師匠!怒髪天?
「ようやく見えた。あれが俺の師匠のいる『メルベ村』だ。
崖の細い道がようやく終わりに近づく。
相変わらず、険しい道のりだ。
「えっ。あの『メルベ村』?
聞いた事は、ある。あるが実在するとは。。」
ナリーナの驚く顔に、苦笑いが浮かぶ。
これからの事を思うと余計に。。
「バーカ。お前さんなんぞ知らん。
帰れ!アタシにはね、20年も訪ねて来ない様な恩知らずな弟子はおらん。帰れ!」
バタン!!
強烈な物音を立てて、扉は、閉まる。
やっぱり。。。
奥の手で行くしかないか。。。
「師匠。師匠に特別な食べ物をお持ちしました。
開けてください。
ペユで作った、『五平餅』と言うものです。
今流行りのあの『豚のシッポ』の創始者異邦人の圭作の食、」
話の途中でドアが開く。
「入りな!」
。。。。
奥の手。成功。
やはり、圭のレシピの偉大さは格別だ。
久しぶりの師匠の家。
中は、変わってない。
大きな暖炉があり、相変わらずその火には鍋がかかっていた。
そして、色々な食材の匂いが立ち込めて独特の香りを作り出す。
帰ってきた。。。懐かしい感傷が浮かぶ。
イライラした師匠な声がする。
「はやくお寄越し!」
引ったくるように、『五平餅』を取るとじっくり眺めながら味わって食べている。
とにかく、こういう時は絶対に沈黙あるのみ。、
。。。
。。
。
「で。何の用だい?ご無沙汰男が、ここまでくる理由は、何だい。」
食べ終わって、ようやく話が始まる。
師匠らしく、必ずチクリと刺さる。
「実は、サラディーナの王都に開いていた店を閉めて、今はあの『圭』という異邦人と旅をしています。」
呆れた師匠の声。
「だから言っただろ。サラディーナの王都になんて、店を開くだけ無駄だと。
この馬鹿者が。アーナは、どうした?
まさか、あの子まで不幸にしてはいないだろうね!」
図星は、痛い。
反対を押し切り開店したのだから、仕方ないが。
「はい。師匠のおっしゃる通りでした。
サラディーナの王都は、私の手に負えるものは、なかった。。
アーナとカノンは、元気です。
今、圭の作った『塩田村』におります。」
「ふーん。まあいい。
で、何の用だい?」
「実は、今からムルトングへ向かいドワーフ達の秘密のトンネルを通って向こうに行きたいと考えております。」
師匠の身体がわなわなしてる。
「ばかもん!!お前。。やっぱり出て行け!
ドワーフだと。。お主、ドワーフの性格を知らんとは言わさないぞ!」
久しぶりの怒髪天の師匠。
ここで引いては、何の為に来たか。、。
「聞いてください。圭が精霊から鍵を貰いました。あの消える湖の精霊にです!
今、精霊界で何か起こっています。どうしても、ドワーフに会わなければ。。。お願いです。
どうか、師匠のお力を貸してください。」
俺は、土下座した。
だからと言って許す程甘いお人ではないが。。
。。。
沈黙が続く。
「お前さん、エルフの一族の血統だね。
ふーむ。。。。
さて、アタシの手紙如きで彼奴らはどうこうできゃしないよ。それでよきゃ持っておいき。」
流石、師匠だ。
一発でナリーナの素性を見抜いた。
ナリーナもびっくりした固まってる。
まぁ、あの師匠の怒声で元々固まってたが。。
その後、師匠に有りっ丈の食材を差し出してようやく帰途を許された。
帰り道にナリーナが
「あの方が、有名な料理人のカンベル様ですか?」
「そうだ。私は、師匠に料理人としての全てを教わった。だが、忠告を無視してサラディーナの王都に店を開いた為、破門されたのだ。」
「そんなにも、サラディーナの為に?」
「いや、若さ故の意地だったろう。」
「確か、カンベル様はドワーフの血統。
しかもムルトングの王宮の筆頭料理人だったとか。
ムルトングへの紹介状も頂けたのでは?」
「それは、絶対に無理だ。
何故なら、あの性格が元で王家と大喧嘩して飛び出してきたのだから。
まぁ、だから俺に弟子になるチャンスも来たのだが。。」
厳しかった日々は、もう遠い。
だが、変わらない師匠に会えただけでも、圭には感謝しかない。
『五平餅』が無ければ、絶対に中に入る事は出来なかったからな。
それから、俺たちは、カナベルの街に向かう。
だが、そこには驚異の風景に出会う事になる。
予想なんて、役に立たない事を知るハメに。。。




