色々な場所で夜は更けてゆく。
ーある一室でー
「ふむ。ゼッヘルのやつ、面白い報告を寄越したぞ。どう思う?」低く響く声がする。
「はい。私も少々この者に会いたいと存じます。
それに、このマーナ自治区の者、何やら覚えのある者やも知れません。」
考え深い声が答える。
「伝令、今よりゼッヘルへの新たな指令を持って行け。あの者に、必ず果たせと伝えよ。」
低く短い返事がして部屋には、ひとり。
「異邦人、吉と出るか凶と出るか。さて。」
誰も聞かない呟き。
ーナリーナの部屋ー
「貴方達、怖がるのは無理ないけれど、圭は大丈夫。良い人間なのよ。まあ、少し天然バカは免れないけれど、信じて大丈夫。
私も、初めて人間を信じたわ。」
小さい二つの目が彼女を見上げている。
「私達、人間です。本当よ。」
女の子が必死に言う。
「お姉ちゃん、僕もあの人から来るオーラが好き。だから、あの魔物も懐くんだよ。」
眠そうな男の子は、目を擦りながら呟く。
女の子は、泣きそうな顔でナリーナを見た。
「違うの。オーラなんて見えないの。この子、寝ぼけてるから。本当よ。」
ナリーナは、少し困って優しく笑いかけた。
「大丈夫よ。私もあなたたちも人間。
それに、人間ばなれしているのは圭の方よ。
大丈夫。今夜はゆっくり休んで。」
優しく女の子の髪を撫でる。
弟の方は、もう夢の中。
ー圭達の部屋ー
「師よ。次から次へと、些か 混乱しております。
あの兄弟といい、ピー子といい普通では考えられない。この先のキーナンの事を考えてしまいます。」
ヘルベルトの疲れた声。
「圭は、変わらずじゃろう。それに、あの者に手を出してくるほど、ブースト公爵達もバカではあるまい。オーガスト王なら、面白がるのみよ。」
ヘルベルトが頷く。
横には、重なりながら眠る圭とピー子。
「もう、食べれません。」圭の寝言が呟く。
今晩は、平和な夜に違いない。
夜は更けてゆく。