある。木は乾燥させると、水に濡れた時、膨張して船の防水機能となる。
次の船の工場は、大型で天井が高い。
木を曲げる作業は、初めは失敗ばかり。
火と蒸気で根気よく曲げてゆく。
丁寧な作業を求められる。
次に木と木を留める。
ある特殊な木の皮を剥いで使用してみたが、上手くいかない。
結局、木の汁の中に接着剤の働きをするものを探して使用。
船の完成までの試行錯誤を思い出すのは、正直辛い。それほど試行錯誤した。
やがて、努力の実を結ぶ時が来た!
いよいよ。。船の進水式だ。
ぽちゃん。。。。。
浮かんだ!
ちゃんと浮かんだわ。
うっかり涙が出たのは仕方ない。
それほどの苦労の日々だったから。
今度は大忙しの日々が続いた。
船での運搬は、大変、気を使う。
帆に風を魔術で送り、揺れを最小限にとどめて重い塩を運ぶのは骨が折れる。
次から次へと目まぐるし日々。
だけど、実感している。間違いなく夢への一歩であると。
仲間も増えて賑やかな中、カノンも託児所で友達を作って遊んでは成長してゆく。
明日、久しぶりに夫が来る。
久しぶりに、夢の話でもしたいと思う。




